タイムパラドックス

kinmokusei

文字の大きさ
22 / 43

聖剣エリシオン

しおりを挟む
ムーンの魔法が効いたのか、あたしはアレルギーの方はよくなったが。


また夢を見た。




『この聖剣はもしもの時のために作るのです。』


『でも、、、。』


カノンを殺される前らしく、あたしは躊躇している。


『何も殺す訳ではない。何かあった時に封印するためだ。そのためアース、おまえの力も必要なんだ。』


声の主はウラヌスだろう。


そうしてできた剣が聖剣エリシオンである。


それを魔方陣に封印してあたしが持っていた。




まさか本当に使うことになるとは思わずに。



『カノン?あたしはなんか怖いの。サターンはあたしにしか心を開かないし、他の戦士はサターンを、、、』


『アース様。大丈夫!きっと分かり合える日が来ます。』



そう笑って言ってくれたカノンをいともたやすく殺したサターン。


あの怒りはそこから来たのだろう。





「それでは聖剣エリシオンを封印する魔方陣から。」


みんなが真剣にあたしの方を見ている。


アレルギーが治り、魔法の特訓が始まった。


「まずは治癒魔法からじゃ、、、?」


あたしがそう言うと。


「聖剣をこちらに戻すことが最善と昨日決まりました。では魔方陣を描いてください。」


ウラヌスは昨日の夢の時と同じようなトーンで言う。


「でも描くって、、、?」


「アース様!右手を魔法書にかざしてください。」


ムーンが言った。


あたしは言われた通りに魔法書に右手をかざす。


すると魔法書に思いっきり力を吸い取られるような感覚が。


そしてポンっと杖が出た。


でもあたしは杖が出ると同時によろけた。


「始めはこれを何回も繰り返します。大丈夫ですか?アース様?」


ムーンの言葉にあたしはなんとか答える。


「え、えぇ。」






その日一日ずっと杖を出す練習。


「魔法を使う杖を出すのにこんなに力を消耗するとは思わなかったぁ!」


「どうですか?俺のすごさが少しは分かったかな?」


ムーンは得意顔だ。


でもやっぱりすごいのかもしれない。


「とりあえず今日は食べてくださいね?シチュー味のレンスの実。」


「食べるわよー。お腹すいて力が出ない!」


ムーンは嬉しそうにうなずく。


「元気になってよかった!」


「ねぇ?魔法って杖を出すだけであれだけ力が必要なら、魔方陣を描いて使うのはもっと力が必要なの?」


「もちろんですよ!アース様にはこれから頑張ってもらわなければなりません。」


(考えただけで頭痛がするわ、、、。)


あたしはシチュー味のレンスの実を食べながらこれから始まったばかりの魔法特訓のことを考えて頭をかかえた。





それから怒涛の練習が始まった。


杖を出すだけで力が吸い取られていく感じ。


1日出来て30回が限度だ。


それが毎日。


「もう限界。あたしには魔方陣を描くなんて無理よー。」


「アース様。聖剣エリシオンの封印にはもっと力が必要なんです。これくらいで根を上げられては困ります!」


ムーンはスパルタだ。


「これ以上って、、、絶対無理よー。」


あたしは弱音をはく。


「昔は出来たんですよ?大丈夫!アース様ならきっとできます!って言うかアース様にしか出来ないのですから。」


ゔ、ゔ。


「もう疲れたー!もうやだー!」


「アース様?大丈夫ですから!とりあえず明日からは杖を出す練習を50回に増やしましょう。時間もないのです。シーズン銀河の戦士がいつ攻めてくるか分からないのですからね。」


あたしはムーンのスパルタにため息をついた。




 あれから数週間みっちり杖を出す練習をした。


最初は力を残らないくらいヘトヘトになってしまっていたが、今は少しは力を残せるようになった。


「成長しましたね!アース様!」


とか言って一緒に練習をしていたムーンの方がだいぶ魔法の力が上がってしまった。


さすがカノンの生まれ変わりだ。


「杖を出すのはうまくなりましたので、今度は魔方陣です。一回描いて見ますか?」


「えっ。」


「聖剣エリシオンを封印する魔方陣です。」


「いきなり?!」


ムーンは微笑みながら


「できるだけ早くしなければならないと言ったでしょう?さぁ!杖を出して魔法書を開いてください。」


そう言った。


あたしは杖を出す。


そして魔法書をめくる。


「これ、、、よね?」


「そうです。」


ムーンはあたしの魔法書を覗き込み言った。





「かなり難しそうなんですけど?」


「挑戦することに意味があるのですよ。」


ムーンは微笑みあたしはちょっとドキッとする。


相手は5歳児よ?


前世がカノンだからかな?


あたしがボーっとしているとムーンが言った。


「ぼけっとしてないで早くしてください。」


前言撤回!!


「分かってるわよ!」


もう!!


(秋時もそうだったけど男の子ってデリカシーがないわ!)


あたしは機嫌悪く魔方陣を描き出した。


本を見て同じように描けばいいだけなのに、描くほどに力が吸い取られていく感じ。


「ゆっくりでいいですよ?」


あたしが悪戦苦闘しているとムーンが言った。


「さっきは早くって言ってたじゃない?」


「魔方陣に集中して!そこ違います!」


なんなのよ?


ムーンは優しかったり意地悪だったり。


このギャップにはなんだか懐かしさを感じる。


不思議な感覚だった。






カタカタッ


シーズン銀河に収めてある聖剣が光を放つ。


サターンはそれを見て呟く。


「アース、、、。アースの力が蘇り始めているのね?今度は簡単には封印なんかされないわ。」


恐ろしいほどの形相。


サターンはシーズン銀河の戦士を呼び出す。


「これは、、、?!」


聖剣エリシオンが光りを放っているのを見てシーズン銀河の戦士たちはただただ驚く。


「アースの仕業よ?またあたしを封印する気なんだわ。2度も同じ手をくうと思っているのかしら?あの時は油断していたのもあったのよ?ふふふ。」


サターンは笑うが瞳は笑っていない。


シーズン銀河の戦士は少しサターンに恐れを感じる。


「オータム?アースを殺して来なさい?命令よ?」


サターンは一番残酷な方法を選ぶ。


秋時はサターンにお辞儀をしてその場を去る。


(奈津、、、。俺はお前を殺して何かを得られるのだろうか?)


目覚めた美鈴そっくりのサターンは美鈴とはかけ離れた残忍さを持つ。


俺は間違えたのか?


秋時は自分に問う。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

処理中です...