愛しのお兄ちゃん

kinmokusei

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お兄ちゃんとお母さんの関係

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あれからあたしは習い事のため忙しくなった。


「釣れてないな?」


お兄ちゃんはずっと隣にいてどんどん魚を釣っていく。


昨日は手芸教室で針で何回も指を指すし。


意味不明の釣り教室には行かされるし。


お兄ちゃんって本当に謎なのよね。


「ねぇ?お母様にお世話になったって言ったけど、どういう知り合い?」


お母様も仕事人間だった。


けどお父様と違うところは、欠かさず一緒に食事をとってくれたところだ。


ただ礼儀作法にはうるさくて、いつもあたしに素敵なレディになりなさいと言っていた。


仕事で知り合いになるわけないし。


お母様10年前、つまりお兄ちゃんが9歳の時に亡くなっている。


「まぁ、借りがあるとだけ言っておくよ。」


お母様の話をすると決まってお兄ちゃんははぐらかす。


お母様もどちらかといえば厳格な性格だった。


だからお兄ちゃんと知り合いというのが、何か信じられないのだ。






「み、、じゃなくて春!」


「あ。か、、、な。」


お互いぎこちなく笑う。


今日は社交ダンス教室の日。


「春はもうプロってるわね?いつからやってたの?」


「かなこそ。聖夜様が筋がいいって言ってたわよ?」


知り合いになって間もないフリは大変だった。


しかも今日は小野寺と名乗るお兄ちゃんとも初対面と言う設定なのだ。


なんか胃が痛くなってきた。


「ねぇ?春?小野寺さんってどういう人?」


会話に詰まってあたしは美春に聞いた。


あの二重人格男のことだ。


きっといい顔してるに違いない。


しかしながら美春はあたしの予想外のことを言った。


「すっごく厳しくて、紳士じゃないわ!あたしは聖夜様の方がいいなー。」


「分かる?二重人格っぽいっていうかさー。」


あたしはついつい言ってしまった。


しかし美春はそれにうなづいたのだ。


「そーなのよ!このあたしに向かって下手くそって、、、?あ。」


そこへお兄ちゃんが現れた。






「練習サボって何している!!かなと言ったか?今日は俺がじきじきに教えてやる。一回しか言わないからな?体に叩き込め!」


この上から目線。


美春が言うのも分かる。


「春は聖夜にばかり頼らないで自分で学習しろ!分かったな?」


隣の美春の顔見れない。


「さぁ。かな!行くぞ!」


「はっ、はい!」


いつものお兄ちゃんと違う。


今までで一番厳しい。


社交ダンスにかけてる感じ。


あたしはお父様が気に入ったのが分かった気がした。






「なんで黙っているんだ?」


夕食をとりながら、お兄ちゃんはいつものお兄ちゃんに戻っていた。


「え?いや別に。大丈夫です。」


あの鬼のような指導を受けた後だ。


少しお兄ちゃんが恐かった。


「社交ダンスのせいか?」


「いえ。そう言うわけでは、、、。」


お兄ちゃんは興味深げにあたしを見る。


「少しはレディらしくなったな?」


あたしはお兄ちゃんの豹変ぶりにタジタジだった。






「明日は手芸教室の後にディナーでも行くか?」


うげっ。


はっきり言って行きたくない。


だって何言われるか分からないし。


外食だとお兄ちゃんに何も言い返せないし。


「いいよ!うちで、、、」


「そうか!いいんだな?よかった!」


え。


そのいいじゃなくて、、、。


あたしの顔色なんて御構い無しに、外食に行くことになってしまった。


なんかお兄ちゃんにはペース乱されるんだよなぁ。





「あははは!」


手芸教室の後車の中で笑い転げるお兄ちゃん。


もう嫌だ。


なんで笑っているかと言うと。


あたしがハンカチのつもりで刺繍していた布を見て先生が可愛い雑巾ね?と言ったから。


ふざけんじゃないわよ!!


「お前といると飽きないよ。あははは!」


あたしは出来上がったハンカチを握りしめてお兄ちゃんの笑い声を聞くしか出来なかった。






ディナーというからどんなレストランかと思いきや、、、。


「ここ??」


あたしの声はデカくなる。


だって目の前にあるのは、、、。


「やっぱりラーメンだろ?疲れだ後は。」


そう。


どこにでもある普通のチェーン店のラーメン屋が目の前に。


「あのねぇ?!ふざけてるの?」


「はぁ?別にふざけちゃいないさ。大真面目。うまいんだぜ?ここのラーメン。」


百歩譲ってよ?


ラーメン食べるにしてもどこかの美味しいラーメン屋、つまりは個人経営してるラーメン屋ならともかく。


チェーン店って。


「何してんだ?行くぞ?」


あたしは神崎グループの令嬢よ?


それをチェーン店のラーメン屋って。






あたしはのれんをくぐり、お兄ちゃんについて行く。


半ば呆れて。


しかしお兄ちゃんはカウンター席に座った。



「絶対おかしいでしょう!?普通ボックス席に座らない?」


そうあたしが言うと、お兄ちゃんは更に驚いたことを言った。


「ラーメン食べるにはカウンター席が一番!あ。お前自分の分は自分で払えよ?奢らねーからな?」


「はぁ?ちょっと?あたしお金なんか持ってきてないよ?」


「ズーズーしい女だな?なんで俺がお前に奢らなきゃならない?」


いけしゃあしゃあと。


「じゃああたし帰る!!」


そう言ったタイミングでお腹がグーとなった。


「あれ食い切れればタダだぜ?ここ。」


お兄ちゃんは店にデカデカと貼ってあるポスターを指差した。


そこには激辛大盛りラーメンの文字。


あたしは怒りが込み上げてきた。






あたしは辛いのは苦手だった。


しかも大盛りって、、、。


天下の神崎グループの令嬢が食べるものではないでしょう?!


「あたし帰る。エミに連絡して!!」


あいにくその日は携帯を忘れてきてしまっていた。


「嫌だね。自分で呼べば?」


どこまでもこいつは、、、!!


「携帯忘れたのよ!!エミを呼んでよ!!」


「そりゃ災難だったな?公衆電話ならそこにあるぞ?」


「だから!!お金がないの!!」


「10円だぞ?こう言う時のために今度は少し金くらい持っておくんだな?」


ぐぅぅぅ。


お腹空いた。


もうやだ。


お兄ちゃんは頼んだラーメンを美味しそうに食べてるし。


どういう神経してるの?


普通じゃないわよ!


きっとお兄ちゃんはあたしのこと嫌いなんだ!


だからいじめるんだ!!


もう我慢できない!


「おじさん!激辛大盛りラーメンひとつ。」


「お?食うのか?」


「、、、」


あたしはお兄ちゃんを無視した。






ゔ。


辛い。


でも残せないし。


美味しいのがまた悔しい。


「お姉ちゃん、頑張るねぇ。」


だから!


恥ずかしい上に、残せないし。


ポスター見てみたら食べ切れなかったら、2980円かかるみたいだし。


あたしは必死になって食べた。


お兄ちゃんはそんなあたしを横目で見る。


時間制限まであるし。


あと10分。


制限時間1時間。


こんなに必死になったのはいつぶりか?


いや、初めてかもしれない。


あと少しで、、、。


食べ切らなきゃ。


払えなかったらどうなるんだろう?


あたしは必死になって食べながら、お金に困るってこんなに恥ずかしく、辛いものだということを知った気がした。


お金って大切。


こんなに大切なものなんだと。



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