彼の音色 ~君に恋して音が感情になった~

千莉々(chiriri)

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観劇のあとで

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舞台が終わり、ロビーのグッズ売り場には多くの人が並んでいる。

「母さん、グッズ売り場は人気だね。サヤリンや主演男優の影響かな?」
「そうよねぇ。愁君のファンも多いと思うわ。」

そうだよな。愁はイケメンだし実力もあるもんな。

俺は愁にメッセージを送った。
『舞台すごく感動した。愁が一番カッコ良かった』
胸が熱くなる舞台の余韻に浸っていたせいか、
少し恥ずかしい内容を送ってしまった。

劇場を出ると、脇道に人だかりができている。

「母さん、あそこの集団は何かな?」
「出待ちじゃないかな?劇場側は容認してないと思うけどね。」

どうやら、舞台を終えた俳優達が出てくるのをファンが待っているらしい。
愁も出てくるのだろうか?

すると愁からメッセージがきた。
『一緒に帰りたい。待ってて』

「母さん。愁と帰るから待ってるわ。」
「そうなの?じゃ、買い物したいから行くわね。」
と言うと母さんはさっさと立ち去ってしまった。
おそらく、百貨店にでも行くのだろう。

どこで待っていたらいいか分からず、出待ちの人々から
少し離れた所で待つことにした。

出口から男性が出てきた。
舞台に出ていた人のようで、出待ちの人々が拍手をしていた。
数人の俳優が会釈しながら通り過ぎていき、皆が拍手で送り出している。

歓声があがり、注目すると愁が登場した。
「ありがとうございました。」
と笑顔で言い、深々とお辞儀していた。

大きな拍手の中、愁は颯爽と歩きファンは追いかける訳でもなく
少し離れて見守っている。
愁が取り囲まれたらどうしようと心配したが大丈夫のようだ。
騒ぎ立てることもなく、ファンは優しいな。

愁の行く方向を見届け、俺は少し遅れて歩いていった。
角を曲がると愁がいた。

「あっ、ビックリした。」
「冬弥、今日は観に来てくれてありがとう。」
「俺の方こそ、こんな感動的なミュージカルを観れて、
感謝しかないよ。」
疲れているはずなのに、愁はニッコリ笑っている。

愁と俺はタクシーに乗った。
愁が俺の右手に左手を重ねてきた。
そして俺は愁の手を握りしめた。
愁の照れたような顔がとても可愛い。
ドキドキが止まらない。
俺は紛れもなく、完全に愁に恋している。

タクシーから降り、無言で歩いた。
外は肌寒いはずなのに暑い。
ゆっくり話をするため公園に入った。

「愁、そこのベンチに座ってちょっと待ってて。」

俺は自販機でホットミルクティーを2本買った。

「愁、お疲れ様。これ飲んで。」
「ありがとう。」
愁はミルクティーを美味しそうに飲んでいる。

「今日はすごくカッコ良かった。俺は愁しか見てなかったと思う。」
「嬉しいな。惚れ直した?」と冗談っぽく聞いてきた。
「うん。好きだ。」

愁は驚いた顔をしたが、今にも泣きそうなクシャっとした笑顔で
俺を抱きしめた。
俺も強く抱きしめた。とても温かい。
愁、好きだ。大好きだ。
このまま、ずっと側にいたいと強く思った。

「あ、これ、もしかして僕のブロマイド?」
ジャケットのポケットにしまい込んでいた写真を愁が取り出した。

「カッコ良かったから、思わず買ってしまった。」
「嬉しいよ。冬弥の写真も欲しいな。」
「俺の?」
「一緒に撮ろう。」

愁が俺の肩を抱き、スマホ片手に写真を撮った。
笑顔の愁と少し赤い顔の俺とのツーショット。
記念すべき大事な写真だ。
冷静に見れるようになるには、ちょっと時間が必要だ。

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