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美夜の別れ
15歳の美夜は、神社の脇の、玉砂利を敷き詰めた白い道で、遠ざかってゆく後ろ姿を見つめながら泣いていた。
去ってゆく青年は、兄の友人だ。
途中で、彼が美夜を振り返った。
さよならと、手を上げた彼に、美夜も手を振った。
走って、追いつきたい。
その先の曲がり角を曲がる前、隼人はもう一度、美夜を振り返ってくれた。
美夜がまだ、泣きながら見送っているのが、わかっているのだろう。
そして、ここを曲がってしまえば、もう見えなくなる。
隼人は、さっきと同じように、さよならと手を上げた。
これで、最後だ。
美夜も、涙を払いながら、手を振った。
角を曲がってしまったので、彼の姿はもう、見えなくなった。
でも曲がり角の先を、彼は歩いている。
今走って行けば、追いつくことができるのに。
もっと先までだって、送って行けたのに。
なぜ神社まで、と言ってしまったのかと、悔やまれた。
その頃は、昭和の試練の時代で、美夜も、戦争の時代に生きていた。
兄の陸の友人や、周囲の人も、次々と召集された。
お茶を買いに来る翠さんの兄も、とっくに召集されたと話していた。
兄の陸よりも先に、まず隼人に召集が届いた。
そして、出征前の挨拶に、明日立ち寄ると、美夜は兄から聞いたのだ。
美夜は、神社で祈願した御守りを貰って帰って、金平糖と茶飴を沢山、巾着袋に入れた。
甘いものは希少になっていたからだ。それに、小さくて、長期の携帯保存もできる。
それが、美夜の考えついて、できる精一杯のことだった。
桜茶舗では、そうした菓子を、まだ仕入れることができて、それは兄や隼人と一緒に、店先で食べていたお菓子でもあった。
翌日、挨拶に来た隼人に、美夜は神社まで、送って行くと言った。
いつものように、隼人の後ろにくっついて歩いただけだったけど。
美夜は、もともと口数が少ない。
神社で、一緒に手を合わせ、両側に木立がある、玉砂利を敷き詰めた白い道で、隼人が
「じゃあ、ここで」
と言った。
その辺までが、神社の敷地だったからだろう。
持ってきたお守りと、菓子の入った巾着を、美夜は隼人に渡した。
そして
「わたし、待っとる」
と言った。
言葉にすると、涙が込み上げてくる。
隼人は、美夜を見下ろして、
「・・・待つな。俺は知らんぞ」
と言った。
でも、自分の胸ポケットから、万年筆を取り出して、美夜にくれた。
しゃくり上げる美夜を、逆に励ましてくれ、大きな暖かい手が、あやすように美夜の肩に置かれ、背中をトントンと叩いた。
そして、美夜は、万年筆を手にして、ずっと泣きながら、隼人が去って行く玉砂利の白い道に立っていたのだ。
去ってゆく青年は、兄の友人だ。
途中で、彼が美夜を振り返った。
さよならと、手を上げた彼に、美夜も手を振った。
走って、追いつきたい。
その先の曲がり角を曲がる前、隼人はもう一度、美夜を振り返ってくれた。
美夜がまだ、泣きながら見送っているのが、わかっているのだろう。
そして、ここを曲がってしまえば、もう見えなくなる。
隼人は、さっきと同じように、さよならと手を上げた。
これで、最後だ。
美夜も、涙を払いながら、手を振った。
角を曲がってしまったので、彼の姿はもう、見えなくなった。
でも曲がり角の先を、彼は歩いている。
今走って行けば、追いつくことができるのに。
もっと先までだって、送って行けたのに。
なぜ神社まで、と言ってしまったのかと、悔やまれた。
その頃は、昭和の試練の時代で、美夜も、戦争の時代に生きていた。
兄の陸の友人や、周囲の人も、次々と召集された。
お茶を買いに来る翠さんの兄も、とっくに召集されたと話していた。
兄の陸よりも先に、まず隼人に召集が届いた。
そして、出征前の挨拶に、明日立ち寄ると、美夜は兄から聞いたのだ。
美夜は、神社で祈願した御守りを貰って帰って、金平糖と茶飴を沢山、巾着袋に入れた。
甘いものは希少になっていたからだ。それに、小さくて、長期の携帯保存もできる。
それが、美夜の考えついて、できる精一杯のことだった。
桜茶舗では、そうした菓子を、まだ仕入れることができて、それは兄や隼人と一緒に、店先で食べていたお菓子でもあった。
翌日、挨拶に来た隼人に、美夜は神社まで、送って行くと言った。
いつものように、隼人の後ろにくっついて歩いただけだったけど。
美夜は、もともと口数が少ない。
神社で、一緒に手を合わせ、両側に木立がある、玉砂利を敷き詰めた白い道で、隼人が
「じゃあ、ここで」
と言った。
その辺までが、神社の敷地だったからだろう。
持ってきたお守りと、菓子の入った巾着を、美夜は隼人に渡した。
そして
「わたし、待っとる」
と言った。
言葉にすると、涙が込み上げてくる。
隼人は、美夜を見下ろして、
「・・・待つな。俺は知らんぞ」
と言った。
でも、自分の胸ポケットから、万年筆を取り出して、美夜にくれた。
しゃくり上げる美夜を、逆に励ましてくれ、大きな暖かい手が、あやすように美夜の肩に置かれ、背中をトントンと叩いた。
そして、美夜は、万年筆を手にして、ずっと泣きながら、隼人が去って行く玉砂利の白い道に立っていたのだ。
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