(仮)あの頃〜兄の友人、美しい幼馴染。別れと再会

ピアノ

文字の大きさ
18 / 25

隼人との再会

ある日、桜茶舗の前に一台のタクシーが停まった。

ちょうど、大学が休みで、祖母の代わりに、店先に居た美夜は、入ってきたソフト帽と、背広姿の男性を見て、誰だかわからなかった。
でも、
「いらっしゃいませ」
と、声をかける。

「もしかして、お前、美夜?」

「あ、」
美夜はことばに詰まった。

「大きくなったなあ」

「隼人くん・・・?」

「久しぶり、元気だったか? 陸はいる?」

「うん。呼んでくる」
美夜は突然のことで、兄を呼んでくるので精一杯だった。
奥から出てきた陸は、

「隼人」
と 驚いた。

「また、急だな。」
そして、
「奥へ上がらないか?」
と誘った。

「いや、いい。今日は顔を見に来ただけだから。
陸、除隊したんだろ。具合は?」

「見ての通り、良くなった。隼人は今どこに?」

「まだ神戸。でも、今度こっちで仕事が決まったし、戻る。」

「そうか。ゆっくり話したいのに残念だな。今日は、家へ帰るのか?」

「いや、メープルホテルってのが、できたんだろ? 今日は連れがあるし、そこへ泊まるんだ。」

「そうか、また、こっちへ帰って来たら会おう。」

「またな。」

立ち去る隼人を見送って、陸と美夜は、店の前まで出ていった。

外には、壁にもたれて、流行の洋服で、巻き髪に、ヒールの高い靴を履いた女性が、細い指先で、煙草を吸いながら待っていた。

「隼人、終わったの?」
その女性は言った。
二人は、待たせてあったタクシーに乗り、去って行った。

「女連れでは、実家に泊まれないよな」
陸は言った。

「あの女の人、隼人くんの恋人?」
美夜が言うと、

「どうかなあ?」
と、兄は言った。

それは、あの白い道で別れて以来の、隼人との再会だった。



その晩、夕食を食べながら、陸が言った。

「今度もし、隼人が来ても、戦争中や、昔のことは、聞かないようにね。
実は、友達から聞いてたんだけど、あいつ、精神的に相当参ってたんだと。
戦争中色々、あったらしい。
それで、まともな状態ではなくて、神戸の親戚の家で、療養してたんだ。
酒を飲んで、荒んで、周りも困っていたらしい。
だから、自分のことを、話したくないんだよ。」

陸が、今日、隼人にあまり話を振らなかったのも、理解できた。

「それは辛いことだねえ」
祖母と母が話していた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。