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続 隼人との再会
美夜はその町から、汽車に乗り、隣の大きなS市にある女子大に通うようになっていた。
S市には、大きな企業もあり、戦前から、駅の周りに繁華街があって、賑わっている。
空襲の被害も、他地域に比べると、最小限で済んだため、復興も早く、戦後一層賑やかになった。
デパートなどのある表通りと、レストランや居酒屋、バーなどの集まった飲食街、さらには歓楽街が、通りひとつ隔てて、隣接している。
今日、美夜は珍しく夜の飲食街の方に来ている。
叔母に誘われたのだ。
同じ女子大の友人、春乃も一緒に来ている。
春乃は、家は、ちょっと離れているが、同じ市内から通っている。
彼女の母親は、メープルホテルという新しいホテルを戦後始めて、春乃も時々手伝っているという。評判は聞いているけど、美夜は、まだ行ったことはない。
同じ家業の手伝いでも、お茶屋の店先で、量り売りや、法事用の商品の箱詰めの手伝いをしている美夜とは、随分違うようだ。
何か垢抜けてるし、明るく華やかな娘だ。
叔母もまた、目立つほどオシャレだ。
戦前、叔母が通っていた、有名なカクテルバーが、戦後またオープンしたので、今日は美夜も誘われて来ている。
「戦前、女学校の帰りに、寄っていたのよ。カウンターで、マスターと、よくおしゃべりしてたわ」
「ええ、すごい。」
「だって私、モダンガールだったもん。」
さすが、父の妹だけある。
叔母は、柄物のフリルのブラウスとタイトなスカート、春乃は綺麗なワンピース、美夜は、紺色の上着にスカートで、つくづく自分は地味だと思った。
磨かれたカウンターがコの字型に広がり、キャビネットには、美しい色のリキュールや、沢山の種類のボトルが並んでいる。
カウンターに座ってる人たちも、何となくおしゃれな人が多い。
そのカクテルバーで、美夜は初めて、色とりどりのカクテルを飲んだあと、外に出ると、すっかり夜の街になっていた。
家業がホテルをしている春乃は、カクテルにも興味深々だった。
マスターに、色々質問したり、
「また行きたいな。カクテルのことを勉強したい」
と言って、喜んだ。
夜の街はこれから賑やかだ。
人の流れとともに、駅の方へ3人で歩いていると、向こうからも、目立つ3人組が歩いてきた。
大柄な、背広姿の男で、咥え煙草。左右に派手な女性二人と、歩いてくる。
「隼人くん・・・」
女性二人は、先日見た女性とも、また違うようだが、よくわからない。
地味な美夜一人だと、周囲に紛れて気づかなかったかもしれないが、こっちも3人連れで、派手な叔母と、垢抜けた綺麗な春乃さんと一緒だ。
こちらを向いた隼人は、美夜にも気付いて声をかけた。
「よう、美夜。今日はどうしたんだ」
「今晩は。叔母さんの知り合いのお店に行ったの」
傍の叔母と、春乃さんに
「陸兄さんの友だち」
と、言った。
「今晩は。陸と美夜の叔母です。」
「友だちの春乃さん」
春乃とも、挨拶した。
「陸によろしくな」
そう言って、女性を連れて隼人は去って行った。
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