(仮)あの頃〜兄の友人、美しい幼馴染。別れと再会

ピアノ

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続 華やかな日々

水島は、これまでも、会社の人や同伴者を連れて来ることがあった。
2人のときもあれば、数人で来ている時もある。

催しのお世話係をしている春乃は、これまで水島が誰と来ても、気に留めることなく、喜んで席へ案内したり、挨拶をしたりしていたが、今日は、とても気になる。

あの人は誰だろう?

そう、今までとは明らかに違う。
2人とも改まった様子だ。

はっきり言って、デートみたい。水島さんにとって、特別な人? 
見てばかりでは失礼だと思って、見ないようにしたいが、やはり見てしまう。

今日は、コース料理のある催しで、それなりに価格は高い。
カップルや家族、または男性グループ、女性グループで来ていたり、色々だけど、ドレスアップしている人が多い。

こんな時に、2人きりで誘う相手って・・・。

でも、他のスタッフに混じって、料理を持って行き

「いらっしゃいませ」
と、挨拶をする。

水島は、穏やかに微笑して

「こんにちは。今日は忙しそうだね」
と言った。

「はい。おかげさまで」
春乃は、頭をさげた。

相手の女性は、ちょっと硬くなっているようで、黙って軽く会釈をしただけだった。

2人は、それほど話が弾んでいる風でもなく、静かに食事をしている。
すごく親しそうではないけれど。

それからも、水島さんのことが、頭から離れない。

そして、思う。
学生の春乃にすら、時々見合いの話がきている。

春乃の両親は、あまりそういうことを、無理に進めるタイプではないけれど、卒業したら、両親以外の周囲から、もっとやかましく勧められるはずだ。

水島さんは、今戦地から戻って、元気になり、左手が少し不自由だとしても、父親の会社を継ぐべく、仕事をしていて、とても素敵な人。

一般的な成り行きとして、当然、あちこちから結婚の話が持ち上がっているだろう。

そう言えば、これまでも、集まりの時、水島が色々な人たちから話しかけられていたのを、思い出す。

若い女性が、沢山来ていた催しもある。

今までは、水島が来てくれるのが嬉しく、いつも春乃を励ますように、にっこり微笑んでくれて、短い世間話を交わすのが楽しみだった。それで、満足していたはずなのに。

水島さんが今後、今日のように、デートみたいに特定の女性といつも一緒に参加したら・・・多分、自分は。


連れの女性が、化粧室か電話をかけに行ったらしく、席を立った。

1人、テーブル席に物憂げに座っている水島を、春乃は眺めた。

デザートの準備が出来た。さあ、デザートを持って行こう。

母のホテルで働いて接客しているうちに、春乃は、色々な人と話しをした。
ほとんど自分より年長の方々だ。

その人達から、時には困るようなことを言われたり、また、気分を害さないように、逆に伝えなければならないこともある。
自分でも、話し方を工夫してきたし、やはり笑顔が大切。

そうだ、世間話のように、軽やかに、笑顔で言ってみよう。

「水島さん、今日はありがとうございました。

楽しんでいただけましたか?

今日ご一緒の方は、フィアンセとか、そういう方なんですか?」

デザートを並べながら、にっこりして、世間話のように、軽い感じで言う。

水島は、淡々と

「いや、知り合いの娘さんで、一度お連れしただけですよ」

と言った。

「あの、お見合いとかされて、ご結婚されるのかと思ってしまいました」

水島は苦笑した。

多分、こういう話や思惑に、ウンザリしているのかもしれない。

「私も、水島さんとお見合いしたいです・・フフ・」

コーヒーを置きながら、内心では、引きつっていたが、最後まで軽く笑顔で言った。

水島はぷっと吹き出した。

それから、春乃を見て、悪戯っぽく微笑みながら、

「本当に?」

と言った。

春乃は水島の視線に、赫くなりながらも、最後まで笑顔で頷いた。

その後、連れの女性が戻ってきたので、注文されていた紅茶を出した。

心なしか、水島さんは、さっきより楽しそうだった。

それに連れて、同伴の女性も、楽しそうだった。

春乃も、胸のつかえが取れて、気が楽になっていた。
笑顔で軽く言えたと思う。

水島さんも笑っていたし、少なくとも気分を悪くさせたり、困らせたりしなかったと思う。

あとは、冗談だと思われても、取り合ってくれなくても、それは、水島さんの自由だ。
自分の気持ちを伝えて、ほっとした。
これで少なくとも、これからも、わだかまりなく顔を合わせることができる、と思った。
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