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第六章
生まれたてのもふもふ
部屋いっぱいに、強烈な光が広がった——のは一瞬のことで、次に目を開けたときには、すでにリビングは元の景色に戻っていた。
けれど、
「あれっ?」
すぐ目の前。テーブルに置かれた三方の上には、いつのまにか小さなもふもふが乗っていた。
全身がオレンジ色っぽい毛で覆われた、手のひらサイズの生き物。つぶらな瞳に、細長い二つの耳。顔の真ん中にある小さな鼻は、ヒクヒクと忙しなく動いている。
「……ウサギ、ちゃん?」
どこからどう見ても、仔ウサギだった。
突然現れた愛らしい存在に、私の胸は鷲掴みにされる。
「おや。可愛らしいですね。はじめまして、付喪神さん」
猫神様はそう言って、にこりと仔ウサギに微笑みかける。
ということは、この仔ウサギこそが付喪神のあやかしなのか。
「えっ、何? 二人とも、何が見えてんの?」
テーブルの向こうから、柚葉さんだけがオロオロとこちらの様子を窺っている。彼女の目には残念ながら、この可愛らしいもふもふは映らないのだ。
「大丈夫ですよ、柚葉さん。この三方から生まれた付喪神が、姿を現してくれました。とても素敵な仔ウサギさんです」
「えっ、ウサギ? 付喪神って、ウサギの姿をしてるんですか?」
猫神様の説明によると、付喪神の姿は実に様々で、元になった道具に関係した容姿になることが多いのだという。
(言われてみれば、この毛の色も……)
オレンジ色っぽい体毛。それはこの三方の色によく似ている。
「……わたしのことが、見えるの?」
と、それまで静かだった仔ウサギが、ヒクヒクと鼻を動かしながら言った。
(わ。しゃべった)
小さな仔ウサギが、人間の言葉をしゃべっている。声の感じからすると、女の子だろうか。
なんだかメルヘンチックなその光景に、私の胸はますます高鳴る。
「うん。見えてるよ。あなたは付喪神のあやかし、だよね? 私は桜。それからこっちは……」
猫神様と柚葉さんも含めて、私が自己紹介を終えると、ウサギの彼女はわずかに視線を落として、
「あなたたちは……わたしの家族じゃない、よね」
「えっ?」
どこか寂しげな声で彼女はそう言ったかと思うと、今度はそのつぶらな瞳から、ぽろぽろと涙を零し始めた。
「えっ、えっ? 付喪神さん、どうしちゃったの?」
くすん、くすん、と鼻を鳴らして泣いている彼女に、私はどうしていいかわからなかった。
と同時に、先ほど柚葉さんから聞いた話を思い出す。
——家の押入れに置いてたら、何や女の子の泣き声みたいなんが聞こえるようになったんやって。それも一回だけやなくて、何度も何度も。
女の子の泣き声。
柚葉さんのおじいさんが耳にしたというそれは、もしかしたらこの子の声だったのかもしれない。
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