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第七章
上等なあやかし
◯
その後も捜索を続けたものの、銀弥さんを再び見つけることはできなかった。
夕刻になってお腹もペコペコになったところで、今日はもう諦めて帰ろうという結論に至る。
猫神様の背中に乗って先斗町に戻ると、私と犬神様はもうくたくただった。
その中でたった一人、疲労感を微塵も感じさせない猫神様だけはササッと晩御飯を作って、私たちに振る舞ってくれた。
「お二人とも、今日はお疲れ様です。さあ、熱いうちに召し上がれ」
そう言って彼が食卓に並べてくれたのは、秋野菜をたっぷり使ったかき揚げ丼だった。お漬物と一緒に出されたお味噌汁も具だくさんで、見るからに栄養が凝縮されているのがわかる。
「いただきます!」
ほかほかと湯気の立つそれらに、私と犬神様は同時にかぶりつく。
サクッとしたかき揚げは、旬の野菜の甘みがしっかりと感じられて美味だった。
「おいしい……!」
毎度ながら、疲れが吹っ飛ぶほどのおいしさだ。胃が満たされていくのと同時に、体力のゲージが回復していくのを感じる。
隣に座る犬神様も、小さな手で丼を持ち上げ、一心不乱にご飯を口へかき込んでいる。よほどお腹が空いていたらしい。
やがて半分以上食べ終えたところで、彼はハッと我に返ったように丼を置いて咳払いをした。
「それで、猫。銀弥のことだが……。あいつは気配を消していると言っていたな」
今朝、銀弥さんと会ったときのことを私も振り返る。
「ええ。あのときは私も気が散漫していたとはいえ、彼の気配には全く気づきませんでした」
「自らの気配を完全に消すのは、一人前のあやかしでも難しい。やはりあいつは、曲がりなりにもぬらりひょんということだな。並のあやかしとは訳が違う」
そういうものなのか、と私はご飯を咀嚼しながら考える。
一人前のあやかしでも難しいことを、銀弥さんはまだ半人前の身にもかかわらずやってのける。ぬらりひょんというのは、それだけ上等な力を持っている存在らしい。
「あの。ぬらりひょんって、どういうあやかしなんですか? 私、名前はなんとなく聞いたことがあるんですけど、よく知らなくて……」
有名なアニメや漫画にも登場するぬらりひょん。確か、妖怪の総大将的な存在として描かれていたようなイメージもあるけれど。
「ぬらりひょんは、常に飄々として掴みどころのない神出鬼没のあやかしです。人の懐に入り込むのが上手いうえに、妖力も高いんで、多くのあやかしを先導するカリスマ性を持ってます」
そんな猫神様の説明に、私はなるほどと思う。
妖怪の総大将というイメージは、そのカリスマ性からきているのかもしれない。
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