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1巻
1-2
◯
炊き立ての筍ご飯に、千枚漬けと赤だし。艶々のだし巻き卵と、メインは桜鯛の煮付け。
座敷に通された私たちに猫神様が用意してくれたのは、旬の食材を使った手料理だった。
「わぁ……。ほ、ほんかくてき」
まさかここまでしっかりとしたご飯をいただけるとは思っていなかったので、私は驚きと感動とで目を回してしまう。
やけに美味しそうな匂いがするな、とは思っていたけれど、こうして実物を目の前にすると、手慣れた感じのする盛り付けまでもが美しい。
隣に座る蜜柑くんはすでに食べ始めており、お箸をぎこちなく使いながら「うん、美味しい!」としきりに唸っている。
「あ、あの。私までご馳走になっちゃっていいんですか? それにお代は……」
「お代なんていりません。あなたは蜜柑さんのことをここまで案内してくらはった恩人ですから」
「いえ、そんな。私、行き先に迷ってばかりで全然役に立たなくて」
道案内を申し出たわりに、ここへ来るまでにあちこち彷徨ってしまった。ほとんど蜜柑くんと一緒に迷っていただけなので、とても仕事をしたとは言えないのだけれど、
「そんなことないよ! 桜おねえちゃんが一緒じゃなかったらボク、ここまでたどり着けなかったもん」
蜜柑くんはそう、口元にご飯粒を付けたまま私をフォローしてくれる。
「み、蜜柑くん……」
彼の優しすぎる言葉にじーんとして、私は思わず泣きそうになる。
「そういうことですから、ほんまに遠慮せんと。それに、私も自分の作った料理でお腹いっぱいになってもらえるのは嬉しいんで」
優しい二人に促されて、私はようやくお箸を手に取る。そうして最初に口へ運んだのは、メインの桜鯛の煮付けだった。
甘めの煮汁が染み込んだ身が、口の中で解けていく。
「お、美味しい……」
あったかくて、顔全体がとろける。
「お口に合って何よりです」
ふふ、と微笑する猫神様の美しい姿に、視界まで幸せになる。見た目も綺麗で、優しくて、色んな意味で神様って感じがする。
「それで、蜜柑さん。こっちの世界で会いたい人がいるって言うてましたよね?」
猫神様は私たちの向かいに座ると、ようやく本題に入ったようだった。
(さっきも聞いたけど、こっちの世界って……?)
私が赤だしをすすりながらキョトンとしていると、それに気づいた猫神様が補足してくれる。
「こっちの世界いうのは、あなたたちのような人間が住む『この世』のことで、『現世』といいます。そして私たちのような存在は、本来は『幽世』という別の世界に住んでるものなんです」
「うつしよと……かくりよ?」
急にファンタジーの世界に飛び込んでしまったような気がしたけれど、目の前にいる彼らがまさにそういう存在なのだから今さらか、とも思う。
「私たちが今いるこの場所は、その狭間にある空間で、普通の人間にはたどり着けません。あなたのように、私たちの存在が見える特別な人でないと」
言われて、ハッと思い出す。
なんとなく流されるまま私はここにいるけれど、普通の人はそもそも彼らの存在すら認知することができないのだ。
「たまにいたはるんです。あなたのように、我々『あやかし』の姿が見える人間が」
「あやかし……」
彼らのような存在には今まで何度も遭遇してきたけれど、それがあやかしと呼ばれるものだというのは初めて知った。
普通の人には見えない、不思議な存在。それが見える私は、幼い頃から嘘つき呼ばわりされて、周りとうまく付き合うことができなかった。
「普段は幽世に住んでいるあやかしですが、修行を積んで一人前になると、こちらの世界にやってくる者もいます。それは問題ないんですが、稀にこの蜜柑さんのように、まだ半人前にもかかわらずこちらの世界へ迷い込む者もいます」
半人前、と言われた蜜柑くんは気まずそうに苦笑して頭を掻く。どうやら彼は道に迷っていただけでなく、世界そのものに迷い込んでしまっていたようだ。
「蜜柑さんのような、こちらの世界で迷子になったあやかしを、あちらの世界へ送り帰す案内人――それが、私の役目なんです」
そう言うと、彼は蜜柑くんの方を見て「ね?」と優しく微笑む。
蜜柑くんは口いっぱいにだし巻き卵を頬張ったまま、「うん!」と頷く。
そうか。だから蜜柑くんは猫神様を捜していたのだ。
けれど、まだ一つ疑問が残っている。
(蜜柑くんがこっちの世界で会いたい人って、どんな人なんだろう……?)
◯
食事を済ませてお腹がいっぱいになると、蜜柑くんはうつらうつらと舟を漕ぎ始める。
「蜜柑さん、蜜柑さん。まだ眠ったらあきませんよ。こっちの世界でまだやりたいことがあるんでしょう?」
「ふぁ……あ、うん。そうなんだ。ボク、ずっと前にこの世界でお世話になった人に会いたくて……」
寝ぼけ眼をこすりながら、蜜柑くんはここへ来た目的を思い出す。
「ずっと前に、この世界で? あれ。蜜柑くんって、前にもここへ来たことがあるの?」
不思議に思って、私は尋ねる。
まだ半人前のあやかしである蜜柑くんは、本来ならまだこっちの世界に来てはいけないはずだ。なのに以前にもここへ来たことがあるということは、もしかして彼は迷子の常習犯なのだろうか。
「んっとね。その人と会ったのは、ボクがまだあやかしになる前のことだよ」
「あやかしになる、前……?」
ますますわからなくて、私はオウム返しに聞く。そこへ助け舟を出してくれたのは猫神様だった。
「あやかしは、もともと現世で生きていた人間や動物の生まれ変わりも多いんです。特に強い未練を残して亡くなった場合は、あやかしとなって前世の記憶を取り戻すこともあります。蜜柑さんの場合は、昔こちらの世界で生きていた猫が、亡くなった後にこうしてあやかしになったんですよ。ですから今は、一人前の化け猫になれるよう修行中なんです」
ね、と彼が蜜柑くんに微笑むと、蜜柑くんはやはり「うん!」と元気よく返事をする。
生まれ変わりという神秘的な現象をさらりと説明されて、私は不思議な気持ちになった。
「生まれ変わり……。じゃあ蜜柑くんが会いたい人ってもしかして、前世の飼い主さんってこと?」
「かいぬし? 名前はよく覚えてないけど、こっちの世界でずっと一緒にいた人だよ。優しい女の人だった」
彼の話からすると、やはり会いたい人というのは彼の飼い主だった可能性が高い。
「本来であれば、今すぐにでも蜜柑さんをあちらの世界へ帰さなあかんのですけれど……」
「えっ。やだよ、猫神様。ボク、どうしてもあの人に会いたいんだ。猫神様ならなんとかしてくれると思ってここまで来たのに」
蜜柑くんは必死に訴える。確かにこの優しい神様なら、困っている人を見ると放ってはおけない気がする。
「一目見るだけでいいんだ。あの人はきっと、ボクの姿も見えないだろうし……。あの人が元気でいるところさえ確認できたら、すぐに帰るからさ」
「そうですね。少しだけ寄り道するくらいなら、上の方々も許してくらはることでしょう。一緒に、その人のことを捜してみましょか」
「ほんと? やったぁ! ありがとう猫神様!」
やっぱり、こうなった。どうやら蜜柑くんの見立ては間違っていなかったらしい。
それにしても、『上の方々』とは。神様より上の存在って、一体何者なんだろう?
「……しかし問題は、その人がどこにいたはるのか、ですよね。蜜柑さんがこの京都に迷い込んだいうことは、ここからそう遠い場所ではないと思いますけど」
そういうものなのか……と、私は今日何度目かになる感想を抱きつつ、熱いほうじ茶をすすって二人の会話の行方を見守る。
「蜜柑さん。その人の居場所について、何か手掛かりになりそうな記憶はありませんか? たとえばその人の家の近くに、何か目印になりそうなものがあったりとか」
「うーん、家の近く……。そういえば、あの人はよく、ボクと一緒に近所の神社に行ってたよ。そこでゆっくり散歩をして、ぼーっと木を眺めてることが多かった気がする」
家の近所に神社があった。貴重な情報ではあるけれど、残念ながらそれだけでは場所が絞り込めない。何しろここ京都には歴史ある神社仏閣がそこかしこに存在しているのだから。
猫神様も、これには困った顔をして頭を悩ませている。
「もう少し、情報がほしいですね。その神社ならではの特徴とか、何か思い出せることはありませんか?」
「うーん、思い出せること……」
蜜柑くんはしばらく部屋の天井をぼんやりと眺めていたけれど、やがて何かに思い当たったのか、ほんのりと口元を綻ばせて言った。
「そういえば、桜が綺麗だったよ」
「桜?」
急に私の名前が呼ばれたような気がして、一瞬どきりとする。
けれどもちろん、彼が口にしたのはお花の桜の方だった。
「桜の季節になるとね、その神社にはたくさんのお店が集まって、人もいっぱい来るんだ。みんなで美味しいものを食べながら、楽しそうに桜を見てたよ。ボクも、あの人も」
そう語る蜜柑くんの表情は、これ以上ないほど幸せそうだった。きっと大切な思い出なのだろう。
「桜の時期にお店……ってことは、屋台のことかな? お祭りがあったってこと?」
私が聞くと、蜜柑くんは「そう、かも?」と曖昧に首を傾げる。
「この辺りで桜祭りが行われる神社いうと、ある程度は絞られますね。平野さんに長岡の天神さん、やわたのはちまんさん、それから……」
猫神様が『さん』付けで並べたそれらの名前は、すべて京都にある神社のものだった。
京都の人は色んなものに『さん』を付けて呼ぶ文化がある。
名前が挙げられた神社は、平野神社、長岡天満宮、石清水八幡宮、平安神宮、梅宮大社、向日神社の六ヶ所だ。
さすがは案内人の神様。現世の土地鑑もしっかりあるらしい。
「蜜柑くん。この六つの中に聞き覚えのある名前はない?」
「ごめん。ボク、あやかしになる前は人間の言葉はよくわからなかったから……」
「ああ、そっか」
確かにそうだな、と思う。彼がまだ普通の猫だった頃は、こんな風に人と話すことはできなかったのだから。
とはいえ、たまに人の言葉を理解していそうな反応をする猫もいるけれど。
「その神社の桜はね、お昼に見るのも好きだったんだけど、夜に見るのも綺麗だったんだ。境内のあちこちに灯りがあってね、夜でもたくさんの人が見に来てた」
「夜桜のライトアップもあったいうことですね」
猫神様の言葉を聞いて、私はすぐさまスマホで夜桜の情報を検索する。
ちょうど今は桜の時期。開花情報や祭りの日程など、桜に関する情報が日々更新されている。
「……石清水八幡宮と梅宮大社、それから向日神社では、夜桜のライトアップはないみたいです。他の三つの神社では開催されてますけど」
私がネットの検索結果を報告すると、猫神様は私と目を合わせて「ありがとうございます」と微笑んだ。
夜桜のライトアップがないということは、蜜柑くんの思い出の場所はそこではないということだ。
となると、残るは平野神社、長岡天満宮、平安神宮の三つ。おそらくこの中のどれかが、彼の記憶にある場所なのだろう。
「蜜柑さん。その神社の桜は、どんな形をしてましたか? 色んな形をしてませんでしたか?」
(形……?)
猫神様が不思議な質問をしたので、私はその意図を測りかねていると、
「あっ。うん! そうそう! お花の形がね、みんなバラバラだった。花びらが少ないのもあれば、いっぱいなのもあって。どこを見ても、ちょっとずつ形が違うんだ」
蜜柑くんは興奮気味に、猫神様の質問に食いつく。
「なるほど。桜の種類が多いいうことは、その神社は平野さんかもしれませんね」
猫神様はそう納得した様子で、今度は私に声をかける。
「すみませんが、『平野神社』を検索してもらえますか。できたら境内の写真を蜜柑さんに見せてあげてほしいんですが」
私はもちろん快諾して、言われた通りに画像を検索する。すると、画面には平野神社と思しき境内の写真がいくつも並んだ。
「蜜柑くん。あなたの思い出の場所って、ここのことかな?」
スマホの画面を蜜柑くんに見せると、彼はそれを目にした瞬間、ふわふわの耳をぴょこりと立てる。
「……うん。間違いないよ。ボクがあの人と一緒にいたのは、この神社だ!」
◯
蜜柑くんの思い出の場所は、平野神社で間違いない。
そこに行けばもしかしたら、彼の会いたい人と再会できるかもしれない。
「では、さっそく向かいましょか」
猫神様は私と蜜柑くんを連れて表に出た。狭い路地を抜け、さらに先斗町を抜けて再び四条通に出る。
平野神社がある場所は、ここからだと北西の方角だ。さすがに歩いていける距離ではないので、必然的に交通機関を使うことになる。
「ええと……。ここから行くなら、バスと電車とどっちが早いんだろう……?」
近くには阪急電車の京都河原町駅、それから京阪電車の祇園四条駅とがある。その周りにはバス停もたくさんあるので、選択肢は多い。
けれど、まだこの土地に越してきて間もない私には、平野神社までの行き方がわからない。猫神様ならきっと知っているだろうから、とりあえず彼についていこうと考えていると、
「駅前は人通りが多いので、ちょっと離れましょか」
と、予想外の言葉が耳に届いた。
「えっ。駅の方に行かないんですか? たぶんバス停も駅の近くにあると思いますけど」
「バスは使いません。もちろん電車も。私の背中に乗ってもらった方が速いんで」
「え?」
今、なんて言った?
私が目を丸くしていると、猫神様はやわらかい笑みを浮かべて言う。
「私は、自分の姿形を変えることができるんです。ほら、こんな風に」
言うなり、彼はポンッとささやかな白煙を上げて、一瞬にして姿を消した。
「えっ。猫神様!? どこに行っちゃったの?」
まるで手品のように消えてしまった彼を捜して、私はオロオロと辺りを見渡す。
「桜おねえちゃん。猫神様ならここにいるよ。ほら、ここ」
と、蜜柑くんが隣から言った。彼は「ここ、ここ」としきりに私の足元を指差している。
「ここ……?」
促されるまま自分の足元を見てみると、そこにはいつのまにか、一匹の白猫がいた。鼻と耳がピンク色で、白い体毛のところどころに赤い模様がある。
その特徴的な姿には見覚えがあった。
「あっ、この子! さっき猫神様のところまで案内してくれた白猫ちゃん!」
そう私が叫んだ直後。
白猫はまたポンッと白煙を上げて、再び猫神様の姿へと戻った。
「どうです? 便利でしょう?」
彼はそう言って、ちょっとだけ得意げに微笑んでみせる。
どうやらあの白猫は、蜜柑くんが最初に言っていた通り、猫神様で間違いなかったようだ。
「ちなみに今はあやかしの姿ですが、人間の姿にもなれるんですよ。この姿のときは、普通の人にも私の姿が見えるようになるんです」
彼はまたポンッと白煙を上げて、今度は人間の姿になった。
「わぁ……」
そこに現れた彼の容姿に、私は思わず目を奪われていた。
顔の造形はそこまで変わらないけれど、もともと黄金色だった切れ長の瞳は、薄いブラウンの光を携えている。髪も短くなっており、今は烏の濡れ羽色。すらりとした長身に纏うのは、黒の着流しだ。
あやかしの姿では神々しい美しさがあったけれど、こちらはこちらで、どこか怪しい色気がある。
(こ、こっちの姿も好きかも……)
なんて、浮ついた気持ちになっている自分に気づいて、私は慌てて頭を振る。
「と、あんまり遊んでると人目につきますね。もう少し人通りの少ないところへ行きましょか」
猫神様は人間の姿のまま、私たちを連れて繁華街から離れていく。やがて人の気配のないところまで来ると、彼はようやく立ち止まった。
「さて。ではこの辺で。今からちょっと大きい体に化けますけど、びっくりせんといてくださいね」
そう前置きしてから、彼はまたしても白煙を上げ、今度はボンッ! と大きな音を立てて変身した。
「ひゃっ……!」
思わず体が仰け反って、ヘンな声が出た。
そうして目の前に現れたのは、巨大な獣だった。
全長五メートルはゆうに超えていそうな、ネコ科に見えるもふもふ。白い体毛のところどころには赤い線のような柄があり、狼のようにシュッとした顔には隈取にも似た模様が浮かぶ。そしてお尻の辺りから伸びる尻尾は、二又に分かれてそれぞれ揺れていた。
「こ……これが、猫神様?」
あまりにも迫力のある姿に、私は口をぱくぱくとさせる。
まるで猛獣のようなその巨大なもふもふは、私と蜜柑くんを見下ろして言った。
「どうぞ、背中に乗ってください。私の体毛に隠れてしまえば、あなたの姿も周りから見えなくなります。そのまま平野神社までひとっ飛びです」
言われるがまま、私は恐る恐る彼の方へ近づく。猫神様は私たちが乗りやすいよう、伏せの姿勢をしてくれる。
白い体毛に覆われた背中はふわふわで、手を差し入れてみるとどこまでも深い毛に埋もれていく。やがて指先がやわらかい皮膚に触れて、猫神様の体温を感じた。
なんて触り心地の良い背中なんだろう。このままずっともふもふしていたくなってしまう。
「ふふふっ。猫神様の背中に乗せてもらうの、久しぶりだなぁー。ふわふわであったかくて、すぐ眠くなっちゃうんだよね」
蜜柑くんはそう嬉しそうに言うと、少しだけ助走をつけて猫神様の背中へと飛び乗った。すると彼の小さな体は、ふわふわの毛の中に埋もれて完全に見えなくなる。
「さあ、桜さんも」
猫神様が言った。
桜さん、と自然に名前を呼ばれて、私はなんだか胸の奥がくすぐったくなる。
炊き立ての筍ご飯に、千枚漬けと赤だし。艶々のだし巻き卵と、メインは桜鯛の煮付け。
座敷に通された私たちに猫神様が用意してくれたのは、旬の食材を使った手料理だった。
「わぁ……。ほ、ほんかくてき」
まさかここまでしっかりとしたご飯をいただけるとは思っていなかったので、私は驚きと感動とで目を回してしまう。
やけに美味しそうな匂いがするな、とは思っていたけれど、こうして実物を目の前にすると、手慣れた感じのする盛り付けまでもが美しい。
隣に座る蜜柑くんはすでに食べ始めており、お箸をぎこちなく使いながら「うん、美味しい!」としきりに唸っている。
「あ、あの。私までご馳走になっちゃっていいんですか? それにお代は……」
「お代なんていりません。あなたは蜜柑さんのことをここまで案内してくらはった恩人ですから」
「いえ、そんな。私、行き先に迷ってばかりで全然役に立たなくて」
道案内を申し出たわりに、ここへ来るまでにあちこち彷徨ってしまった。ほとんど蜜柑くんと一緒に迷っていただけなので、とても仕事をしたとは言えないのだけれど、
「そんなことないよ! 桜おねえちゃんが一緒じゃなかったらボク、ここまでたどり着けなかったもん」
蜜柑くんはそう、口元にご飯粒を付けたまま私をフォローしてくれる。
「み、蜜柑くん……」
彼の優しすぎる言葉にじーんとして、私は思わず泣きそうになる。
「そういうことですから、ほんまに遠慮せんと。それに、私も自分の作った料理でお腹いっぱいになってもらえるのは嬉しいんで」
優しい二人に促されて、私はようやくお箸を手に取る。そうして最初に口へ運んだのは、メインの桜鯛の煮付けだった。
甘めの煮汁が染み込んだ身が、口の中で解けていく。
「お、美味しい……」
あったかくて、顔全体がとろける。
「お口に合って何よりです」
ふふ、と微笑する猫神様の美しい姿に、視界まで幸せになる。見た目も綺麗で、優しくて、色んな意味で神様って感じがする。
「それで、蜜柑さん。こっちの世界で会いたい人がいるって言うてましたよね?」
猫神様は私たちの向かいに座ると、ようやく本題に入ったようだった。
(さっきも聞いたけど、こっちの世界って……?)
私が赤だしをすすりながらキョトンとしていると、それに気づいた猫神様が補足してくれる。
「こっちの世界いうのは、あなたたちのような人間が住む『この世』のことで、『現世』といいます。そして私たちのような存在は、本来は『幽世』という別の世界に住んでるものなんです」
「うつしよと……かくりよ?」
急にファンタジーの世界に飛び込んでしまったような気がしたけれど、目の前にいる彼らがまさにそういう存在なのだから今さらか、とも思う。
「私たちが今いるこの場所は、その狭間にある空間で、普通の人間にはたどり着けません。あなたのように、私たちの存在が見える特別な人でないと」
言われて、ハッと思い出す。
なんとなく流されるまま私はここにいるけれど、普通の人はそもそも彼らの存在すら認知することができないのだ。
「たまにいたはるんです。あなたのように、我々『あやかし』の姿が見える人間が」
「あやかし……」
彼らのような存在には今まで何度も遭遇してきたけれど、それがあやかしと呼ばれるものだというのは初めて知った。
普通の人には見えない、不思議な存在。それが見える私は、幼い頃から嘘つき呼ばわりされて、周りとうまく付き合うことができなかった。
「普段は幽世に住んでいるあやかしですが、修行を積んで一人前になると、こちらの世界にやってくる者もいます。それは問題ないんですが、稀にこの蜜柑さんのように、まだ半人前にもかかわらずこちらの世界へ迷い込む者もいます」
半人前、と言われた蜜柑くんは気まずそうに苦笑して頭を掻く。どうやら彼は道に迷っていただけでなく、世界そのものに迷い込んでしまっていたようだ。
「蜜柑さんのような、こちらの世界で迷子になったあやかしを、あちらの世界へ送り帰す案内人――それが、私の役目なんです」
そう言うと、彼は蜜柑くんの方を見て「ね?」と優しく微笑む。
蜜柑くんは口いっぱいにだし巻き卵を頬張ったまま、「うん!」と頷く。
そうか。だから蜜柑くんは猫神様を捜していたのだ。
けれど、まだ一つ疑問が残っている。
(蜜柑くんがこっちの世界で会いたい人って、どんな人なんだろう……?)
◯
食事を済ませてお腹がいっぱいになると、蜜柑くんはうつらうつらと舟を漕ぎ始める。
「蜜柑さん、蜜柑さん。まだ眠ったらあきませんよ。こっちの世界でまだやりたいことがあるんでしょう?」
「ふぁ……あ、うん。そうなんだ。ボク、ずっと前にこの世界でお世話になった人に会いたくて……」
寝ぼけ眼をこすりながら、蜜柑くんはここへ来た目的を思い出す。
「ずっと前に、この世界で? あれ。蜜柑くんって、前にもここへ来たことがあるの?」
不思議に思って、私は尋ねる。
まだ半人前のあやかしである蜜柑くんは、本来ならまだこっちの世界に来てはいけないはずだ。なのに以前にもここへ来たことがあるということは、もしかして彼は迷子の常習犯なのだろうか。
「んっとね。その人と会ったのは、ボクがまだあやかしになる前のことだよ」
「あやかしになる、前……?」
ますますわからなくて、私はオウム返しに聞く。そこへ助け舟を出してくれたのは猫神様だった。
「あやかしは、もともと現世で生きていた人間や動物の生まれ変わりも多いんです。特に強い未練を残して亡くなった場合は、あやかしとなって前世の記憶を取り戻すこともあります。蜜柑さんの場合は、昔こちらの世界で生きていた猫が、亡くなった後にこうしてあやかしになったんですよ。ですから今は、一人前の化け猫になれるよう修行中なんです」
ね、と彼が蜜柑くんに微笑むと、蜜柑くんはやはり「うん!」と元気よく返事をする。
生まれ変わりという神秘的な現象をさらりと説明されて、私は不思議な気持ちになった。
「生まれ変わり……。じゃあ蜜柑くんが会いたい人ってもしかして、前世の飼い主さんってこと?」
「かいぬし? 名前はよく覚えてないけど、こっちの世界でずっと一緒にいた人だよ。優しい女の人だった」
彼の話からすると、やはり会いたい人というのは彼の飼い主だった可能性が高い。
「本来であれば、今すぐにでも蜜柑さんをあちらの世界へ帰さなあかんのですけれど……」
「えっ。やだよ、猫神様。ボク、どうしてもあの人に会いたいんだ。猫神様ならなんとかしてくれると思ってここまで来たのに」
蜜柑くんは必死に訴える。確かにこの優しい神様なら、困っている人を見ると放ってはおけない気がする。
「一目見るだけでいいんだ。あの人はきっと、ボクの姿も見えないだろうし……。あの人が元気でいるところさえ確認できたら、すぐに帰るからさ」
「そうですね。少しだけ寄り道するくらいなら、上の方々も許してくらはることでしょう。一緒に、その人のことを捜してみましょか」
「ほんと? やったぁ! ありがとう猫神様!」
やっぱり、こうなった。どうやら蜜柑くんの見立ては間違っていなかったらしい。
それにしても、『上の方々』とは。神様より上の存在って、一体何者なんだろう?
「……しかし問題は、その人がどこにいたはるのか、ですよね。蜜柑さんがこの京都に迷い込んだいうことは、ここからそう遠い場所ではないと思いますけど」
そういうものなのか……と、私は今日何度目かになる感想を抱きつつ、熱いほうじ茶をすすって二人の会話の行方を見守る。
「蜜柑さん。その人の居場所について、何か手掛かりになりそうな記憶はありませんか? たとえばその人の家の近くに、何か目印になりそうなものがあったりとか」
「うーん、家の近く……。そういえば、あの人はよく、ボクと一緒に近所の神社に行ってたよ。そこでゆっくり散歩をして、ぼーっと木を眺めてることが多かった気がする」
家の近所に神社があった。貴重な情報ではあるけれど、残念ながらそれだけでは場所が絞り込めない。何しろここ京都には歴史ある神社仏閣がそこかしこに存在しているのだから。
猫神様も、これには困った顔をして頭を悩ませている。
「もう少し、情報がほしいですね。その神社ならではの特徴とか、何か思い出せることはありませんか?」
「うーん、思い出せること……」
蜜柑くんはしばらく部屋の天井をぼんやりと眺めていたけれど、やがて何かに思い当たったのか、ほんのりと口元を綻ばせて言った。
「そういえば、桜が綺麗だったよ」
「桜?」
急に私の名前が呼ばれたような気がして、一瞬どきりとする。
けれどもちろん、彼が口にしたのはお花の桜の方だった。
「桜の季節になるとね、その神社にはたくさんのお店が集まって、人もいっぱい来るんだ。みんなで美味しいものを食べながら、楽しそうに桜を見てたよ。ボクも、あの人も」
そう語る蜜柑くんの表情は、これ以上ないほど幸せそうだった。きっと大切な思い出なのだろう。
「桜の時期にお店……ってことは、屋台のことかな? お祭りがあったってこと?」
私が聞くと、蜜柑くんは「そう、かも?」と曖昧に首を傾げる。
「この辺りで桜祭りが行われる神社いうと、ある程度は絞られますね。平野さんに長岡の天神さん、やわたのはちまんさん、それから……」
猫神様が『さん』付けで並べたそれらの名前は、すべて京都にある神社のものだった。
京都の人は色んなものに『さん』を付けて呼ぶ文化がある。
名前が挙げられた神社は、平野神社、長岡天満宮、石清水八幡宮、平安神宮、梅宮大社、向日神社の六ヶ所だ。
さすがは案内人の神様。現世の土地鑑もしっかりあるらしい。
「蜜柑くん。この六つの中に聞き覚えのある名前はない?」
「ごめん。ボク、あやかしになる前は人間の言葉はよくわからなかったから……」
「ああ、そっか」
確かにそうだな、と思う。彼がまだ普通の猫だった頃は、こんな風に人と話すことはできなかったのだから。
とはいえ、たまに人の言葉を理解していそうな反応をする猫もいるけれど。
「その神社の桜はね、お昼に見るのも好きだったんだけど、夜に見るのも綺麗だったんだ。境内のあちこちに灯りがあってね、夜でもたくさんの人が見に来てた」
「夜桜のライトアップもあったいうことですね」
猫神様の言葉を聞いて、私はすぐさまスマホで夜桜の情報を検索する。
ちょうど今は桜の時期。開花情報や祭りの日程など、桜に関する情報が日々更新されている。
「……石清水八幡宮と梅宮大社、それから向日神社では、夜桜のライトアップはないみたいです。他の三つの神社では開催されてますけど」
私がネットの検索結果を報告すると、猫神様は私と目を合わせて「ありがとうございます」と微笑んだ。
夜桜のライトアップがないということは、蜜柑くんの思い出の場所はそこではないということだ。
となると、残るは平野神社、長岡天満宮、平安神宮の三つ。おそらくこの中のどれかが、彼の記憶にある場所なのだろう。
「蜜柑さん。その神社の桜は、どんな形をしてましたか? 色んな形をしてませんでしたか?」
(形……?)
猫神様が不思議な質問をしたので、私はその意図を測りかねていると、
「あっ。うん! そうそう! お花の形がね、みんなバラバラだった。花びらが少ないのもあれば、いっぱいなのもあって。どこを見ても、ちょっとずつ形が違うんだ」
蜜柑くんは興奮気味に、猫神様の質問に食いつく。
「なるほど。桜の種類が多いいうことは、その神社は平野さんかもしれませんね」
猫神様はそう納得した様子で、今度は私に声をかける。
「すみませんが、『平野神社』を検索してもらえますか。できたら境内の写真を蜜柑さんに見せてあげてほしいんですが」
私はもちろん快諾して、言われた通りに画像を検索する。すると、画面には平野神社と思しき境内の写真がいくつも並んだ。
「蜜柑くん。あなたの思い出の場所って、ここのことかな?」
スマホの画面を蜜柑くんに見せると、彼はそれを目にした瞬間、ふわふわの耳をぴょこりと立てる。
「……うん。間違いないよ。ボクがあの人と一緒にいたのは、この神社だ!」
◯
蜜柑くんの思い出の場所は、平野神社で間違いない。
そこに行けばもしかしたら、彼の会いたい人と再会できるかもしれない。
「では、さっそく向かいましょか」
猫神様は私と蜜柑くんを連れて表に出た。狭い路地を抜け、さらに先斗町を抜けて再び四条通に出る。
平野神社がある場所は、ここからだと北西の方角だ。さすがに歩いていける距離ではないので、必然的に交通機関を使うことになる。
「ええと……。ここから行くなら、バスと電車とどっちが早いんだろう……?」
近くには阪急電車の京都河原町駅、それから京阪電車の祇園四条駅とがある。その周りにはバス停もたくさんあるので、選択肢は多い。
けれど、まだこの土地に越してきて間もない私には、平野神社までの行き方がわからない。猫神様ならきっと知っているだろうから、とりあえず彼についていこうと考えていると、
「駅前は人通りが多いので、ちょっと離れましょか」
と、予想外の言葉が耳に届いた。
「えっ。駅の方に行かないんですか? たぶんバス停も駅の近くにあると思いますけど」
「バスは使いません。もちろん電車も。私の背中に乗ってもらった方が速いんで」
「え?」
今、なんて言った?
私が目を丸くしていると、猫神様はやわらかい笑みを浮かべて言う。
「私は、自分の姿形を変えることができるんです。ほら、こんな風に」
言うなり、彼はポンッとささやかな白煙を上げて、一瞬にして姿を消した。
「えっ。猫神様!? どこに行っちゃったの?」
まるで手品のように消えてしまった彼を捜して、私はオロオロと辺りを見渡す。
「桜おねえちゃん。猫神様ならここにいるよ。ほら、ここ」
と、蜜柑くんが隣から言った。彼は「ここ、ここ」としきりに私の足元を指差している。
「ここ……?」
促されるまま自分の足元を見てみると、そこにはいつのまにか、一匹の白猫がいた。鼻と耳がピンク色で、白い体毛のところどころに赤い模様がある。
その特徴的な姿には見覚えがあった。
「あっ、この子! さっき猫神様のところまで案内してくれた白猫ちゃん!」
そう私が叫んだ直後。
白猫はまたポンッと白煙を上げて、再び猫神様の姿へと戻った。
「どうです? 便利でしょう?」
彼はそう言って、ちょっとだけ得意げに微笑んでみせる。
どうやらあの白猫は、蜜柑くんが最初に言っていた通り、猫神様で間違いなかったようだ。
「ちなみに今はあやかしの姿ですが、人間の姿にもなれるんですよ。この姿のときは、普通の人にも私の姿が見えるようになるんです」
彼はまたポンッと白煙を上げて、今度は人間の姿になった。
「わぁ……」
そこに現れた彼の容姿に、私は思わず目を奪われていた。
顔の造形はそこまで変わらないけれど、もともと黄金色だった切れ長の瞳は、薄いブラウンの光を携えている。髪も短くなっており、今は烏の濡れ羽色。すらりとした長身に纏うのは、黒の着流しだ。
あやかしの姿では神々しい美しさがあったけれど、こちらはこちらで、どこか怪しい色気がある。
(こ、こっちの姿も好きかも……)
なんて、浮ついた気持ちになっている自分に気づいて、私は慌てて頭を振る。
「と、あんまり遊んでると人目につきますね。もう少し人通りの少ないところへ行きましょか」
猫神様は人間の姿のまま、私たちを連れて繁華街から離れていく。やがて人の気配のないところまで来ると、彼はようやく立ち止まった。
「さて。ではこの辺で。今からちょっと大きい体に化けますけど、びっくりせんといてくださいね」
そう前置きしてから、彼はまたしても白煙を上げ、今度はボンッ! と大きな音を立てて変身した。
「ひゃっ……!」
思わず体が仰け反って、ヘンな声が出た。
そうして目の前に現れたのは、巨大な獣だった。
全長五メートルはゆうに超えていそうな、ネコ科に見えるもふもふ。白い体毛のところどころには赤い線のような柄があり、狼のようにシュッとした顔には隈取にも似た模様が浮かぶ。そしてお尻の辺りから伸びる尻尾は、二又に分かれてそれぞれ揺れていた。
「こ……これが、猫神様?」
あまりにも迫力のある姿に、私は口をぱくぱくとさせる。
まるで猛獣のようなその巨大なもふもふは、私と蜜柑くんを見下ろして言った。
「どうぞ、背中に乗ってください。私の体毛に隠れてしまえば、あなたの姿も周りから見えなくなります。そのまま平野神社までひとっ飛びです」
言われるがまま、私は恐る恐る彼の方へ近づく。猫神様は私たちが乗りやすいよう、伏せの姿勢をしてくれる。
白い体毛に覆われた背中はふわふわで、手を差し入れてみるとどこまでも深い毛に埋もれていく。やがて指先がやわらかい皮膚に触れて、猫神様の体温を感じた。
なんて触り心地の良い背中なんだろう。このままずっともふもふしていたくなってしまう。
「ふふふっ。猫神様の背中に乗せてもらうの、久しぶりだなぁー。ふわふわであったかくて、すぐ眠くなっちゃうんだよね」
蜜柑くんはそう嬉しそうに言うと、少しだけ助走をつけて猫神様の背中へと飛び乗った。すると彼の小さな体は、ふわふわの毛の中に埋もれて完全に見えなくなる。
「さあ、桜さんも」
猫神様が言った。
桜さん、と自然に名前を呼ばれて、私はなんだか胸の奥がくすぐったくなる。
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