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第七章
サプライズ
「すごいすごい! これがあやかしの百鬼夜行なんやね!」
そう声を弾ませ、目を輝かせながら周囲を眺める錫さん。その顔には恐怖の色など微塵もない。
「あの娘っ子は、あやかしが大好きなんや。幼い頃から銀弥が甘やかしてたから、そのおかげやろな。せやから、映画村の妖怪イベントも楽しみにしとったみたいやわ。妖怪と本物のあやかしは別物やけど、それでも見るのが楽しみやって」
幼い頃から、銀弥さんの愛情を一身に受けていた錫さん。そんな彼女だからこそ、あやかしを恐れたりすることもなく、この状況で、あんな風に幸せな顔をしているのだろう。
「曾孫の喜ぶ顔が見たいと、銀弥はいつも言うとった。特に今年は、あの娘っ子が二十歳になったみたいでな。昔でいえば、二十歳は成人の年や。何か祝ってやりたいと銀弥は考えとった。前世では娘の成人式も祝えへんかったから、それが心残りやったんやろな」
前世でやり残したこと。
娘のことも、孫のことも、銀弥さんはお祝いすることができなかった。
「せやから今日は『さぷらいず』をするんやって、あいつは意気込んどった。あやかしのことが大好きな曾孫のために、大勢のあやかしを巻き込んで、さぷらいずを仕掛けるんやって」
「サプライズ……。それが、この百鬼夜行だったんですか?」
「そや。妖怪の百鬼夜行を見に来たはずが、いつのまにか本物のあやかしの百鬼夜行に巻き込まれる……そういう流れで驚かすつもりやったんや。当日まで曾孫にはバレへんように、あやかしたちは銀弥との秘密を守っとった」
この数週間、現世にいるあやかしたちに片っ端から声をかけていた銀弥さん。そして、彼との約束を頑なに守っていた多くのあやかしたち。
彼らはただ、錫さんを祝うためだけに、今日ここへ集まったのだ。
「……銀弥さんらしいですね」
ぽつりと呟くように、猫神様が言った。
そんな彼の反応に、私も頷く。
ちょっと強引で、時には破天荒なこともやってのける銀弥さん。だけどそれは、全ては大事な家族のために動いた結果だった。
「さて。そういうわけやから、これで納得したやろ。俺もそろそろ疲れてきたから、ここらで地上に降りるわ」
そう言い終えるが早いか、一反木綿の彼は私たちを背中に乗せたまま、ひゅるひゅると下降を始めた。
「って、おい!? まだ銀弥の所まで追いついてないだろうが!」
「娘っ子が喜んでるのも見れたし、もう十分やろ。もう体力がもたんのや。文句があるなら振り落とすで」
犬神様の抗議もむなしく、私たちは強制的に地上へ送られることになった。
銀弥さんたちのことを最後まで見届けたかった気持ちもあるけれど、錫さんのことならもう心配はいらない。
どうかこの時間を楽しんでほしいと願いながら、私たちは再び地上へ降り立った。
「錫さんが幸せそうで良かったですね、犬神様」
一反木綿の彼にお礼を言ってから、私は改めて犬神様に笑いかける。
「ふん。まったく人騒がせな奴らだ」
ぷいっと不機嫌そうにそっぽを向く犬神様。けれど、その横顔は満更でもなさそうに見える。
素直じゃないなあ、なんて微笑ましく思いながら、今度は猫神様の方を見てみると、
「あれっ? 猫神様……もしかして、泣いてます?」
わずかに俯いた彼の瞳が濡れているように見えて、私はギョッとした。
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