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第八章
その人を捜して
◯
再び猫神様の背中に乗って、私たちは南禅寺を目指した。
(猫神様の体、あったかいなあ……)
白いもふもふの毛で覆われた背中は、まるで干したてのお布団みたいでぬくぬくだ。
最近は気温も一気に下がってきたので、衣替えが追い付かずにちょっと薄着だった私には、この体温がありがたい。
向かう方角は東北東。
地下鉄・蹴上駅のすぐそばに、目的の場所はあった。
上空からでも確認できる鮮やかな紅葉。それを求めて、地上では多くの観光客が集まっている。
「ちょうど人の波が途切れたので、あの辺りに降りましょか」
猫神様が着地したのは、駅前の坂を少し上った所だった。
そこから南禅寺方面へ歩いていくと、やがてレンガ造りのトンネルの入口が見えてくる。
「あ。これ、私も知ってます。『ねじりまんぽ』っていうんですよね?」
トンネルを見ながら私が言うと、人間の姿に化けた猫神様は「よくご存じですね」と微笑んでくれた。
ねじりまんぽは明治時代の技法で造られたトンネルのことで、強度を保つためにレンガが螺旋状に積まれている。
実際に中を通ってみると、周りを覆うレンガたちがぐるぐると渦を巻いているように見えて面白かった。
ちなみに『まんぽ』というのはトンネルのことだそうで、ねじれたトンネル、という意味で『ねじりまんぽ』と呼ばれているらしい。
そこを通り抜けてさらに数百メートル進むと、私たちはついに南禅寺の境内に入った。
「ここが、南禅寺……」
ざあっと風が木々を揺らしたとき、消え入るような声で緋彩さんが呟いた。
立派な三門まで続く白い石畳。
その両脇から、こちらの視界を遮るがごとく、真っ赤に色づいた楓の木々が枝を広げている。
「この景色から、何か感じ取れるものはありますか?」
隣から、猫神様が尋ねた。
けれど緋彩さんは、困ったように目を伏せる。
「……いえ。今はまだ、何も」
それから、彼女は再び顔を上げてキョロキョロと辺りを見渡した。
紅葉の見頃を迎えた境内は、人で溢れている。若いカップルから老夫婦まで、多くの人がスマホを掲げて写真を撮っている。
この中に、緋彩さんの捜している彼がいるかもしれない。
けれど、その人をどうやって捜し出せばいいのか、私にはわからなかった。
なんとなく、ここに来ればどうにかなるんじゃないかと思っていた。
相手の男性も緋彩さんを捜しているかもしれないし、もしかしたらここで奇跡的に再会できるんじゃないかと。
でも現実的に考えてみれば、その人を見つけ出す手がかりはほとんど無いに等しい。
今の彼が一体どんな姿をしているかはわからないし、そもそも、彼が何かに生まれ変わったという確証もないのだ。
改めて、今回の捜索はとても難しいものだということを認識する。
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