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第八章
雨が止んだら
「お心遣い、感謝いたします。ですが……」
緋彩さんは、迷いを拭い切れない様子で俯いていた。
彼女と猫神様の気持ちは平行線を辿り、時間が経つごとに雨の音だけが増してゆく。
最終的には緋彩さんが折れる形で、この雨が上がったらまた街へ繰り出そう、ということで話はまとまった。
今日は一日中雨の予報なので、出掛けるとすれば明日になる。
おそらくは紅葉シーズン最後の日曜日。私が協力できるのも、きっと明日が最後になるだろう。
行き先について話し合った後、私は早めに帰宅することになった。
例によって、帰りは獣の姿になった猫神様が背中に乗せてくれる。
「……緋彩さん、かなり思い詰めている様子でしたね」
彼のふわふわの毛に抱かれながら、私はぽつりと呟くようにして語りかけた。
辺りは相変わらずの雨模様だけれど、不思議なことに、猫神様の体は一切濡れていない。
どうやら彼の体の周りだけ、神通力的な何かが働いて雨を退けているらしい。
「今日はあいにくの雨でしたから、余計に気持ちが沈んでしまったんかもしれませんね。明日は晴れの予報ですし、少しは彼女の心も上向きになるかもしれません」
そんな猫神様の言葉に、私は頷く。
雨が好き、という人もいるけれど、私はどちらかというと晴れの日の方が好きだった。
空が明るいと、私の心も自然と晴れやかになる。
「明日こそは、見つけられるといいですね。緋彩さんの大切な人」
難しいとはわかっていても、口にせずにはいられなかった。
どうか、緋彩さんの願いが叶ってほしい。
再会できる確率がどれだけ低いとしても、奇跡が起きてほしい。
猫神様もきっと、私と同じように思っているはず。
そう信じて彼の反応を待っていると、
「……今回ばかりは、さすがに難しいかもしれませんね」
「えっ?」
意外な言葉が返ってきて、私は面食らった。
「緋彩さんの想い人は、おそらくすでにこの世を去ってます。その後、生まれ変わったかどうかも定かではありません。もしもまだこの世に新たな命として誕生していないのであれば、私たちが見つけることは不可能です」
不可能、という言葉が猫神様の口から零れたことに、私は驚きを隠せなかった。
迷えるあやかしたちのために、いつも一生懸命な猫神様。そんな彼がこうして後ろ向きな発言をするのは初めてのことだと思う。
「た、確かにそうかもしれませんけど……。でも、まだ諦めるのは早いんじゃないですか?」
「ええ。桜さんの言う通りです。まだ諦めるには早すぎるんです。ですから緋彩さんにとっては、これからが試練となります」
「試練?」
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