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チュートリアル

9話 朝イチ、寝起きで、そんな大切そうな話する??

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 他人と揉めるのが嫌だった。

 (だから俺は、出来るだけ)

 みんなが仲良く

 (笑い合える様に)

 クラスの中心で

 (自分以外の人の為に)

 頑張っていた。

 だけど、俺のやり方は良くなかった。

 自分が貧乏くじを引けば良い。

 それが当時の俺のやり方だった。

 そうしている頃は、周囲の人間からは、良い奴だと言われていた。

 恐らく、彼らの、みんなの言う良い奴とは、都合の良い奴なのだと、分かっていながら。

 「福場くんは、前向きで、リーダーシップがあって、とても良い生徒です。」

 担任の教師から、両親に伝えられる評価は、決まってそんな物であった。

 俺は、笑顔で「そうですか!」という両親と担任の教師へ、お前らは、何を見てるんだ?と言いたくなるのを、ずっと堪えていた。

 他人の顔色を伺い、みんなが仲良く出来るように間を取り持ち、どうすれば、みんなが笑い合えるか考え続け、ふと思う。



 みんなの中に、俺は含まれて居るのだろうか?と。



 答えは、ノーだ。



 だって俺は、福場 優は、貧乏くじを引いている。



 みんなの為に、俺は、自分を犠牲にしていた。

 俺の感情は、叫びは、葛藤は、意思は、何一つ含まれていない。

 それは、反抗期と呼ばれる時期に、丁度重なって爆発した。

 「最近どうしたんだよ?」

 「きっと疲れてんだよお前!」

 「元の優しい優くんに、戻ってよ。」

 「少し前までは、凄く良い子だったのに・・・。」

 まるで、すがられている様だった。

 みんなの理想の福場 優を押し付けられ、本当の俺が殺されていく、そんな気がした。

 だから俺は、福場 優は、自分自身を守る為に、自分の殻に閉じ籠ることにした。

 分かりやすく、壁を作り、自己主張という、自己防衛に打って出た。

 しかし、孤立して尚、他人と言うものは、浅ましかった。

 「へへっ!もっと言ってやれよ!」

 「俺らの分も頼むぜ!」

 「俺らはお前の味方だからさ!」

 自らは決して行動を起こさない癖に、他人には行動をさせようとし、味方だといって、自分では言いにくい事を俺に言わせようとしたり、都合良く利用しようとする、卑しい連中。

 そんな彼らに呆れて、他人に期待をしなくなった。



 結局のところ、人は、押し付け合う事しか出来ないのだ。

 福場 優は、そう悟った。



~~ 目覚める ~~



 「んん~!」

 兵舎で、異世界初めての朝を迎える。

 夢見こそ悪かったが、それでも、ここが夢ではなく、現実であるという事に、言い表し様のない喜びが込み上げる。

 「あ、ねぇねぇ!起きた?起きたの?起きたよねぇ??」

 「んッ!?」

 ベットから起き上がろうとしたら、隣から、聞き覚えのある声が、そっと聞こえてくる。

 (・・・いやいや、王女様だぞ?そもそも、そんな色っぽいフラグ、立てた記憶なんて無い。きっと気のせいだ。あぁ、きっと、色んな事があって混乱してるんだ俺。うん。そうだ。きっとそうに違いない。)

 そして、何事もなかったかの様に、ユウは、瞳を閉じた。

 「ふふーん♪えい!えいえいっ!」

 右の頬っぺたを、ちょんちょんと、つつかれた。

 頭を傾け、目を明けると、朝日に照らされて、より魅力の引き立てられた、赤い瞳が、キョロっと覗く。

 「ふふっ♪」

 と頬を綻ばせ笑う顔は、艶やかで、ドキッとした衝撃を、ユウの心臓に与える。

 「・・・その、これ、どーゆーじょーきょー?」

 「んっ!んん~!」

 反対側からも、聞き覚えのある声が咳払いをする。

 「・・・てへッ♪」

 「あ~、コホン。ララ様、そろそろお戯れはお辞め下さい。でないともれなく、俺の首が飛んじゃうんで。ほんと、勘弁してください。」

 (あー、成る程。察し!)

 「えー!仕方ないなぁ~!仕方ないねぇ~!仕方ないよぉ~!」

 渋々とした態度で、ララは、ユウのベットから起き上がる。

 ララが、ベットから完全に降りてから、ユウは、石の様に固めていた体を動かし始める。

 「で、シュノンさん、これは一体?」

 「いやぁ~、ユウさんを起こしに来たんすけどね?いつの間にか、ララ様が付いてきてて、起こすなら悪戯しちゃおうって、聞かなくってっすね~!」

 「いや、そこは止めようぜ?王族だろ??」

 ユウがそう言うと、ララとシュノンは、微妙な表情で、顔を見合わせる。

 「・・・まぁ、特に秘密って訳でも無いんで、ぶっちゃけちゃうと、ララ様は、正統な王家の人間では無いんですよね~!ハハハッ!」

 「・・・へっ?」

 (・・・うん、ってか、朝イチ、寝起きで、そんな大切そうな話する??しちゃう??ワッツ??)

 「・・・とりあえず、支度するから、出てってくんない?」

 何はともあれ、一旦1人になりたいユウであった。
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