運命の出会いは牢屋から〜搾って逃げて捕まって〜

南野うり

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「ど、どうしてこうなったの?!」

 裸の胸を吸われながら、ティーナは叫ぶ。
 彼女は今、仕事終わりにセヴェリに掻っ攫われ、寝台の上で襲われている。

「何がだ? あ、そうだ。薬草の基礎と調合の基礎と、あと簡単な薬の調合は覚えたからさ、そろそろお得意様用の薬の調合も教えろよ」

 仕事に対してはとても優秀なセヴェリは、この場に似つかわしくない真面目な顔で、真面目な台詞を発した。
 そんな彼は今、牢屋の中では着衣のままだったため触れなかった、形の良い胸をふにふにと揉んでいる。

「ん……な、なんで、そんなに急ぐの?」
「だってあんた、いつ休職しなきゃいけなくなるか分かんねーだろ?」

 不思議そうなティーナに、セヴェリは謎の言葉を返す。

「きゅうしょく?!」
「そ。こんだけ毎日ヤッてんだから……なぁ?」

 彼の言わんとしている事を理解したティーナは、ボボボッと火がついたように顔を真っ赤にする。

「……そ、そんな事あり得ないから! 私避妊薬飲んでるし! あんたが毎日調合してんでしょ?!」
「くく、真っ赤。可愛いなぁ。ちなみにその避妊薬ってのは、オレ特製苦瓜ジュースの事か?」

 セヴェリの爆弾発言に、ティーナはピシリと固まった。

「……苦瓜、ジュース……はっ! まさか、このところ、月のものが来ないのは……」

 ティーナの呟きに、セヴェリは破顔する。

「……マ……ジか?! やったなあ!!」

 セヴェリは、ティーナをガバッと抱き締めた。彼は心の底から嬉しそうに、瞳をキラキラ輝かせている。

「う、うそ……わ、私……」
「身体冷やすな! とにかく安静にしてろ! 今医者呼ぶから!!」

 まだ信じられない様子のティーナに、セヴェリはテキパキと服を着せていく。下着を着け、ワンピースを被せ、カーディガンを羽織らせ、毛布に包くるむ。実に甲斐甲斐しい。

「ティーナ、ありがとうな」

 セヴェリは静かに感謝の言葉を告げた。その目は涙目だ。そしてティーナの唇に、ちゅっと音を立てて口付けると、バタバタと部屋から出ていった。
 少しして、話し声が聞こえてくる。医者に電話をかけているようだ。

「赤ちゃん……セヴと、私の……」

 まさかセヴェリが、こんなにも自分に執着するとは、ティーナは思ってもみなかった。そして、それを喜んでいる自分が未来に居るなんて、初めて彼と出会った時のティーナは、想像もしていなかった。
 それが、どうしてこうなったのか。ティーナは頭を抱える代わりに下腹部をそっと撫でる。
 その顔は知らず知らず、穏やかに微笑んでいた。
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みんなの感想(1件)

貴嶋 司
2019.12.16 貴嶋 司
ネタバレ含む
2019.12.16 南野うり

司さん
わああー!ありがとうございます!!嬉しい!!
ヒーロー視点のお話もその内書けたらなと思ってます(๑•̀ㅂ•́)و✧
今別の短いお話(あれです、チンペチw)書いてるのでまだ先になりますが。

解除

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