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獲物にされた猟師ちゃん

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 言った。彼は、どう思っただろうか。

「…………んー、『イセカイ』って言うのは、国? それとも地名? 俺、割と詳しいはずなのに全く聞いたこと無いんだけど」

 伝わっていなかったらしい。早苗は少々ガックリしながらも、観念して説明する。

「いや、国でも地名でも無くて、この世界とは全く別の世界って意味だよ。怪獣モンスターはいないし、魔法もない世界。その代わり、科学がこの世界より発展してる…………意味、分かるかな?」
「…………何となく」

 アルは髪を掻き上げる。そのままカリカリと頭を掻きながら何やら思案しているようだ。
 笑われはしなかった事に少しだけ安心して、早苗は何か考えている様子のアルが切り出すのを待った。

「…………科学って、写真撮ったり、水道捻ると水が出たり、電力でランプの灯りをつけたり、そう言うものの事?」
「あ、うん、そう。それがもっと発展して、暑い日に部屋を涼しくしたり、たくさんの人を乗せて空を飛べる乗り物があったり……」

 早苗は問われるまま、元の世界の事、自分の事、この世界に来た経緯を話して行く。
 祖父の事など思い出すのも辛い出来事もあったが、包み隠さず話した。

「……お祖父様、無事で居ると良いね」
「うん……ありがとう……信じて、くれるの?」

 優しい言葉を掛けてくれるアルにホッとする。以前、肉屋のおじさんや武器屋のおじさんに『異世界から来た人の話を聞いた事は無いか』と聞いた時は、ただおかしな人間を見るような顔をされただけだった。
 それ以降この世界の人にそう言う話題を持ち掛けるのは避けていた。
 だが今目の前に、変な目で見たり馬鹿にしたりする事無く真剣に聞いてくれる人が居る。その事実に、早苗の胸が温かいもので満たされた。

「あのさ、私の他に異世界から来た人の話とか聞いた事ある?」
「いや、聞いた事無いな……悪いけど」
「……そっか……ううん、ありがとう」

 信じてもらえた事は嬉しいが、結局何の手掛かりも掴めない事に肩を落とす。

「…………辛い事なのに、たくさん話してくれてありがとう。取り敢えずさ、もういい時間だし朝食にしよう」
「あ……もうそんな時間?」

 起きた時は薄暗かった外は、もう明るくなっている。早苗達は随分長く話し込んでいたようだ。
 こちらの世界には時計もあるが、見せてもらうと針がたくさんでよく分からなかった。言葉は通じるが字が読めないのも、時計が読めない理由の一つである。

「消化に良い物が良いよね、持って来させるから君は寝てて」
「ありがとう」

 ふっと微笑み、彼女の頭にポンッと手を触れてからアルは部屋を後にした。
 その後ろ姿を見送った後、妙に優しい彼の態度を思い早苗の頬に熱が集まる。
 彼女は戸惑う。彼とは、もっと凄い事をたくさんしたはずなのに。
 頬に集まった熱が引いても、頭には彼の優しい笑顔が浮かび続け、いつもより速い胸の鼓動はいつまでも治まる事はなかった。


 アルは、廊下を歩きながら考える。早苗の話は多分本当だろうと思った。少なくとも本人は心からそう信じている。
 単純明快な性質の彼女だ。こう言う類いの嘘をつくタイプでは無いだろう。
 それに昔一度、異世界から来た者の話は
 こんなに色々と都合の良い人間を手放すなど勿体ない事は出来ない。
 帰る手立てを見付けられないよう見張っておかなければと、彼は心に決めた。
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