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第7話 コミュニケーション修行?
さてさて。
そんなこんなで5年後……現在に至る。
では、あまりにも手抜きなので。
レミの修行を振り返ってみよう。
本格的に退魔師修行が始まると聞いて、「わー、また暗記地獄か……」と看護学生時代の解剖生理学や薬理学の地獄を思い出してげっそりした。
退魔師と聞いて思い浮かぶのは、数珠やら御幣もって真言やら祝詞を唱える姿が浮かんでしまう、実はオカルト物の漫画を愛読していた過去世の影響が色濃いレミであった。
なので、退魔師には何かしらの呪文めいたモノが必要なのではないか、それを覚えるのが修行なのでは、と短絡的に考えたのである。
そもそもこちらで言う退魔師が何をするのかよく分かっていない、とりあえず魔霊を退治する、程度の認識しかない10歳のレミ(オリジナル)には、30ウン年の記憶があるレミ(シロイシ・リズ)の知識は影響が強すぎて、ローのフォローがなければ、講師役の退魔師達相手に失言の連続だったろう。
というか、実際失言の連続だった、最初は。先輩退魔師だけでなく巫女や長老相手に。
基本的にカロナー島の大人達は長老も巫女も含めて、寡黙である。会話がないわけではないが、余暇は静かに、というか、ボーッとしていることが多い。ただ、遠い目でぼんやりしていると言うよりは、何か考えながら時には笑ったりムッとしたり、一人百面相していた。
今までは、「大人になると、黙々と考え事するようになるのか」と妙に納得し、過去世が統合してからは「何か電波を受け取ってる? 幻聴? 妖霊憑きって、狐憑きとか悪魔憑きみたく、心の病を合法的に強制隔離する悪しき政策じゃないでしょうね?!」と精神看護学の授業を思い出して半分怒りながら心配したりしていたが。
『レミは今は、全部口に出してるよね。端から見たら独り言呟き続けているように見えるんだよ。この島の人たちは、あー、初めての頃はやっちゃうよね、って生暖かい目でみてくれるからいいけどね』
というローの指摘で、大人達は考え事をしているわけではなく、それぞれ自分に憑いている妖霊と会話をしているだけなのだと理解した。
レミの失言の山も、妖霊と交流出来るようになった反動で、訳が分からないことも、やたら口に出してしまっているんだろう、と勝手に結論づけて受け入れていてくれたようだ。
妖霊は、妖霊憑き=依代の魂を土台にすれば他人にも姿を見せることもできるが、声は届かない。
妖霊同士は意志疎通も不可能ではないらしいが、依代以外との言語的交流は姿を見せるよりもずっと力を必要とするため、積極的に行いたくはないという。
ただし感情や気配の感知は、発信側でなく受信側の妖霊の感応力の差によるので、交流には含まれない。
なので基本妖霊が会話する相手は依代だけになるし、妖霊の相手は自分だけなので、妖霊憑きはひたすら心の中に話しかけてくる妖霊と会話する時間が多くなる。
(妖霊は、どうやらかなり話し好きらしい)
例外として、意識を失った依代の肉体を借りて、行動したり多少の会話はできる(レミが泉で意識を失った時のように)が、依代との親和性や妖霊の力量に左右されるため、退魔師レベルの力がないと難しいという。
というわけで。
退魔師=呪文=暗記、という修行の流れを想定していたレミだったが、その修行の初めは想定外の「妖霊と心で対話しましょう」だった。
そんなこと、どうせ指摘したなら、ローが教えてくれればいいのに、どうせならもっと早く。そうしたら恥をかかなくて済んだし。
わざわざ退魔師に教えてもらわなくてもいいのに、とレミは考えたのが、これが難しいという。
そもそも心で話す、という技術が、もともと心での対話しかしない妖霊には教えにくいという。
教えられなくても出来ていること、例えば日本生まれ日本育ちの日本人が、微妙なニュアンスの日本語の言い回しを日本語初心者の外国人に教える、という感覚に近いかもしれない。
とはいえ、「心で対話しましょう」第1段階は、それほど難しくなかった。
考えていることを思い浮かべるだけでよかったので。声に出さないと整理できないタイプのレミ(シロイシ・リズ)であったが、ローが相手をしてくれると、一応会話が成り立つので、話している感覚に近くなった。
難しいのは第2段階の「妖霊と話しながら、他の人間とも話しましょう」だった。
妖霊と話して、次に人間と話して、という切り替えが難しい。
声をかけてきた人間に声に出さずに答えていたり(つまり伝わっていない)、妖霊(つまりロー)相手に肉声で話し出してしまったり(端から見たら空中や壁に独り言を話しているように見える)、と、会話がちぐはぐになってしまう。
妖霊憑き同士や妖霊憑きの生態に詳しい人間(存在するか不明)なら分かりあえても、そんな妖霊との交流自体知らない、妖霊憑きでないカロナー島外の人間とは、かなり齟齬が生じるだろう。
希少な退魔師とはいえ、依頼人との関係づくりがうまくいかないと、依頼の遂行に(主に情報収集や協力体制づくりの上で)支障がでることも多々ある。
多少の変人ぶりは許容してもらえるかも、というのは甘い考えで、そうでなくても退魔の力がなければ、喪神人として爪弾きにされる妖霊憑きなのである、言動には細心の注意と配慮が必要だという。
(過去に退魔師が依頼人に正確な情報をもらえず、予想外に強力な魔霊相手に準備不足で危うく死にかけた例があったという)
故に、退魔師が世界各地で活動するために必要な第1の、そして最重要の技術が、「島以外の人間との良好なコミュニケーションによる人間関係づくり」であったのだ。
……何だか、退魔師の勉強って、看護師っぽい。
そんなこんなで5年後……現在に至る。
では、あまりにも手抜きなので。
レミの修行を振り返ってみよう。
本格的に退魔師修行が始まると聞いて、「わー、また暗記地獄か……」と看護学生時代の解剖生理学や薬理学の地獄を思い出してげっそりした。
退魔師と聞いて思い浮かぶのは、数珠やら御幣もって真言やら祝詞を唱える姿が浮かんでしまう、実はオカルト物の漫画を愛読していた過去世の影響が色濃いレミであった。
なので、退魔師には何かしらの呪文めいたモノが必要なのではないか、それを覚えるのが修行なのでは、と短絡的に考えたのである。
そもそもこちらで言う退魔師が何をするのかよく分かっていない、とりあえず魔霊を退治する、程度の認識しかない10歳のレミ(オリジナル)には、30ウン年の記憶があるレミ(シロイシ・リズ)の知識は影響が強すぎて、ローのフォローがなければ、講師役の退魔師達相手に失言の連続だったろう。
というか、実際失言の連続だった、最初は。先輩退魔師だけでなく巫女や長老相手に。
基本的にカロナー島の大人達は長老も巫女も含めて、寡黙である。会話がないわけではないが、余暇は静かに、というか、ボーッとしていることが多い。ただ、遠い目でぼんやりしていると言うよりは、何か考えながら時には笑ったりムッとしたり、一人百面相していた。
今までは、「大人になると、黙々と考え事するようになるのか」と妙に納得し、過去世が統合してからは「何か電波を受け取ってる? 幻聴? 妖霊憑きって、狐憑きとか悪魔憑きみたく、心の病を合法的に強制隔離する悪しき政策じゃないでしょうね?!」と精神看護学の授業を思い出して半分怒りながら心配したりしていたが。
『レミは今は、全部口に出してるよね。端から見たら独り言呟き続けているように見えるんだよ。この島の人たちは、あー、初めての頃はやっちゃうよね、って生暖かい目でみてくれるからいいけどね』
というローの指摘で、大人達は考え事をしているわけではなく、それぞれ自分に憑いている妖霊と会話をしているだけなのだと理解した。
レミの失言の山も、妖霊と交流出来るようになった反動で、訳が分からないことも、やたら口に出してしまっているんだろう、と勝手に結論づけて受け入れていてくれたようだ。
妖霊は、妖霊憑き=依代の魂を土台にすれば他人にも姿を見せることもできるが、声は届かない。
妖霊同士は意志疎通も不可能ではないらしいが、依代以外との言語的交流は姿を見せるよりもずっと力を必要とするため、積極的に行いたくはないという。
ただし感情や気配の感知は、発信側でなく受信側の妖霊の感応力の差によるので、交流には含まれない。
なので基本妖霊が会話する相手は依代だけになるし、妖霊の相手は自分だけなので、妖霊憑きはひたすら心の中に話しかけてくる妖霊と会話する時間が多くなる。
(妖霊は、どうやらかなり話し好きらしい)
例外として、意識を失った依代の肉体を借りて、行動したり多少の会話はできる(レミが泉で意識を失った時のように)が、依代との親和性や妖霊の力量に左右されるため、退魔師レベルの力がないと難しいという。
というわけで。
退魔師=呪文=暗記、という修行の流れを想定していたレミだったが、その修行の初めは想定外の「妖霊と心で対話しましょう」だった。
そんなこと、どうせ指摘したなら、ローが教えてくれればいいのに、どうせならもっと早く。そうしたら恥をかかなくて済んだし。
わざわざ退魔師に教えてもらわなくてもいいのに、とレミは考えたのが、これが難しいという。
そもそも心で話す、という技術が、もともと心での対話しかしない妖霊には教えにくいという。
教えられなくても出来ていること、例えば日本生まれ日本育ちの日本人が、微妙なニュアンスの日本語の言い回しを日本語初心者の外国人に教える、という感覚に近いかもしれない。
とはいえ、「心で対話しましょう」第1段階は、それほど難しくなかった。
考えていることを思い浮かべるだけでよかったので。声に出さないと整理できないタイプのレミ(シロイシ・リズ)であったが、ローが相手をしてくれると、一応会話が成り立つので、話している感覚に近くなった。
難しいのは第2段階の「妖霊と話しながら、他の人間とも話しましょう」だった。
妖霊と話して、次に人間と話して、という切り替えが難しい。
声をかけてきた人間に声に出さずに答えていたり(つまり伝わっていない)、妖霊(つまりロー)相手に肉声で話し出してしまったり(端から見たら空中や壁に独り言を話しているように見える)、と、会話がちぐはぐになってしまう。
妖霊憑き同士や妖霊憑きの生態に詳しい人間(存在するか不明)なら分かりあえても、そんな妖霊との交流自体知らない、妖霊憑きでないカロナー島外の人間とは、かなり齟齬が生じるだろう。
希少な退魔師とはいえ、依頼人との関係づくりがうまくいかないと、依頼の遂行に(主に情報収集や協力体制づくりの上で)支障がでることも多々ある。
多少の変人ぶりは許容してもらえるかも、というのは甘い考えで、そうでなくても退魔の力がなければ、喪神人として爪弾きにされる妖霊憑きなのである、言動には細心の注意と配慮が必要だという。
(過去に退魔師が依頼人に正確な情報をもらえず、予想外に強力な魔霊相手に準備不足で危うく死にかけた例があったという)
故に、退魔師が世界各地で活動するために必要な第1の、そして最重要の技術が、「島以外の人間との良好なコミュニケーションによる人間関係づくり」であったのだ。
……何だか、退魔師の勉強って、看護師っぽい。
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