秋空の出会い

るい

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野良猫のリーカス

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秋の風が吹き、涼しい季節がやってきた。
冷たい空気が流れる公園に、1匹ののら猫がいた。
茶色い毛の髭が長い、のら猫。名前はリーカス。
この公園は、リーカスの住処である。
リーカスはこの公園で生まれ、この公園で捨てられた。

リーカスはこの公園の主である。
この公園には他ののら猫は近寄らず、リーカスが占拠していた。リーカスは喧嘩が強く、公園にのら猫1匹入ろうものなら、すぐにタックルをお見舞して、追い払う。
すると、誰もこの公園に近寄らなくなった。

ある日、公園に近寄る1匹の子猫がいた。

生まれたばかりなのか、まだ上手く歩けておらず、自分がどこにいるのかも分からない様子だった。
リーカスは何故かその子猫が気になり、声をかけた。

「おい、お前、迷子か?」

子猫は見知らぬ声に飛び上がり、ブルブル震えだした。

「怖がるな。こっちへ来い」

リーカスは子猫の前を歩き誘導するが、子猫はそこから動かない。
仕方なく子猫の首にかぶりつき、無理やり住処へ連れていった。
首を掴まれると、子猫はほっとしたようにブラブラぶらさがっていた。


「ほら、これを食べるといい」

リーカスは小さな小魚を子猫にあげた。
子猫はクンクンと匂いを嗅ぎ、ぺろっと舐めた。
そして、1口、もう1口と小魚を食べ進めた。

「お前、家はどこだ?」

リーカスが質問しても、子猫は答えません。
小魚をぺろりと平らげ、大きく膨らんだお腹を上にして、寝てしまった。


次の日、リーカスは子猫を連れて、公園を歩いた。
子猫は目をきらきらさせながら、公園を見渡していた。明るく綺麗な花に、輝く噴水の水、秋の涼しい風が吹き、まさにお散歩日和。
子猫は、その日も満足そうに寝てしまっていた。

さらに次の日、リーカスと子猫は日向でお喋りをした。この日は日が出て暖かく、いい日光浴日和だった。
子猫の親は、子猫が生まれてすぐに育児放棄をして、捨てられてしまったようだ。
1人で冒険に出てみたものの、餌も取れず、寝床もなく、子猫は1人寂しく歩いていたのだという。

リーカスは過去の自分と重ね、子猫を可哀想に思った。子猫とこの公園で暮らすことにした。


さらにまた次の日、リーカスは子猫に狩りを教えた。
リーカスは上手に獲物をとるが、子猫はぴょんぴょん飛び跳ねるだけで、上手く獲物が取れない。
その日は、リーカスが取った魚を、2人でつついて食べた。


それから1週間、2人は毎日公園で遊んだ。
一緒にちょうちょを追いかけたり、木の実を分け合ったり、魚の観察をしたり、とても充実したものになった。

そして、ある晴れた日。
公園には冷たい風が吹き、少し肌寒いくらいだった。
お母さんと一緒に散歩をしている女の子が通った。
女の子は、公園に入るなり子猫見つけ、近寄ってきた。

「ママ!可愛い猫ちゃんがいる!」

「あらあら本当ね。かわいいわね」

「あこ。このこほしい!飼っていいでしょ?」


女の子は子猫を抱っこし、おねだりしていた。

「そうね。この子もひとりみたいだし、お父さんに相談してからね」

「やったー!子猫ちゃん!また明日来るね!」


お母さんと女の子は、手を繋いで公園を出ていった。
子猫は女の子の後ろ姿を眺めてた。
リーカスと子猫はしばらく見つめ合い、会話をすることなく住処へ戻った。


その日の夜、リーカスは子猫に聞いた。

「お前、どうするんだ?」

子猫は何も答えず、じっと目の前の小魚を見つめていた。
きっとあの子と行きたいに決まっている。
こんな野良の生活より、人間に暖かく育ててもらった方がいいに決まっている。
リーカスはその後、何も言わずに寝床についた。


次の日、よく晴れた天気のいい日だった。
朝早くに目覚めた2人は、いつものように食料をとり、朝食をとっていた。
食べ終えると、子猫はどこかへ行ってしまい、リーカスは1人で日向ぼっこをしていた。
昼になっても、子猫は帰ってこなかった。

もしかしたら、もう行ってしまったのかもしれない。
リーカスの頭に嫌な予感がよぎる。


夕方、あの女の子がお母さんとやってきた。

「子猫ちゃーん!どこー?」

女の子は子猫を探している。

なんだ。まだあの子の元へ行ってないのか。

すると、子猫が何かを咥えて帰ってきた。何故かボロボロの格好をしている。
そしてそれを、リーカスの前において、差し出した。
リーカスは子猫とそれを交互に見て、目に涙を溜めた。

子猫はリーカスに向けてぺこりと頭を下げ、女の子の元へと走っていった。

「あー!いたー!あなたは今日から私の家族よ!」

女の子は子猫に抱きつき、連れて帰った。
子猫は抱っこされたまま、1度も振り帰らなかった。


リーカスは子猫が見えなくなると、子猫に貰った小魚を1匹、大事そうに食べた。



次の日は、雲ひとつない晴天だった。
リーカスは木の上に登り、涼しい風を浴びながら大あくびをした。
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