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僕と’’こいつ’’

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’’こいつ’’は、いつだって僕の言いなり。

「おい、餌をくれ。」

「はいはい、今あげますからね~」

僕が餌を求めると、すぐに準備する。

「はい、召し上がれ」

僕は用意されたごちそうを夢中になって食べる。
すると、’’こいつ’’は満足そうに僕を見る。


「おい、眠いから寝床を用意しろ」

僕がそう言うと、

「はいはい、ここは日が当たって暖かいから、ここで寝なさい」

’’こいつ’’は僕のために温かい場所を用意する。
僕はそこで、ぐーたらぐーたらお昼寝をする。
’’こいつ’’はそんな僕を微笑みながら眺める。

でも、’’こいつ’’は僕に嫌なこともする。


「ほら、お風呂の時間だよ」

「やめろ!それは嫌いだ!」

僕はお風呂というものが大の苦手だ。
体中が濡れ、せっかく綺麗に整えた毛が台無しになる。
それでも’’こいつ’’は容赦ない。

「ふう。やっと終わった」

「く…くそぉ…」

僕はビシャビシャな顔で’’こいつ’’を睨みつける。


でもまあ、時にはいいこともする。

「今日はおやつ買ってきたよ~」

僕はおやつが大好きだ。
’’こいつ’’が選ぶおやつは、センスがある。
どれも僕好みの味で、ぺろりと平らげてしまう。
’’こいつ’’は僕の好みをよく知っている。


’’こいつ’’は、僕に全てを捧げている。
僕がものを壊した時は怒らずに新しいものを用意して、僕が病気の時はすぐに病院へ走り寝ずに看病し、僕が散歩から帰ってこない日は見つかるまで歩き回っていた。

’’こいつ’’はきっと、僕のことが好きなのだろう。
嬉しくはないが、悪い気はしない。

’’こいつ’’が僕のことを大切に思ってくれてるのはよく分かる。

だから、だからその代わりに、僕がずっとそばに居てあげよう。

寒い日は、そばでくっついて温めてやる。
何かが怖い日は、僕の近くにこればいい。
気持ちが落ち着かない日は、僕の頭を撫でるといい。

そうすれば、きっと大丈夫だろう。

だから、君も僕を忘れないでくれ。
僕が死んでも、泣かないでおくれ。

僕は、いつだって君のそばにいるから。
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2021.12.11 ユーザー名の登録がありません

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