お母さんがいなくなった日

るい

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お母さんがいなくなった日

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「だいちゃん、ゲームはもうおしまい!もう寝る時間でしょ?」

お母さんはそう言って、テレビを消した。

「ちょっとー!今いい所だったのにー!」

だいきくんはほっぺたをふくらませ、お母さんを睨みつけた。

「ほら、早く歯を磨いて寝なさい!何度も言わせないの!」

お母さんはいつまでも怒っているだいきくんを急かして、歯を磨かせた。

(もう…お母さんはいつもうるさいんだから…)

だいきくんはしかめっつらのまま、その日は眠りについた。



次の日、だいきくんは朝からずっとゲームをした。

「こら!いつまでゲームやってるの!宿題はもう終わったの?明日の学校の用意はしたの?」

お母さんは口うるさくだいきくんに質問します。

「もう!今からやろうと思ってたところなの!黙ってて!」

だいきくんはおもわず、持っていたゲームを投げてしまった。
お母さんは一瞬驚いた顔をして、部屋から出ていった。

「もう…ほんとにうるさいんだから…」

お母さんが出ていってから、だいきくんはゲームの続きをした。
宿題も、明日の学校の用意もせずに。



次の日、だいきくんは学校で忘れ物をしてしまった。

「あ~しまった…。昨日ちゃんと用意しておけば…」

一瞬、だいきくんの頭にお母さんの顔がチラついた。

「いいや!僕のせいじゃない!お母さんが余計なことを言うからやる気がなくなっちゃっただけなんだ!」

だいきくんは自分にそう言い聞かせても、先生には通じなかった。


「ただいま~」

「おかえり。おやつあるわよ」

お母さんはだいきくんにチョコレートとビスケットを出した。

「ねえ!僕アイスが食べたかった!」

「なによ、せっかく用意したのに!食べないんならおやつ無しですよ」

「アイスがいい!アイスがいい!」

「はぁ…全くもう…」

お母さんは仕方なく、冷凍庫からアイスを出してだいきくんにあげた。

「う~ん、これこれ~!」

だいきくんは美味しそうにバニラアイスを食べた。

「だいちゃん、昨日はちゃんと宿題やったの?」

「ううん、忘れちゃって、先生に怒られた」

「ほら!だからちゃんとやりなさいって言ったでしょ!今日は宿題終わるまで遊んじゃいけません!」

「もう!いちいち言わなくてもわかってるよ!お母さんはいつもうるさいんだから!」

だいきくんがそう言うと、お母さんは黙ってしまった。

「そう。じゃあ、お母さんもう知らないから。」

お母さんはそう言うと、2人が食べ終わったおやつを片付けた。

「は~あ、今日はちゃんと宿題やるか。でも、まずはゲームをしようかな~」

だいきくんはまた宿題もやらず、ゲームを始めた。



次の日、だいきくんはまた先生に怒られた。

「もう!昨日も今日も怒られるなんて…。これも全部お母さんのせいだ!お母さんが何も言わなかったらちゃんとやるのに!」

だいきくんはお母さんに怒りながら帰った。

しかしその日、家に着くと誰もいなかった。

「あれ?お母さんは?」

家中探しても、お母さんはいなかった。

「どっかに出かけてるのかな…ま、ゲームやってれば帰ってくるよね~」

だいきくんはテーブルの上に置いてある手紙に気づかず、ゲームを始めた。

1時間、2時間、どれだけ経ってもお母さんは帰ってこない。
するとその時、お父さんがお仕事を終えて帰ってきた。

「おかえりなさい、ねえ、お母さんは?」

「お母さんならしばらくいないぞ。おじいちゃんの家に行ってるからね」

「ふ~ん、そうなんだ~」

(しめしめ、これでうるさい人がいなくなったぞ!しばらくは平和に暮らせるな~)

だいきくんは、お母さんがいなくても気にせずに、お気楽だった。


次の日、だいきくんは寝坊してしまった。
お父さんは既に仕事に出かけており、テーブルの上に朝ごはんがあるだけだった。

「もう!お母さんったら、起こしてくれたっていいのに!…あ、お母さんは今いないんだった」

だいきくんはお母さんの顔を思い浮かべながら朝ごはんを食べた。

「今何してるのかな~、僕がいなくて寂しがってるかも!でも、今日もお母さんがいないから好きなだけゲームできるな~!」

だいきくんが呑気なことを考えていると、既に授業が始まる時間。

「いけない!遅刻だ!」

急いで朝ごはんを詰め込み、学校へ向かった。
もちろん、先生に怒られてしまった。


「は~あ、また怒られちゃったな~」

落ち込みながら歩いていると、すぐに家に着いた。

「ただいま~」

返事はない。お母さんはまだ帰ってきてないらしい。

「今日も静かでいいな~。さっそくゲームしちゃお」

だいきくんはランドセルを放り投げ、ゲームを楽しんだ。

すると、ふとお母さんの声が聞こえた。

「だいちゃん、宿題はやったの?明日の用意はしたの?」

だいきくんが辺りを見渡しても、誰もいない。

「気のせいか。…先に宿題を終わらせよう」

だいきくんはゲームを切り上げ、勉強机に向かった。

「ついでに明日の用意も…」



次の日、だいきくんは先生に怒られなかった。

「やった!久しぶりに怒られなかったぞ!お母さんに教えてあげよう!」

だいきくんは張り切って家に帰った。
しかし、家には誰もいません。

「そうだった…。お母さん、いつ帰ってくるんだろう」

だいきくんは少しだけ寂しい気持ちになった。

その日の夜も、宿題と学校の用意をきちんと済ませてから眠った。

「お母さん、早く帰ってこないかなァ…」


次の日、ようやくお母さんが帰ってきた。

「ただいま~」

「お母さんだ!」

だいきくんは玄関まで走って、お母さんに抱きついた。

「だいちゃん、いい子にしてた?」

「もちろん!当たり前だよ!」

「朝起きたり、宿題やったり、1人でもちゃんとできた?」

「当然!お母さんが居なくたってしっかりできるもん!」

「えらいじゃない!やればできるわね!」

お母さんはにっこり笑って、だいきくんの頭を撫でた。

「えへへ~。そうだ!久しぶりにゲームでもしよう!」

「え?今日の宿題は終わったの?」

「そんなの後後!まずはゲームから~!」

「ほんとにもう…本当にしっかり出来てたのかしら…」



だいきくんはいつもよりも楽しそうにゲームをした。

「やっぱり、口うるさいお母さんがいた方が楽しいや」

「だいちゃん、お風呂の時間よ!ゲームはやめて早く入って!」

「えー!今いい所なのにー!」

「ほら早く!ゲームは片付けちゃって!」

お母さんはゲームを取り上げ、だいきくんをお風呂へと連れていった。


「だいちゃん、さっきからなにニヤニヤしてるの?」

「ううん、別に~。お母さんがいてくれて嬉しいだけ」

「ん?何か言った?」

「ううん、何にも!」


だいきくんは勢いよく湯船に飛び込んだ。
お母さんとだいきくんのお風呂での笑い声は、外まで響いて、明るい夜の街に吸い込まれて行った。
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