とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~

海堂金太郎

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幼少 ―初めての王都―

第67話 走竜

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「お待たせいたしました。アルテュール様、オレリア様」
「かまわん」
「構わないわ」

 時間をかけてしまったことを詫びるロタリオをリア姉と一緒に制す。
 もう少しじっくりと竜を見ていたいところだが時間がもったいないので次の行動を促すとしよう。

「で、そので何をするのだ?」

 大空を駆け巡るのが『騎竜』であるのなら、大地を駆け巡るのが『走竜』だ。また人を選ぶのが『騎竜』であるなら、人を選ばないのが『走竜』である。

 この二つの線引きをしっかりしないと『騎竜』に選ばれたことを誇りとしている竜騎士にはいやな顔をされる可能性がある、と父上テストに出てきていたのでしっかりとという単語を強調する。
 まぁ二人がそのような狭量な竜騎士であるとは思わないのだけど。

 それから俺は心からの念をロタリオに飛ばした。

(さぁ言うんだロタリオ。走竜に乗って大草原を駆け巡ると!)

 大体の予想は走竜が来た時点で出来ているがそれでも、もしもの場合は存在する。見るだけではい、おしまいなんてこともあり得るのだ。

 ただその不安は杞憂に終わった。ロタリオが俺の最も望んでいる返答をしてくれたからだ。

「こちらの走竜に乗り、大草原にいる騎竜を見学して頂きます」
「ほう、楽しみだな」

 説明不足がすごい。
 が、時間がない今はこれくらいのシンプルさが何よりも大切なこと。残り時間はあとわずかだ。

「ではこちらに」
「わかった」
「オレリア様はこちらです」
「わかったわ」

 走竜に乗っている時の注意事項を確認したあと、俺はロタリオに、リア姉はナディアに連れられて伏せた状態でいる走竜の上にヒョイと持ち上げられまたがる。
『騎竜』でないのだから乗れて当然なのだが、それでも少しほっとしてしまった。

 (ナディアの方に俺は行きたかったけど、リア姉をロタリオの方に行かせるわけにはいかないな。我慢しよう・・・。)

 ほっとすると碌でもないことを考えるのが俺という生き物である。

 その後少しして、自分の前にすっぽりと収まった俺を確認したロタリオは走竜の身体側面をトントンと軽く蹴る。それに応えて走竜が伏せている状態からゆっくりと立ち上がった。

(うおぉぉ高ぇぇぇ)

 なんだかじいちゃんに肩車されたときのことを思い出す。
 ただ、あのときより高くないからか、俺が大きくなったからなのか、はたまた竜に騎乗しているという事実に興奮して麻痺しているのかは分からないが恐怖は一切感じない。あるのは幸福感のみだ。

 先ほどまで見えていなかったものを見るため遠くを望む。
 陽光を反射しキラキラと輝く湖、風が吹く度にあっちへこっちへと揃ってなびく草木。

(あ、忘れてた)

 都市の中の大自然によって興奮が少し冷め、若干ではあるが冷静になった俺はふと気づいた。
 ―――ハッツェンとミラどうすんの?と。

 俺とリア姉は竜を操る達人である竜騎士の前にすぽっと収まっているから、走竜に乗れているのであって、普通ならある程度の騎乗訓練を行わないと走竜に乗ることは出来ない。

 つまりこのままでは彼女たちを置いていってしまうことになるのだ。

「ロタリオ、側付きの者にも貴重な体験をさせてやりたいのだがどうにかならないか?」

 無茶を承知でロタリオにお願いする。

(駄目なら駄目でしょうがない。素人が無責任にギャーギャーと喚くのはちょっとな。けど・・・)

 ――ハッツェンとミラにも楽しんでもらいたい。みんなで楽しみたい。

 そんな俺のわがままにロタリオは肯定でも否定でもなく、

「アルテュール様がご心配なされているようなことは起きませんよ」

 と、答えた。

(え?)

 思わずロタリオを見上げると彼はこちらではなく横を見ていた。
 それにつられて俺も横を見る。

「乗れるんかい・・・。」

 そこには走竜に姿勢良くまたがり走竜の歩を進めさせるミラと彼女にしがみつくハッツェンがいた。

 どうやら俺はいらぬ心配をしていたらしい。
 落ちまいと必死な可愛いハッツェンはともかく、ミラは素人目からしても走竜を乗りこなしているように見える。

「魔導学院では走竜の騎乗訓練の授業を取ることが出来るのです。彼女はその授業を取っていたのでしょう。かくいう私も取っていました」
「なるほど・・・」

(授業で竜に乗れるとか最高じゃん!俺、絶対魔導学院入ろう・・・)

「アルテュール様、出発いたします――はっ!」

 俺が人知れず不純な入学動機を獲得しているとすぐ上からロタリオの気合いの籠もった掛け声が聞こえた。

「「「クエェェェェ!」」」

 その掛け声を引き金に3体の走竜が一斉に走り出す。
 俺は騎竜との出会いに胸躍らせていた―――。
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