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15 お熱
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「気」とは何だろう。
あれからずっと考えている。
前世でわたしは、ウェブ小説の愛好家だった。日本だけじゃなく、自動翻訳にかけて、他の国のウェブ小説にも手を出していた。
「気」という言葉は、中国のウェブ小説で読んだ覚えがある。
「気」とは体中を巡る何かで、それによって病気や怪我を治したり、空を飛ぶことができたりするという。「気」を養うには、何より、精神の統一が大事だ。
……ヨガはどうかな。
転生する前、肩こりがひどかった為、勧められてヨガ教室に通っていた。そこで、気の流れを整えることによって、心と体のバランスを調えるのだと教わった。
バートラフの修行には、座禅や瞑想もある。ヨガも精神集中を大事にするから、もしかしたら……。
右足で立って、右手はまっすぐ前に出し、体を前傾させる。左手は後ろに回して、左足首を掴む。
ダンサーのポーズというやつだ。
長いドレスを着てする格好ではない。でも、前から見られる分には大丈夫。そして後ろは壁だから、人が来る気遣いはない。体を前に倒して片足を上げていても、ペチコートの中までは見られることはない。
ヨガで「気」を養えるかどうかはわからない。けれど、ここは異世界だ。万が一ということもある。
まずは自分で試してみようと思った。
何もしないでいることはできなかった。
このままだと、バートラフは出来損ないの烙印を押されたまま、殺されてしまうかもしれないのだから。
「何してるの?」
通りかかったバートラフが声をかける。
「あ、殿下!」
声をかけられ、軸になっている右足に力を入れた。腹に力が入る。
そうそう、これよ。
これが「気」に繋がるのよ。多分。
「気を養っているんです」
「気?」
「これは、ヨガと申しまして、精神集中には最高なんです」
「なんであなたが気を養うの?」
「殿下のお役に立ちたいからに決まってます!」
思わず変な力が入る。ところが、力《りき》んだ拍子にバランスが崩れ、前のめりに倒れてしまった。
「きゃっ!」
不精してマットを敷いていなかったから、床に激突すると思った。けれど、なにか柔らかいものがわたしを受け止めてくれた。
倒れたわたしの下に、バートラフがいた。
「で、殿下! 大丈夫ですか?」
なんてことだ。わたしはバートラフの上に倒れてしまったのだ。
でも、通りがかりの彼がいたのは、もっと離れた場所だったはず。もしかして、咄嗟にわたしを受け止めようとしてくれた?
無理無理無理。
今のバートラフに、わたしの体を支えることなんてできるわけないじゃない。
下からうめき声が聞こえた。
「お、重い……」
慌てて彼の上から飛びのいた。
「ご、ごめんなさい! お怪我はありませんか?」
「ない」
ぶすっとして横を向く。
見ると、赤い顔をしている。
すっかり度を失い、わたしはおろおろと彼の体を点検した。彼は触れられることを嫌がるけど、今は非常事態だ。
「さわるなったら」
案の定、文句が入った。
「触らなかったら、お怪我をしているかどうかわかりません。もし骨折でもされていたら!」
自分で言って震えあがった。
「だいじょうぶだと言ったろ? 僕からはなれろ」
「どうやらお怪我はないようですね」
ほっとしたわたしの手が、彼の額を掠った。
「あれ?」
改めてみると、やっぱり顔が赤い。慌てて額に手を当てた。
「熱い」
「さわるな! あっちへ行け!」
いつもの罵声も元気がない。
「大変。殿下。お熱があります」
有無を言わさず、わたしはバートラフの体を抱き上げた。
びっくりしたのだろう、彼は体を強張らせ、声も出ない。
横抱きにしたまま、寝室へ走った。
あれからずっと考えている。
前世でわたしは、ウェブ小説の愛好家だった。日本だけじゃなく、自動翻訳にかけて、他の国のウェブ小説にも手を出していた。
「気」という言葉は、中国のウェブ小説で読んだ覚えがある。
「気」とは体中を巡る何かで、それによって病気や怪我を治したり、空を飛ぶことができたりするという。「気」を養うには、何より、精神の統一が大事だ。
……ヨガはどうかな。
転生する前、肩こりがひどかった為、勧められてヨガ教室に通っていた。そこで、気の流れを整えることによって、心と体のバランスを調えるのだと教わった。
バートラフの修行には、座禅や瞑想もある。ヨガも精神集中を大事にするから、もしかしたら……。
右足で立って、右手はまっすぐ前に出し、体を前傾させる。左手は後ろに回して、左足首を掴む。
ダンサーのポーズというやつだ。
長いドレスを着てする格好ではない。でも、前から見られる分には大丈夫。そして後ろは壁だから、人が来る気遣いはない。体を前に倒して片足を上げていても、ペチコートの中までは見られることはない。
ヨガで「気」を養えるかどうかはわからない。けれど、ここは異世界だ。万が一ということもある。
まずは自分で試してみようと思った。
何もしないでいることはできなかった。
このままだと、バートラフは出来損ないの烙印を押されたまま、殺されてしまうかもしれないのだから。
「何してるの?」
通りかかったバートラフが声をかける。
「あ、殿下!」
声をかけられ、軸になっている右足に力を入れた。腹に力が入る。
そうそう、これよ。
これが「気」に繋がるのよ。多分。
「気を養っているんです」
「気?」
「これは、ヨガと申しまして、精神集中には最高なんです」
「なんであなたが気を養うの?」
「殿下のお役に立ちたいからに決まってます!」
思わず変な力が入る。ところが、力《りき》んだ拍子にバランスが崩れ、前のめりに倒れてしまった。
「きゃっ!」
不精してマットを敷いていなかったから、床に激突すると思った。けれど、なにか柔らかいものがわたしを受け止めてくれた。
倒れたわたしの下に、バートラフがいた。
「で、殿下! 大丈夫ですか?」
なんてことだ。わたしはバートラフの上に倒れてしまったのだ。
でも、通りがかりの彼がいたのは、もっと離れた場所だったはず。もしかして、咄嗟にわたしを受け止めようとしてくれた?
無理無理無理。
今のバートラフに、わたしの体を支えることなんてできるわけないじゃない。
下からうめき声が聞こえた。
「お、重い……」
慌てて彼の上から飛びのいた。
「ご、ごめんなさい! お怪我はありませんか?」
「ない」
ぶすっとして横を向く。
見ると、赤い顔をしている。
すっかり度を失い、わたしはおろおろと彼の体を点検した。彼は触れられることを嫌がるけど、今は非常事態だ。
「さわるなったら」
案の定、文句が入った。
「触らなかったら、お怪我をしているかどうかわかりません。もし骨折でもされていたら!」
自分で言って震えあがった。
「だいじょうぶだと言ったろ? 僕からはなれろ」
「どうやらお怪我はないようですね」
ほっとしたわたしの手が、彼の額を掠った。
「あれ?」
改めてみると、やっぱり顔が赤い。慌てて額に手を当てた。
「熱い」
「さわるな! あっちへ行け!」
いつもの罵声も元気がない。
「大変。殿下。お熱があります」
有無を言わさず、わたしはバートラフの体を抱き上げた。
びっくりしたのだろう、彼は体を強張らせ、声も出ない。
横抱きにしたまま、寝室へ走った。
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