朝になるまでモフッてやるから覚悟しろ

せりもも

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一緒に御飯

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 こうして七緒は、溂と一緒に、住居部分で暮らすようになった。
 フロレツァールには、手がない。手のあるところに、羽が生えている。
 人間と暮らすのは、いろいろ不便だった。
 特に、食事の時に困った。

 長い間、人のペットとして暮らしてきたフロレツァールは、基本、ヒトと同じものを食べる。
 特別に用意しなくていいので、その点は、溂も、楽だった。自分と同じものを少し多めに作ればいい。

 できたら、七緒と一緒に食卓につきたいと、溂は思った。
 認めたくはないが、一人暮らしが、寂しくなっていたのかもしれない。特に、食事の時は、侘しく、味もよくわからない。
 もちろん、フロレツァールと会話を楽しむことはできない。でも、七緒と一緒なら、にぎやかで楽しかろうと思ったのだ。

 ところが、手のない七緒は、箸やスプーンを使うことができない。手づかみさえ、不可能だ。
 皿の中に顔を突っ込んで、べちゃべちゃやるのが、関の山だ。
 これは、見苦しかった。顔や体も汚れる。

 フロレツァールの故郷の島には、彼らが食べやすいように特化した実や、野菜のようなものがあるという。
 しかし、ここにはない。

 考えた末、溂は、テーブルの上に、食べ物を吊るしてみた。
 七緒も、溂と一緒に食事ができるのが嬉しかったらしい。呼ぶと、嬉々として、テーブルについた。
 ひもで吊っているので、肉や魚がゆらゆら揺れる。それを、下から、懸命に齧り取っている。

 対面に座って見ていると、おもしろかった。
 大きな口を開けて、でも、ゆらゆら揺れる肉の塊に逃げられる。その時の、間抜け面が、おかしかった。溂は思わず、笑いそうになった。

 調子に乗って、少し高めの位置に吊るしてみた。すると、せいいっぱい伸びあがって、肉や魚を食いちぎっている。

 ある時、天井ぎりぎりにりんごを吊るしたことがある。
 「……」
 七緒は、恨めしそうな顔で、溂を見た。
 食事中の飛行は、禁じてあるのだ。
 結局、その時七緒は、りんごを食べることはできなかった。

 さすがに、やりすぎたかと、溂は、反省した。次の食事の時は、もう少し食べやすいように工夫した。
 細い棒を粘土の上に立て、それに、七緒の好きな、ハムの塊を突き刺しておいたのだ。
 これは、七緒も気に入ったようだ。
 尾羽を尻の下に敷いて、偉そうに椅子にふんぞり返り、満足げに、溂の顔を見つめた。まるで、人間のようだ。
 溂が、いただきます、と言うと、待っていたように、棒の先のハムを、ぱくっと食べた。

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