5 / 82
Ⅰ
一緒に御飯
しおりを挟む
こうして七緒は、溂と一緒に、住居部分で暮らすようになった。
フロレツァールには、手がない。手のあるところに、羽が生えている。
人間と暮らすのは、いろいろ不便だった。
特に、食事の時に困った。
長い間、人のペットとして暮らしてきたフロレツァールは、基本、ヒトと同じものを食べる。
特別に用意しなくていいので、その点は、溂も、楽だった。自分と同じものを少し多めに作ればいい。
できたら、七緒と一緒に食卓につきたいと、溂は思った。
認めたくはないが、一人暮らしが、寂しくなっていたのかもしれない。特に、食事の時は、侘しく、味もよくわからない。
もちろん、フロレツァールと会話を楽しむことはできない。でも、七緒と一緒なら、にぎやかで楽しかろうと思ったのだ。
ところが、手のない七緒は、箸やスプーンを使うことができない。手づかみさえ、不可能だ。
皿の中に顔を突っ込んで、べちゃべちゃやるのが、関の山だ。
これは、見苦しかった。顔や体も汚れる。
フロレツァールの故郷の島には、彼らが食べやすいように特化した実や、野菜のようなものがあるという。
しかし、ここにはない。
考えた末、溂は、テーブルの上に、食べ物を吊るしてみた。
七緒も、溂と一緒に食事ができるのが嬉しかったらしい。呼ぶと、嬉々として、テーブルについた。
ひもで吊っているので、肉や魚がゆらゆら揺れる。それを、下から、懸命に齧り取っている。
対面に座って見ていると、おもしろかった。
大きな口を開けて、でも、ゆらゆら揺れる肉の塊に逃げられる。その時の、間抜け面が、おかしかった。溂は思わず、笑いそうになった。
調子に乗って、少し高めの位置に吊るしてみた。すると、せいいっぱい伸びあがって、肉や魚を食いちぎっている。
ある時、天井ぎりぎりにりんごを吊るしたことがある。
「……」
七緒は、恨めしそうな顔で、溂を見た。
食事中の飛行は、禁じてあるのだ。
結局、その時七緒は、りんごを食べることはできなかった。
さすがに、やりすぎたかと、溂は、反省した。次の食事の時は、もう少し食べやすいように工夫した。
細い棒を粘土の上に立て、それに、七緒の好きな、ハムの塊を突き刺しておいたのだ。
これは、七緒も気に入ったようだ。
尾羽を尻の下に敷いて、偉そうに椅子にふんぞり返り、満足げに、溂の顔を見つめた。まるで、人間のようだ。
溂が、いただきます、と言うと、待っていたように、棒の先のハムを、ぱくっと食べた。
フロレツァールには、手がない。手のあるところに、羽が生えている。
人間と暮らすのは、いろいろ不便だった。
特に、食事の時に困った。
長い間、人のペットとして暮らしてきたフロレツァールは、基本、ヒトと同じものを食べる。
特別に用意しなくていいので、その点は、溂も、楽だった。自分と同じものを少し多めに作ればいい。
できたら、七緒と一緒に食卓につきたいと、溂は思った。
認めたくはないが、一人暮らしが、寂しくなっていたのかもしれない。特に、食事の時は、侘しく、味もよくわからない。
もちろん、フロレツァールと会話を楽しむことはできない。でも、七緒と一緒なら、にぎやかで楽しかろうと思ったのだ。
ところが、手のない七緒は、箸やスプーンを使うことができない。手づかみさえ、不可能だ。
皿の中に顔を突っ込んで、べちゃべちゃやるのが、関の山だ。
これは、見苦しかった。顔や体も汚れる。
フロレツァールの故郷の島には、彼らが食べやすいように特化した実や、野菜のようなものがあるという。
しかし、ここにはない。
考えた末、溂は、テーブルの上に、食べ物を吊るしてみた。
七緒も、溂と一緒に食事ができるのが嬉しかったらしい。呼ぶと、嬉々として、テーブルについた。
ひもで吊っているので、肉や魚がゆらゆら揺れる。それを、下から、懸命に齧り取っている。
対面に座って見ていると、おもしろかった。
大きな口を開けて、でも、ゆらゆら揺れる肉の塊に逃げられる。その時の、間抜け面が、おかしかった。溂は思わず、笑いそうになった。
調子に乗って、少し高めの位置に吊るしてみた。すると、せいいっぱい伸びあがって、肉や魚を食いちぎっている。
ある時、天井ぎりぎりにりんごを吊るしたことがある。
「……」
七緒は、恨めしそうな顔で、溂を見た。
食事中の飛行は、禁じてあるのだ。
結局、その時七緒は、りんごを食べることはできなかった。
さすがに、やりすぎたかと、溂は、反省した。次の食事の時は、もう少し食べやすいように工夫した。
細い棒を粘土の上に立て、それに、七緒の好きな、ハムの塊を突き刺しておいたのだ。
これは、七緒も気に入ったようだ。
尾羽を尻の下に敷いて、偉そうに椅子にふんぞり返り、満足げに、溂の顔を見つめた。まるで、人間のようだ。
溂が、いただきます、と言うと、待っていたように、棒の先のハムを、ぱくっと食べた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ただの狼です?神の使いです??
野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい?
司祭×白狼(人間の姿になります)
神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。
全15話+おまけ+番外編
!地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください!
番外編更新中です。土日に更新します。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる