1 / 2
開口前夜
しおりを挟む
『守護の宵全連盟員へ通達。現在、一級管理違反者”メルーナ・フィル・ノイエス"は第六エリアから施設外への逃亡を図ろうとしている。直ちに当該エリアへ急行し捕縛若しくは殺害せよ』
無機質なアナウンスが、耳障りなノイズと共に夜空へ響き渡った。
私は気が遠くなりそうな程に夥しく並んだ研究棟の合間を、一つの箱と一枚の紙を抱えて駆け抜ける。
しくじれば死ぬ。この世も終わる。何としてでもこの施設を抜け、彼を探し出さなくてはならない。
「あーーーやっぱり来た。先回りしといた甲斐があったわぁ…………」
目の前に、敵がいた。
白く丈の長いローブを身に纏う忌々しき”魔術師”が、気怠い顔を浮かべ私を正面から待ち受けていた。
血が通わない人形の様な瞳をした彼女を前に私は歩みを止める。
「にしても、上は状況判断が鈍いねぇどうも」
「シエラ・ドルグ…………守護の宵か…………!!」
「駄目だよぉ?魔導士導士ちゃんは大人しく檻の中で研究に勤しまなきゃ。さ、早くそれ置いてよ」
「ふざけるな!!!貴様らは事の重大さを理解していない!!…………明日午前11時58分17秒…………その瞬間から施設内及び世界中へ散らばる秘術庫の7割が開口へのカウントダウンを開始するんだぞ!!!」
「しかも、最初に開口する秘術庫は君の師の先祖が生み出した原初魔術」
「っ!!…………そこまで知っておきながら私を止めるか…………魔術師………」
口角を上げ、徐々にこちらへ近づいてくる。
明確な殺意。だが足は地に張り付いたまま動こうとしない。………恐怖に、末梢まで支配されていた。
「知ったからって別にどうでもいいじゃん。むしろ嬉しいニュースだよ!!君達魔導士が必死に隠していた無数の魔術達がやっと日の目を浴びるんだから…………!!あぁ、早く使いたいなぁ、アタシも」
「力に溺れた愚族共めが…………!!!」
「じゃあ、君達は違うの?」
刹那、風が流れる。
不自然且つ強い風が私の頬を撫で、次に焼け付く様な痛みが腹部に奔った。
視線を落とすと腹部には拳程の大きさに穴が貫通し、そこから赤黒い血液が吹き出す様に流れ出ていた。
「ぐっ…………!!!あぁ…………ぁあああぁああ!!!」
「アハハハ!!!よっわーーい!!やっぱり魔導士って魔術開発以外何も出来ないんだねぇ?今のなんてちょっと指でお腹つついただけだよ?」
彼女は一切移動していない。だがこちらに伸ばした人差し指には私の血液と思われるものが付着していた。
………奴は直ぐにでも私を殺せる。それをしないのは、本当に奴にとってこれは束の間の戯れでしかないのだ。
「メルーナちゃんだっけ?………あんま下らない事で死に急がない方がいいよぉ?まだ子供なんだしさぁ、ウチらにとっても研究員って結構重要なんだからね?」
「研究員とは名ばかりの奴隷ではないか………!!魔術の創造を赦されない貴様らに捕えられ、死ぬまで研究をさせられ、その結果生み出した魔術でさえも総て奪っていく!!!……下らない事だと?違う。私の行為は、私達の行為は!!!世界を繋ぎとめる、唯一の反逆だ!!!!」
右腕の手根に噛み付く。静脈から流れた血液を喉へ流し、記憶を呼び起こす。ここから遠く離れた目的の地、そして我が師の最期を。
「自傷による血液の嚥下……………まさか魔術…………魔導士が…………!?」
「”使えない”と、私が一言でもあの檻の中で嘆いたことがあったか?魔術師」
「ガキが…………嘗めやがって!!!」
豹変した相貌で私を睨むシエラ・ドルグ。
出来ればこんなものに頼らず施設を抜けたかったが………致し方無い。
血を流す右腕を掲げる。私は生まれて初めて、魔術に身を委ねた。
「主従共にメルーナ・フィル・ノイエス。侵す根源は………」
「転移………!!逃がすか!!!」
「五界秘術庫」
朦朧とする意識の中で、私の身体は一つの秘術庫と一枚の地図を抱えたまま………この地獄から消失した。
無機質なアナウンスが、耳障りなノイズと共に夜空へ響き渡った。
私は気が遠くなりそうな程に夥しく並んだ研究棟の合間を、一つの箱と一枚の紙を抱えて駆け抜ける。
しくじれば死ぬ。この世も終わる。何としてでもこの施設を抜け、彼を探し出さなくてはならない。
「あーーーやっぱり来た。先回りしといた甲斐があったわぁ…………」
目の前に、敵がいた。
白く丈の長いローブを身に纏う忌々しき”魔術師”が、気怠い顔を浮かべ私を正面から待ち受けていた。
血が通わない人形の様な瞳をした彼女を前に私は歩みを止める。
「にしても、上は状況判断が鈍いねぇどうも」
「シエラ・ドルグ…………守護の宵か…………!!」
「駄目だよぉ?魔導士導士ちゃんは大人しく檻の中で研究に勤しまなきゃ。さ、早くそれ置いてよ」
「ふざけるな!!!貴様らは事の重大さを理解していない!!…………明日午前11時58分17秒…………その瞬間から施設内及び世界中へ散らばる秘術庫の7割が開口へのカウントダウンを開始するんだぞ!!!」
「しかも、最初に開口する秘術庫は君の師の先祖が生み出した原初魔術」
「っ!!…………そこまで知っておきながら私を止めるか…………魔術師………」
口角を上げ、徐々にこちらへ近づいてくる。
明確な殺意。だが足は地に張り付いたまま動こうとしない。………恐怖に、末梢まで支配されていた。
「知ったからって別にどうでもいいじゃん。むしろ嬉しいニュースだよ!!君達魔導士が必死に隠していた無数の魔術達がやっと日の目を浴びるんだから…………!!あぁ、早く使いたいなぁ、アタシも」
「力に溺れた愚族共めが…………!!!」
「じゃあ、君達は違うの?」
刹那、風が流れる。
不自然且つ強い風が私の頬を撫で、次に焼け付く様な痛みが腹部に奔った。
視線を落とすと腹部には拳程の大きさに穴が貫通し、そこから赤黒い血液が吹き出す様に流れ出ていた。
「ぐっ…………!!!あぁ…………ぁあああぁああ!!!」
「アハハハ!!!よっわーーい!!やっぱり魔導士って魔術開発以外何も出来ないんだねぇ?今のなんてちょっと指でお腹つついただけだよ?」
彼女は一切移動していない。だがこちらに伸ばした人差し指には私の血液と思われるものが付着していた。
………奴は直ぐにでも私を殺せる。それをしないのは、本当に奴にとってこれは束の間の戯れでしかないのだ。
「メルーナちゃんだっけ?………あんま下らない事で死に急がない方がいいよぉ?まだ子供なんだしさぁ、ウチらにとっても研究員って結構重要なんだからね?」
「研究員とは名ばかりの奴隷ではないか………!!魔術の創造を赦されない貴様らに捕えられ、死ぬまで研究をさせられ、その結果生み出した魔術でさえも総て奪っていく!!!……下らない事だと?違う。私の行為は、私達の行為は!!!世界を繋ぎとめる、唯一の反逆だ!!!!」
右腕の手根に噛み付く。静脈から流れた血液を喉へ流し、記憶を呼び起こす。ここから遠く離れた目的の地、そして我が師の最期を。
「自傷による血液の嚥下……………まさか魔術…………魔導士が…………!?」
「”使えない”と、私が一言でもあの檻の中で嘆いたことがあったか?魔術師」
「ガキが…………嘗めやがって!!!」
豹変した相貌で私を睨むシエラ・ドルグ。
出来ればこんなものに頼らず施設を抜けたかったが………致し方無い。
血を流す右腕を掲げる。私は生まれて初めて、魔術に身を委ねた。
「主従共にメルーナ・フィル・ノイエス。侵す根源は………」
「転移………!!逃がすか!!!」
「五界秘術庫」
朦朧とする意識の中で、私の身体は一つの秘術庫と一枚の地図を抱えたまま………この地獄から消失した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる