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来訪者
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ジリジリとした焼け付くような強い陽射し。
「……」
ザ、ザ、とした足音だけが乾いた大地に響く。
「…………」
見渡す限りの砂にボクは気が滅入ってくる。
「暑い、暑い、」
我慢の限界達し、ブツブツとうわごとみたくそんな言葉を呟く。
「靴に砂入ったぁ」
気を付けていたけども、靴の中は砂だらけで何とも気持ち悪い。
「ダメだ。もう、溶ける」
喉が渇く。そう言えば水分補給したのっていつだっけ? 水滴の一滴でも残っていないか、と淡い期待をしながら、水袋を取り出す。
「…………う、あっちぃぃぃぃ」
ポタ、と落ちてきた水滴はまるでお湯。水分補給したはずなのに、これじゃ逆効果だ。思わず砂地に転がってバタバタとしばらくもがく。
「ふぅ、ふぅ、ふぅぅぅ」
舌が火傷したらしく、ズキズキとした痛みが今の不快感をより一層強くする。
口を開けば、砂混じりの熱風が襲いかかり、ペッペッ、と砂と一緒に貴重な水分がなくなっていく。完全に逆効果だ。
見渡せど見渡せど、ただただひたすらにだだっ広い砂ばかりの世界。地形の変化と言えば、砂丘の高低差がある位のモノで、樹木とかそういったモノは一切見えない。
「歩けども歩けども何にもないじゃんかよぉ」
そもそも何でボクはこんな場所をさまよっていたんだっけ。
考えようとするものの、頭が茹で蛸みたく沸騰しているからか、なーんにも考えられない。
それにどうやら体力の限界が来たのか、ボクはバタリと砂の上に倒れ、もう動くコトも出来ない。
「あー、溶けちゃうわぁコレ」
そこでボクの視界は途切れた。いや、冗談抜きに溶けるかも知れない、そんなコトを思いながら。目を閉じて、そして暗転した。
◆◆◆
「う、…………ん?」
目を覚ますと天井が見えた。茶褐色の天井、間違いなくここは室内だろう。
ゆっくりと身体を起こして、周囲を見回してみる。ぎし、としたベッドとちょっとした台、小さな鏡に燭台があるだけの何とも味家のない部屋。
「だけど、贅沢は言えないよな」
「そうだよ。何せ行き倒れてた君をここまで運んできたのは私なんだからね」
「──!」
声に反応して振り向くと、窓の外には一人の少女がいた。
ベリーショートな髪にクリクリとした目が印象的な少女。見た目から察するに、まだ十代の最初。幼女、といった感じだ。
ううん、これはカワイイ。正直カワイイ。
「うーん。聞こえないぞぉ?」
「ん?」
少女は手を耳に添え、大げさにそう声を出す。一体どうしたのかな? そう思って首をかしげる。
「え、えーと、…………何だろう?」
「わっかんないの? 助けてくれてありがとうでしょ!」
あ、そういう意味か。納得した。確かにボクは恩人のあの子に礼の一つも言ってなかった。うん、礼儀知らずとなじられても仕方がないな。
「ゴメンね。助けてくれてありがとうございます」
非を認め、素直に頭を下げると、少女はウフフ、と満面の笑みを浮かべる。よっぽど嬉しかったんだろう、ガッツポーズまで取っている。
「あんれまぁ、もう目覚めなさったんか」
「ん?」
振り返ると、少女の後ろに置かれた木の椅子に腰掛けるおばあちゃんの姿。彼女が声の主らしい。
年は六十から七十といったところに見える。
「おばあちゃん、今日は動けたの?」
「ええ、そうだよ。リリエは今日も元気だねぇ」
「えっへっへ~」
おばあちゃんに頭を撫でられて、あの子、リリエは本当に嬉しそうな顔をしている。本当にあのおばあちゃんの事が好きなんだろうな。
ああ、……何ていうか、久し振りにボクもおばあちゃんに会いたくなっちゃったなぁ。うん、もう無理なんだけどな。もう会うコトは出来ないんだけど。それでも、ってね。
◆
〈数分後〉
リリエに促されて、部屋を出たボクはおばあちゃんの前にいた。
砂漠じゃないとは言っても、焼けるような炎天下の暑さは変わらない。正直暑いのが苦手なボクにとってこの気候は色々と厳しい。
おばあちゃんがいるのは大きな木の木陰で、樹齢は優に数百年は経っていそう。凶悪といっても過言じゃない陽射しから逃れられるだけでもボクにとっては天国みたいに思える。
「それで、…………お前さんは誰なんだね?」
少しばかりの間を置いて、おばあちゃんはボクの事を訊ねてきた。
穏やかな表情の中、目だけは真っ直ぐにこっちを見据えている。
うん、当然かな。
いくらリリエが可愛いからって、明らかに余所者であるボクをそうそう簡単には信用出来ないのは当然のコトだと思う。だから、
「ご挨拶が遅れました。ボクの名前は【ミカ】。そちらのお嬢さんには助けていただきまして感謝致します」
ボクは素直に自分の名前を名乗った。
ここで自分を偽っても仕方がない。そもそもボクに偽る、という選択肢はない。後ろ暗いコトは、少なくともココじゃ何もしていないからね。うんうん、そうだそうだ。問題なし、無問題ってヤツだ。
それにボクはリリエに救われたのは間違いない。だから、聞かれたコトは出来る限りは話さなきゃならない。それが今の余所者に出来る、せめてもの誠意だろうと思うから。
◆
「ふぅむ、砂漠の生き物を調べる、学者さん、なんかね」
「はい、まぁ、学者さんって程エラくはないんですけどね」
ハハ、と笑いながら答える。
おばあちゃんは、少し含む所はありそうだけど、それでも、どうやらとりあえずは納得してくれたみたいだ。
「分かったよ。気を悪くさせたのなら誤るよ、ミカ」
そう言ってボクへ頭を下げる。
「いえいえ、おばあさんの対応は何も間違ってないです。ボクみたいな余所者がいきなり来たら警戒して当然だと思いますし」
「そう言ってくれると助かるねぇ。リリエが随分あんたを気に入ってるみたいだし、何もない小さな村ですが今日はゆっくりしていくといい」
「ありがとうございます」
ボクはおばあちゃんへ一礼、そして近くで一人遊んでいたリリエへと話しかけるコトにした。
「リリエちゃん、こんにちは」
「あ、お話終わったの?」
「うん」
「今日は村にいてくれるの?」
「うん、ヨロシクね」
「やったー、じゃあリリエについて来て」
リリエちゃんは本当に嬉しいのか、満面の笑みを浮かべつつ、ボクの手を握ると引っ張り出す。
いや、暑いのは苦手だけど、うん、まぁ仕方ないか。
◆
「ミカ、こっちこっち早く早くぅ」
「ちょ、ちょっと待ってくれないかな」
侮った、いや、別に侮ってたワケじゃないけど、まいった。
リリエちゃんの歩く速さがハンパない。ね、何であんな速いの? 何かトリックでもあんの? って思ってしまう位に、ズンズンと砂地を歩く。
ボクがこうした地面を歩くのに不慣れで、向こうがその逆なだけ、そう思いたいんだけど、それにしたって速過ぎる。
「ほら見てよ」
嬉しそうに笑うその表情はまさに天使か何かだろうかと思える程にかっわいい。ああ、許されるのならば今すぐにでも抱きつきたい。うう~ダメだダメだ。我慢しなきゃダメだ。本能に負けるワケにはいかない。いいか、顔に出すなよ。絶対にだ。
そう言い聞かせつつ、リリエの指差す方向へと視線を動かすと──。
「うっわ、すっげぇ……」
思わず絶句した。少し小高い岩場にいたボクの視界には見渡す限りの砂漠。この前は全く思いもしなかったけど、強い陽射しを受けているからだろうか、まるで金色の世界に思えた。キラキラとした、幻想的にすら見える輝く世界だった。
「ね、キレイでしょ!」
「うん、そうだね」
こんなの同意するしかない。今更ながら視点を変えたら、こんなにも美しいモノがあったんだ、そう思うと心が震える。何故だか目から涙が流れ落ちて、しばらくの間、止まらなかったよ。
「ビックリしたなぁ、ミカったらいきなり泣いちゃうんだもん」
「いや~ゴメンね。驚かせちゃって」
ボクとリリエは岩陰で食事を取る事にした。
リリエちゃんが自分でこさえたものらしく、木の篭のバスケットを開くとパンが入ってる。
早速手にとってみると、パンには切り込みが入ってて、中には野菜と肉。美味しそうな匂いには抗えないので、そのままガブリとかぶりつく。
「うん、美味い」
「へっへ、良かったぁ」
いや、本当に美味しい。噛めば噛む程に味わいが増していくのは、この肉のせい。どうやら燻製しているらしく、仄かな香りを放ってて、おまけに香辛料が効いてる。
ボクが今のボクになってからというもの、以前とは色々変わってしまって、食事をしてもあんまり美味しいとか思わなかった。だから味覚までおかしくなったんじゃないか、って不安に思ってたけど、どうやら取り越し苦労だったみたいだ。そんなボクにとって嬉しい発見が出来た時だった。
◆
「あー、美味しかったよ。本当にありがとう」
水を飲み干し、人心地ついたボクはその場に寝転がる。暑い事は暑いんだけど、あの殺人的な陽射しから逃れられるだけでも、嬉しいし、実際思った以上に快適だ。
「ミカったら子供みたいだね」
リリエちゃんに突っ込まれ、思わず苦笑する。
ああ、そうかもなぁ。ボクは今でこそこんな姿になっちゃったんだけど、元々はなぁ。
それにリリエちゃんだけじゃなくて、こんな姿になってから出会った人達は皆総じて大人びていたように思える。多分それはそうしなければ生きてこれなかったから、だと思う。子供とか大人とかそういう区分けだけじゃ、生きていけないからなんだ。
「本当にそうかもね」
だから、……ボクは笑ったんだ。目の前にいるまだあどけない表情をした少女にではなく、そんな小さな女の子に言われて心の中で動揺した自分に対して。
こんなんじゃいけない。ボクはもっともっと大人にならなきゃ、って。
「ねぇ、ミカはどうして一人砂漠にいたの?」
「え、~とね」
リリエちゃんは興味深そうに目を大きく見開いて訊ねてきた。
そう、その質問がボクは怖かった。少なくとも、さっきリリエちゃんのおばあちゃんに聞かれたらどうしようかと心中穏やかじゃなかった。
確かにウソは言ってない。ボクがここに来たのはとある生き物の調査の為だ。だけど、どうしてなのか? そう聞かれたらマズかった。納得してもらったかは分からないけど、あれ以上追求されずに助かっただけは事実だった。
「うん、おばあちゃんにも言ったんだけど、ここにいる生き物を調べにね……」
「どんな生き物なの?」
「え?」
「それってどんな生き物?」
リリエちゃんはそう質問してくる。表情を見れば、さっきまで見せていたあどけなさはそこにはなく、真剣な面持ち、そして目でボクを見据えている。
ドックン。
鼓動(・・)がした。マズいぞ、コレ。
「ミカは何で砂漠(・・)に来たの?」
リリエちゃんからの問いかけは続き、鼓動もまた止まるコトなくドンドン大きくなっていく。
ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい。
「ミカ、教えてよ。一体どんな生き物を調べに────」
その時だった。
ゾワリ、とした悪寒が走る。
この感覚には覚えがある。ああ、ココに来てからというもの幾度も幾度も遭遇したあの感覚。
肌には鳥肌が立ち、なのに、ボクの中で湧き上がってくるモノ。ヤバい、抑えが利かない。このままじゃマズい。
「あ、…………」
リリエちゃんはその顔を蒼白にしている。もしかして、感づかれたのか? ならどうする? どうすればいい?
「く、る……悪いモノが」
「え?」
リリエちゃんの様子がおかしい。目は虚ろで、何処か焦点は合ってない。ずっと遠くを見ているようにも、近くを見ているようにも思え、顔色は蒼白。まるで何かに怯えるような様子は尋常じゃないと思える。
「にげてっっっっっ」
リリエちゃんはそう叫ぶと、その場で倒れ込む。
「ちょ、大丈夫──」
思わず抱きかかえるものの、既に彼女の意識は途切れている。
だけど、彼女の言葉が何を指すのかは分かってる。ボクの肌も粟立っているから。
鼓動はドクンドクンと全く落ち着く気配もない。
「どうやらここで当たりみたいだ」
何をすべきかは分かってる。ああ、ボクにしか出来ないコトをココでするだけだ。
幸いにも目指すべき場所は明確だ。なら、出来る限りの最速でそこへと至ろう。
◆◆◆
「う、ひいいいいい」
悲鳴をあげる村人の目の前に映ったモノは怪物だった。
リザード、いわゆる爬虫類系の魔物(モンスター)であり、肉食。個体の大きさは年数に応じて異なり、成体ともなれば三メートルを超えるモノもいるらしい。
「ウウウンンギャアアアアアアア」
爬虫類は雄叫びをあげ、目の前で腰を抜か村人へとかぶりつく。
「ああ、あああああああああああ」
鮮血を撒き散らしながら、絶叫が轟く。
「うぐぎいいいいいいいい」
その凄まじいまでの断末魔の声が村中を駆け巡り、逃げ惑う人々を恐れおののかせる。
「落ち着け、落ち着くのじゃ」
リリエの祖母が必死にまとめ上げようとするが、この状況で混乱を収めるには足りない。
(何という事じゃ。この村にまで魔物共が侵入してこようとは──)
それは本来有り得ないはずの事態だった。この村は云わば隠れ里。かつて起きた暴威に際し、人々を守った場所。
(結界には何の問題もなかったはずじゃ。なのに……)
彼女の一族は結界を維持する存在であり、もしも異常が起きたのならば、気付くはず、だった。にもかかわらず、結界があるにもかかわらず、こうして魔物が入っている。
「うわあああああ」「やだああああああ」「助けて、ぐれええ」
村人達はろくに抵抗すら叶わず、次々と迫るリザードの餌食になっていく。あまりにも脆く、無惨に、血を流し、五体を引き裂かれていく。
「皆、上じゃ、高台にまで来るのじゃ」
リリエの祖母の大音声が聞こえたのか、逃げ惑う人々は少しずつこちらへと向かってくる。高台に至るには長階段を通るしかなく、守りさえ固めれば耐える事も出来よう。
(リリエ、お前がこの場におらんかったのはせめてもの救いじゃろうかね)
何とか尽くせるだけの手は尽くそう、だけど、それでも駄目であるのなら。せめて孫娘だけでも生き延びて欲しい。そんな事を思っていたその時だった。
「あ、あれ何だ?」「バケモノ」「うそだろう」
高台へと至った村人達の声にリリエの祖母は視線を動かし、そして目にした。
「何という事じゃ……」
絶句するしかなかった。それはまさしく怪物、としか形容出来ないモノ。
その巨体はゆうに二十メートルはあろう。さっきまで村を蹂躙していたモノなどまるで赤子にすら見える。もはや規格外の大きさのリザード。
「ウ、ウウウウ、アアアアアアアア」
巨大リザードのその咆哮は周囲を揺らし、家を倒す。そして、高台の、頑丈な岩盤にすら亀裂を生じさせる。
「バケモノか、これではまるで……」
神話にでも出そうな怪物、そう感じ、では何をしても無駄ではないのか、という思いを浮かび上がらせる。
そしてそんな怪物がおもむろに口を大きく開き、そして…………。
「は、いかん。皆のものっっっ」
何が来るのかを理解し、声をあげた。だが何もかも手遅れだった。ここは高台。下へ降りるには階段しかない。数十メートルもある絶壁において、逃げ場などなければ、ましてやあの攻撃を凌ぐ術はない。
(ここまでか────)
目を閉じ、自らの死を受け入れるしかない、と思った時。
『大丈夫だ。ボクが何とかするからさ』
その声は声なき声。音を発したのではなく、心の声。単純な魔法ではあるが、この場合、その声は高台にいた村人全員へ届けられた。数百人に対して一斉に届けられた心の声。
そしてその声を発した本人が、一体どうやったのか、いつの間にか階段に真ん中に立ちふさがっている。
「な、何をしてるんだい、死んじまうよ」
リリエの祖母はそう言いつつも、そこにいるミカへ疑念を隠せない。何故そこにいるのか、どうやってここに至ったのか、と。こちらに気取られずに、この結界の中に入れたのか、と。
「グルウウウウウウアアアアアアアアア────」
そして巨大リザードは口から炎を吐き出す。火の吐息。その身に受ければ人の身体などあっという間に消し炭になってしまう凶悪な攻撃。
「へぇ、こりゃなかなか」
何を思ったか、ミカは微動だにせず、気でも狂ったのか、笑いながら火を受け入れる。
燃やすべきモノを得た火は即座にミカの全身へと延焼。包み込んでいく。
「何という事じゃ……」
リリエの祖母は、燃えていくミカをただ呆然と眺める他ない。今の自分達の無力さを実感させられる。
(この数十年、いいや数百年の平和を私たちはさも当然だと思っていた。
だが、違う。平和だったのは結界の中だけ。その外では何度となく世界の命運を決める戦い)が起こっていたのじゃ)
愕然とするしかなかった。世界は幾度も幾度も危機を迎え、その都度守られてきた。当たり前のように結界の中で危険から離れた生活を送り続けた結果がこの状況。
いざ危険に際して、何も出来ない自分達を庇って、あの金髪の少年は火に焼かれた。
「く、あ、あああああああああああ」
絶叫。凄まじいまでの声。火は炎となり、肉体を燃やし、否、消そうとする。命諸共に、存在を消さんと暴威を振るう。身体は黒ずんでいき、肉塊へと変わっていく。誰がどう見たって、その光景が意味するモノはたった一つ。
「グ、ルウウ?」
最初に異変を察知したのは巨大リザード。今の今まで、彼の存在は自分こそがこの場に於ける絶対者だという自負を持っていた。
彼の存在にとって、この状況こそ長年望んだ悲願。己が存在してきた理由。
創造主によって命じられた、ただ一つの命令を、本能に刻まれた遂行する機会。
砂漠に潜みし、忌まわしき巫女を殺す機会だった。
達成は目前、容易く終わるはずだと云うのに。
「グ、ア、アアアアアアアアア」
巨大リザードは吠えた。この場に於いて、自分以外の絶対者に対して。
「あ~、いやいや。ヒドい目に合ったなぁ、ホント」
今、……つい今し方死んだはずの存在、金髪の少年に対して。
全身黒ずんで、焦げたにもかかわらず、まるで何事もなかったかのようにそこに在る存在に対して、吠えるのだった。
「……」
ザ、ザ、とした足音だけが乾いた大地に響く。
「…………」
見渡す限りの砂にボクは気が滅入ってくる。
「暑い、暑い、」
我慢の限界達し、ブツブツとうわごとみたくそんな言葉を呟く。
「靴に砂入ったぁ」
気を付けていたけども、靴の中は砂だらけで何とも気持ち悪い。
「ダメだ。もう、溶ける」
喉が渇く。そう言えば水分補給したのっていつだっけ? 水滴の一滴でも残っていないか、と淡い期待をしながら、水袋を取り出す。
「…………う、あっちぃぃぃぃ」
ポタ、と落ちてきた水滴はまるでお湯。水分補給したはずなのに、これじゃ逆効果だ。思わず砂地に転がってバタバタとしばらくもがく。
「ふぅ、ふぅ、ふぅぅぅ」
舌が火傷したらしく、ズキズキとした痛みが今の不快感をより一層強くする。
口を開けば、砂混じりの熱風が襲いかかり、ペッペッ、と砂と一緒に貴重な水分がなくなっていく。完全に逆効果だ。
見渡せど見渡せど、ただただひたすらにだだっ広い砂ばかりの世界。地形の変化と言えば、砂丘の高低差がある位のモノで、樹木とかそういったモノは一切見えない。
「歩けども歩けども何にもないじゃんかよぉ」
そもそも何でボクはこんな場所をさまよっていたんだっけ。
考えようとするものの、頭が茹で蛸みたく沸騰しているからか、なーんにも考えられない。
それにどうやら体力の限界が来たのか、ボクはバタリと砂の上に倒れ、もう動くコトも出来ない。
「あー、溶けちゃうわぁコレ」
そこでボクの視界は途切れた。いや、冗談抜きに溶けるかも知れない、そんなコトを思いながら。目を閉じて、そして暗転した。
◆◆◆
「う、…………ん?」
目を覚ますと天井が見えた。茶褐色の天井、間違いなくここは室内だろう。
ゆっくりと身体を起こして、周囲を見回してみる。ぎし、としたベッドとちょっとした台、小さな鏡に燭台があるだけの何とも味家のない部屋。
「だけど、贅沢は言えないよな」
「そうだよ。何せ行き倒れてた君をここまで運んできたのは私なんだからね」
「──!」
声に反応して振り向くと、窓の外には一人の少女がいた。
ベリーショートな髪にクリクリとした目が印象的な少女。見た目から察するに、まだ十代の最初。幼女、といった感じだ。
ううん、これはカワイイ。正直カワイイ。
「うーん。聞こえないぞぉ?」
「ん?」
少女は手を耳に添え、大げさにそう声を出す。一体どうしたのかな? そう思って首をかしげる。
「え、えーと、…………何だろう?」
「わっかんないの? 助けてくれてありがとうでしょ!」
あ、そういう意味か。納得した。確かにボクは恩人のあの子に礼の一つも言ってなかった。うん、礼儀知らずとなじられても仕方がないな。
「ゴメンね。助けてくれてありがとうございます」
非を認め、素直に頭を下げると、少女はウフフ、と満面の笑みを浮かべる。よっぽど嬉しかったんだろう、ガッツポーズまで取っている。
「あんれまぁ、もう目覚めなさったんか」
「ん?」
振り返ると、少女の後ろに置かれた木の椅子に腰掛けるおばあちゃんの姿。彼女が声の主らしい。
年は六十から七十といったところに見える。
「おばあちゃん、今日は動けたの?」
「ええ、そうだよ。リリエは今日も元気だねぇ」
「えっへっへ~」
おばあちゃんに頭を撫でられて、あの子、リリエは本当に嬉しそうな顔をしている。本当にあのおばあちゃんの事が好きなんだろうな。
ああ、……何ていうか、久し振りにボクもおばあちゃんに会いたくなっちゃったなぁ。うん、もう無理なんだけどな。もう会うコトは出来ないんだけど。それでも、ってね。
◆
〈数分後〉
リリエに促されて、部屋を出たボクはおばあちゃんの前にいた。
砂漠じゃないとは言っても、焼けるような炎天下の暑さは変わらない。正直暑いのが苦手なボクにとってこの気候は色々と厳しい。
おばあちゃんがいるのは大きな木の木陰で、樹齢は優に数百年は経っていそう。凶悪といっても過言じゃない陽射しから逃れられるだけでもボクにとっては天国みたいに思える。
「それで、…………お前さんは誰なんだね?」
少しばかりの間を置いて、おばあちゃんはボクの事を訊ねてきた。
穏やかな表情の中、目だけは真っ直ぐにこっちを見据えている。
うん、当然かな。
いくらリリエが可愛いからって、明らかに余所者であるボクをそうそう簡単には信用出来ないのは当然のコトだと思う。だから、
「ご挨拶が遅れました。ボクの名前は【ミカ】。そちらのお嬢さんには助けていただきまして感謝致します」
ボクは素直に自分の名前を名乗った。
ここで自分を偽っても仕方がない。そもそもボクに偽る、という選択肢はない。後ろ暗いコトは、少なくともココじゃ何もしていないからね。うんうん、そうだそうだ。問題なし、無問題ってヤツだ。
それにボクはリリエに救われたのは間違いない。だから、聞かれたコトは出来る限りは話さなきゃならない。それが今の余所者に出来る、せめてもの誠意だろうと思うから。
◆
「ふぅむ、砂漠の生き物を調べる、学者さん、なんかね」
「はい、まぁ、学者さんって程エラくはないんですけどね」
ハハ、と笑いながら答える。
おばあちゃんは、少し含む所はありそうだけど、それでも、どうやらとりあえずは納得してくれたみたいだ。
「分かったよ。気を悪くさせたのなら誤るよ、ミカ」
そう言ってボクへ頭を下げる。
「いえいえ、おばあさんの対応は何も間違ってないです。ボクみたいな余所者がいきなり来たら警戒して当然だと思いますし」
「そう言ってくれると助かるねぇ。リリエが随分あんたを気に入ってるみたいだし、何もない小さな村ですが今日はゆっくりしていくといい」
「ありがとうございます」
ボクはおばあちゃんへ一礼、そして近くで一人遊んでいたリリエへと話しかけるコトにした。
「リリエちゃん、こんにちは」
「あ、お話終わったの?」
「うん」
「今日は村にいてくれるの?」
「うん、ヨロシクね」
「やったー、じゃあリリエについて来て」
リリエちゃんは本当に嬉しいのか、満面の笑みを浮かべつつ、ボクの手を握ると引っ張り出す。
いや、暑いのは苦手だけど、うん、まぁ仕方ないか。
◆
「ミカ、こっちこっち早く早くぅ」
「ちょ、ちょっと待ってくれないかな」
侮った、いや、別に侮ってたワケじゃないけど、まいった。
リリエちゃんの歩く速さがハンパない。ね、何であんな速いの? 何かトリックでもあんの? って思ってしまう位に、ズンズンと砂地を歩く。
ボクがこうした地面を歩くのに不慣れで、向こうがその逆なだけ、そう思いたいんだけど、それにしたって速過ぎる。
「ほら見てよ」
嬉しそうに笑うその表情はまさに天使か何かだろうかと思える程にかっわいい。ああ、許されるのならば今すぐにでも抱きつきたい。うう~ダメだダメだ。我慢しなきゃダメだ。本能に負けるワケにはいかない。いいか、顔に出すなよ。絶対にだ。
そう言い聞かせつつ、リリエの指差す方向へと視線を動かすと──。
「うっわ、すっげぇ……」
思わず絶句した。少し小高い岩場にいたボクの視界には見渡す限りの砂漠。この前は全く思いもしなかったけど、強い陽射しを受けているからだろうか、まるで金色の世界に思えた。キラキラとした、幻想的にすら見える輝く世界だった。
「ね、キレイでしょ!」
「うん、そうだね」
こんなの同意するしかない。今更ながら視点を変えたら、こんなにも美しいモノがあったんだ、そう思うと心が震える。何故だか目から涙が流れ落ちて、しばらくの間、止まらなかったよ。
「ビックリしたなぁ、ミカったらいきなり泣いちゃうんだもん」
「いや~ゴメンね。驚かせちゃって」
ボクとリリエは岩陰で食事を取る事にした。
リリエちゃんが自分でこさえたものらしく、木の篭のバスケットを開くとパンが入ってる。
早速手にとってみると、パンには切り込みが入ってて、中には野菜と肉。美味しそうな匂いには抗えないので、そのままガブリとかぶりつく。
「うん、美味い」
「へっへ、良かったぁ」
いや、本当に美味しい。噛めば噛む程に味わいが増していくのは、この肉のせい。どうやら燻製しているらしく、仄かな香りを放ってて、おまけに香辛料が効いてる。
ボクが今のボクになってからというもの、以前とは色々変わってしまって、食事をしてもあんまり美味しいとか思わなかった。だから味覚までおかしくなったんじゃないか、って不安に思ってたけど、どうやら取り越し苦労だったみたいだ。そんなボクにとって嬉しい発見が出来た時だった。
◆
「あー、美味しかったよ。本当にありがとう」
水を飲み干し、人心地ついたボクはその場に寝転がる。暑い事は暑いんだけど、あの殺人的な陽射しから逃れられるだけでも、嬉しいし、実際思った以上に快適だ。
「ミカったら子供みたいだね」
リリエちゃんに突っ込まれ、思わず苦笑する。
ああ、そうかもなぁ。ボクは今でこそこんな姿になっちゃったんだけど、元々はなぁ。
それにリリエちゃんだけじゃなくて、こんな姿になってから出会った人達は皆総じて大人びていたように思える。多分それはそうしなければ生きてこれなかったから、だと思う。子供とか大人とかそういう区分けだけじゃ、生きていけないからなんだ。
「本当にそうかもね」
だから、……ボクは笑ったんだ。目の前にいるまだあどけない表情をした少女にではなく、そんな小さな女の子に言われて心の中で動揺した自分に対して。
こんなんじゃいけない。ボクはもっともっと大人にならなきゃ、って。
「ねぇ、ミカはどうして一人砂漠にいたの?」
「え、~とね」
リリエちゃんは興味深そうに目を大きく見開いて訊ねてきた。
そう、その質問がボクは怖かった。少なくとも、さっきリリエちゃんのおばあちゃんに聞かれたらどうしようかと心中穏やかじゃなかった。
確かにウソは言ってない。ボクがここに来たのはとある生き物の調査の為だ。だけど、どうしてなのか? そう聞かれたらマズかった。納得してもらったかは分からないけど、あれ以上追求されずに助かっただけは事実だった。
「うん、おばあちゃんにも言ったんだけど、ここにいる生き物を調べにね……」
「どんな生き物なの?」
「え?」
「それってどんな生き物?」
リリエちゃんはそう質問してくる。表情を見れば、さっきまで見せていたあどけなさはそこにはなく、真剣な面持ち、そして目でボクを見据えている。
ドックン。
鼓動(・・)がした。マズいぞ、コレ。
「ミカは何で砂漠(・・)に来たの?」
リリエちゃんからの問いかけは続き、鼓動もまた止まるコトなくドンドン大きくなっていく。
ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい。
「ミカ、教えてよ。一体どんな生き物を調べに────」
その時だった。
ゾワリ、とした悪寒が走る。
この感覚には覚えがある。ああ、ココに来てからというもの幾度も幾度も遭遇したあの感覚。
肌には鳥肌が立ち、なのに、ボクの中で湧き上がってくるモノ。ヤバい、抑えが利かない。このままじゃマズい。
「あ、…………」
リリエちゃんはその顔を蒼白にしている。もしかして、感づかれたのか? ならどうする? どうすればいい?
「く、る……悪いモノが」
「え?」
リリエちゃんの様子がおかしい。目は虚ろで、何処か焦点は合ってない。ずっと遠くを見ているようにも、近くを見ているようにも思え、顔色は蒼白。まるで何かに怯えるような様子は尋常じゃないと思える。
「にげてっっっっっ」
リリエちゃんはそう叫ぶと、その場で倒れ込む。
「ちょ、大丈夫──」
思わず抱きかかえるものの、既に彼女の意識は途切れている。
だけど、彼女の言葉が何を指すのかは分かってる。ボクの肌も粟立っているから。
鼓動はドクンドクンと全く落ち着く気配もない。
「どうやらここで当たりみたいだ」
何をすべきかは分かってる。ああ、ボクにしか出来ないコトをココでするだけだ。
幸いにも目指すべき場所は明確だ。なら、出来る限りの最速でそこへと至ろう。
◆◆◆
「う、ひいいいいい」
悲鳴をあげる村人の目の前に映ったモノは怪物だった。
リザード、いわゆる爬虫類系の魔物(モンスター)であり、肉食。個体の大きさは年数に応じて異なり、成体ともなれば三メートルを超えるモノもいるらしい。
「ウウウンンギャアアアアアアア」
爬虫類は雄叫びをあげ、目の前で腰を抜か村人へとかぶりつく。
「ああ、あああああああああああ」
鮮血を撒き散らしながら、絶叫が轟く。
「うぐぎいいいいいいいい」
その凄まじいまでの断末魔の声が村中を駆け巡り、逃げ惑う人々を恐れおののかせる。
「落ち着け、落ち着くのじゃ」
リリエの祖母が必死にまとめ上げようとするが、この状況で混乱を収めるには足りない。
(何という事じゃ。この村にまで魔物共が侵入してこようとは──)
それは本来有り得ないはずの事態だった。この村は云わば隠れ里。かつて起きた暴威に際し、人々を守った場所。
(結界には何の問題もなかったはずじゃ。なのに……)
彼女の一族は結界を維持する存在であり、もしも異常が起きたのならば、気付くはず、だった。にもかかわらず、結界があるにもかかわらず、こうして魔物が入っている。
「うわあああああ」「やだああああああ」「助けて、ぐれええ」
村人達はろくに抵抗すら叶わず、次々と迫るリザードの餌食になっていく。あまりにも脆く、無惨に、血を流し、五体を引き裂かれていく。
「皆、上じゃ、高台にまで来るのじゃ」
リリエの祖母の大音声が聞こえたのか、逃げ惑う人々は少しずつこちらへと向かってくる。高台に至るには長階段を通るしかなく、守りさえ固めれば耐える事も出来よう。
(リリエ、お前がこの場におらんかったのはせめてもの救いじゃろうかね)
何とか尽くせるだけの手は尽くそう、だけど、それでも駄目であるのなら。せめて孫娘だけでも生き延びて欲しい。そんな事を思っていたその時だった。
「あ、あれ何だ?」「バケモノ」「うそだろう」
高台へと至った村人達の声にリリエの祖母は視線を動かし、そして目にした。
「何という事じゃ……」
絶句するしかなかった。それはまさしく怪物、としか形容出来ないモノ。
その巨体はゆうに二十メートルはあろう。さっきまで村を蹂躙していたモノなどまるで赤子にすら見える。もはや規格外の大きさのリザード。
「ウ、ウウウウ、アアアアアアアア」
巨大リザードのその咆哮は周囲を揺らし、家を倒す。そして、高台の、頑丈な岩盤にすら亀裂を生じさせる。
「バケモノか、これではまるで……」
神話にでも出そうな怪物、そう感じ、では何をしても無駄ではないのか、という思いを浮かび上がらせる。
そしてそんな怪物がおもむろに口を大きく開き、そして…………。
「は、いかん。皆のものっっっ」
何が来るのかを理解し、声をあげた。だが何もかも手遅れだった。ここは高台。下へ降りるには階段しかない。数十メートルもある絶壁において、逃げ場などなければ、ましてやあの攻撃を凌ぐ術はない。
(ここまでか────)
目を閉じ、自らの死を受け入れるしかない、と思った時。
『大丈夫だ。ボクが何とかするからさ』
その声は声なき声。音を発したのではなく、心の声。単純な魔法ではあるが、この場合、その声は高台にいた村人全員へ届けられた。数百人に対して一斉に届けられた心の声。
そしてその声を発した本人が、一体どうやったのか、いつの間にか階段に真ん中に立ちふさがっている。
「な、何をしてるんだい、死んじまうよ」
リリエの祖母はそう言いつつも、そこにいるミカへ疑念を隠せない。何故そこにいるのか、どうやってここに至ったのか、と。こちらに気取られずに、この結界の中に入れたのか、と。
「グルウウウウウウアアアアアアアアア────」
そして巨大リザードは口から炎を吐き出す。火の吐息。その身に受ければ人の身体などあっという間に消し炭になってしまう凶悪な攻撃。
「へぇ、こりゃなかなか」
何を思ったか、ミカは微動だにせず、気でも狂ったのか、笑いながら火を受け入れる。
燃やすべきモノを得た火は即座にミカの全身へと延焼。包み込んでいく。
「何という事じゃ……」
リリエの祖母は、燃えていくミカをただ呆然と眺める他ない。今の自分達の無力さを実感させられる。
(この数十年、いいや数百年の平和を私たちはさも当然だと思っていた。
だが、違う。平和だったのは結界の中だけ。その外では何度となく世界の命運を決める戦い)が起こっていたのじゃ)
愕然とするしかなかった。世界は幾度も幾度も危機を迎え、その都度守られてきた。当たり前のように結界の中で危険から離れた生活を送り続けた結果がこの状況。
いざ危険に際して、何も出来ない自分達を庇って、あの金髪の少年は火に焼かれた。
「く、あ、あああああああああああ」
絶叫。凄まじいまでの声。火は炎となり、肉体を燃やし、否、消そうとする。命諸共に、存在を消さんと暴威を振るう。身体は黒ずんでいき、肉塊へと変わっていく。誰がどう見たって、その光景が意味するモノはたった一つ。
「グ、ルウウ?」
最初に異変を察知したのは巨大リザード。今の今まで、彼の存在は自分こそがこの場に於ける絶対者だという自負を持っていた。
彼の存在にとって、この状況こそ長年望んだ悲願。己が存在してきた理由。
創造主によって命じられた、ただ一つの命令を、本能に刻まれた遂行する機会。
砂漠に潜みし、忌まわしき巫女を殺す機会だった。
達成は目前、容易く終わるはずだと云うのに。
「グ、ア、アアアアアアアアア」
巨大リザードは吠えた。この場に於いて、自分以外の絶対者に対して。
「あ~、いやいや。ヒドい目に合ったなぁ、ホント」
今、……つい今し方死んだはずの存在、金髪の少年に対して。
全身黒ずんで、焦げたにもかかわらず、まるで何事もなかったかのようにそこに在る存在に対して、吠えるのだった。
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