過去の魔女

rai_

文字の大きさ
1 / 1

花の魔女

しおりを挟む
これは、歌を歌うことが好きな、住む場所も歌い方も違う、ただ楽しく歌を歌うことが好きな5人の少女たち…そして未来に《 魔 女 》と呼ばれることとなる話だ。

 木々と緑が広がる森の中で、丸く太陽の光が差し込み無邪気な少女たちの笑い声、そして足音が響く渡る。
「今日はなにを歌おうか?」
「そうだねぇ~、あ!昨日見つけた曲なんだけどさ!」
 桜色の髪色をした少女はなと、青色の髪色をした少女、芽生めいが愉快に話すその後ろから3人が後から現れる。
 白味かかった髪色に右目が前髪で隠れているの少女瀬界せかい、薄い黄色の髪色をした少女春香はるか、黒髪色にストレートの少女ゆき
「なに?聞きた~い!」
「うぉっとと、急に飛びついて来ないでよ、危ないじゃん!」
「あははっ!ごめんごめん!」
 芽生の後ろから抱き着く春香に軽く怒る、だけれどその顔は怒っておらず、むしろ楽しそうな表情だった
「えっとね~、あった!」
 スマホを操作し、聞かせたい曲を見つけた芽生は画面をタップし、みんなに聴かせる。その曲は、洋楽。
 そして、曲が終わる。
「どう?いい曲じゃない!?」
「確かに!特に最後の…こう、なんだろ…」
 それぞれ独自の選んだ言葉で感想を言う、まるで幸せそうに5人は語る。
 ここにいる5人はバラバラな街で暮らしている。生きる環境も、街の空気もまったく違う。けれど〈歌〉と〈音楽〉が好きというだけでここに定期的に集まっているのだ。

 突然、強い風が森の木々を軽く揺らした。それと同時に木の枝に乗っていた鳥たちも、風に驚いて空に飛び立っていく。
「なに…?」
 花は風が来た場所を見る。そこにはもちろん広い草原が見えたりなどはしない。ただ木々が沢山生えているだけ。
 けれどナニかが、ダレかが呼んでいる。助けなのかどうかはわからないけど急いでいるわけでもない。
ただ私の名前を呼んでいることだけは分かっている。
 そんな中で花は立ち上がり、他の4人も驚いて花の方を見る。
「ど…どうしたの?花…」
 春香が質問する。花はただ答える。
「誰かが私を呼んでる…」
 自分だけに聞こえることなどわからず、声が導く方角へと花は走り出して木々が生い茂っている場所へ行く。
「ちょっと花!!?」
 その後を芽生たちも急いで追いかける。
 声は届かず花は止まらず、ずっと走り続ける。すると突然目の前に透き通ったクジラのような生物が視界の横から現れた。
『この先です。』
「!!」
 クジラはそのまま真っすぐ突き進んで行って見えなくなった。
 この先に私を呼んでいる誰かがいるとすぐに分かって少し加速させた。
「んっ…?」
 森を抜けた、その瞬間太陽の光で目の前が見えなくなったけどすぐに治まって目の前に広がる景色に魅了する。
「わぁ…」
 目の前には絵本とかアニメ映画で見るような古びた石で作られた長い塔があった。長年放置されているのか、ツタが伸びていたり、少し傷がある箇所がいくつもあった。
「花!!」
「あ…みんな」
 声が聞こえ、後ろを振り返るとみんながわたしが走ってきた場所から出てきた。
「なにあれ…」
 4人のなかで目の前に建つ塔に気づいた瀬界ちゃんが目を丸くさせた。他のみんなも気づいて上を見上げた。
「あ。」
 塔の空いた窓のような場所からさっき見た透明のクジラが水を泳ぐように出てきて、そのクジラはわたしたちの前に来るとそのまま浮いたまま口を開く。
『はじめまして、ワタクシのご主人さまの元にご案内します。』
「ご主人さま…?」
『はい、説明は後です。少し急いでください。」
「わかった」
 クジラの後ろをついて行こうとしていると、後ろから芽生ちゃんに呼び止められた。
「花ちゃん…どこ行くの?」
「え?」
 クジラの声が聞こえていたのは自分だけであったことに今気づき、少しびっくりした表情で4人の顔を見る。するとクジラが説明を挟む。
『ワタクシの声はあなたにしか聞こえていませんし、この姿もここではあなたのご友人方には見えておりません。連れてきてもいいですよ。」
「ありがとう。みんな!ついてきて!!」
 そういうとみんなは少し困った顔をしたけどすぐに駆け寄ってきた。
『では行きましょう。』
 わたしたちは塔の中に入っていく。それと同時にみんなが目の前にいるクジラに気づいたのかビックリしだした。
「落ち着いてください、ワタクシはカイブツなどではありませんから。」
「そういう問題なのかな…」
 春ちゃんがそんなことを呟いたけど、そのまま階段を上がっていく。上を見上げてみたらほとんどぐるぐるしてる。
「この塔はなんですか?」
 瀬界ちゃんがクジラに聞く、するとクジラはその質問に答える。
「ここは、大昔に秘密に造られた建物です。そしてここには特別なニンゲンしか入っては行けないという掟があるんです。」
「え?じゃあなんでわたし達入れてるの?」
 クジラは幸ちゃんの質問には答えず、ただ進み続けるだけ。
 「あ、あれ…」って戸惑う幸ちゃんの声が後ろから聞こえた。
 階段を登り始めて多分5分、やっと到着した。けれどみんな何故か疲れ切った表情をしている。
「お疲れ様でした。では…着いてきてください。」
「わたし先に行ってるね」
「うん、気をつけて」
 わたしはみんなを置いて、クジラの後ろについて行く。するとボロボロの赤色のカーテンみたいなところに到着すると、クジラは入りやすく布を持ち上げてわたしは中に入っていった。

 中に入るとそこは比較的綺麗にされた場所。周りには本来の役目を果たしていない本棚が何個もあり、どこか寂しさを感じながらも前に進んでいく。
 死角から現れたクジラに少し身体をビクつかせる。だがそんなことは全く気にすることはない謎のクジラは目の前に建つあるものへ向けて――
「お連れしました。ご主人さま…」
「ご主人、さま…?」
 わたしは顔を上げた。その部屋にある窓のような開いた穴から差し込む光がクジラの前に立つ石像の身体の半分を照らしている。
「はい、これがワタクシのご主人さまである《花ノ魔女》です。」
「…この、石像が…?」
 わたしは一度、足から頭までちゃんと見る。
 けれどただの石像だ。そう思っていると――
『こんにちは。待っていましたよ。』
「え…?」
 突然頭の中から大人びた女性の声が聞こえて声が漏れ、一歩だけ後ろにさがって、不気味さにそのまま耳を塞いでしまった。
『驚かせてごめんなさい。私はもう魂しかない状態なの、だからこうしてあなたの頭の中に話しかけてるの。』
「本当だ、耳塞いでも聞こえる…」
 言っていた通り、耳を塞いだ状態でも先程と全く同じ声量に聞こえる。そして少し落ち着きを取り戻してそっと手を下ろして目の前の石像を見る。
『話を続けるわね、今とっても大変な状況なの。』
「大変な状況…?」
『そう、ひとまず説明をするわね。』
「わ…」
 先程みた空っぽの本棚から一冊の黄金に光る厚い本が現れ、引っ張られるかのように飛び出してわたしの目の前に止まって、本が開かれた。
 その本に書かれた文字は全くわからない言語、それなのに何故か理解できる。少しだけ怖くなったけれど自然と読み進めてしまう。
 大昔にこの世界に突然天空の島が現れた。その島は人口が多く、土地を求めていた。だが浮かぶ島は移動してしまいまともな土地は手に入らない。そして選んだ選択は、地上を攻めること。こうして島に住む住民はわたしたちの住む5つの街を襲いかかり、戦いが始まった。
 その戦いは止まることはなくて、どんどん犠牲者が増える一方。少し戦いが収まった場所には理不尽に殺された人が転がるばかり。そんな中で花の街から特殊な力…今で言う【魔法】を持った人物が1人現れるた、すると各街で共鳴するかのように似た魔法を持つ人物が一人、また一人と姿を現し、計5人が特定の場所それぞれ祈りを捧げた。
 そのおかげで5つの街を囲むように結界が張られ、空から敵は来ることはなく街の人々が勝利した。けれど、力を発動させた代償で祈りを捧げた人たちの体は石像となった。街の人々はその5人を称え、守るためにわたしが見たあの塔が造られた。
 そこから約75年後、5人の魔法は弱くなり始めてしまい、同時に街を覆う結界の効果も弱くなり始めていった、その影響なのか5つの街から石像となった人たちと似た力を発現させた人が各街で1人ずつ現れるた。その人たちは塔の元へ集まると受け継ぐように祈り、石像となってしまう。このおかげでにだんだん弱くなってた結界は元に戻った。これは何年も、何千年も繰り返されてきた。
 最後のページを読み終わると、本は勝手に閉じてまた飛んでいき元居た場所へと戻っていき輝きを消した。
 そんな中、花の中では点と点がつながり始めている。
「…あの、もしかして…」
 なぜ特別な人間だけが入れる建物に入ってこれたのか、そしてこの話を聞かされたのか。
 あの本を読んだことで気づき、一本の線となった。
『ええ。あなたの予想通りよ。』
 考えは的中し、一度唾液を飲み込んで花は後ろに一歩一歩と下がっていく。
 彼女は信じたくなかった。ただ平和にくらいして、友達と好きな歌を歌う時間や両親と笑って暮らすという何気ない時間が好きだったから。
 石像は彼女を見て優しく笑う。
『別に私はあなたがこの姿にならなくてもいいと思うわ。けど…もうすぐこの世界が崩壊してしまうけどね。』
「…ぇ?」
『わたしは答えを待っているわよ。花。』
 その言葉と同時に目の前に大量の花弁が現れると、花を飲み込み、強い力押していき部屋から追い出すと花弁は静かに部屋の中へ戻っていく。
 花自身は何が起きたのかわからずにぼーっと天井を見上げる。
「花!!」
 後ろからみんなが心配しながら駆け寄ってくると、芽生ちゃんが1つ聞いてきた。
「大丈夫?なにかあった?」
 一度だけ心臓が強く鼓動して、背筋が凍った気がした。あのことはみんなに言わないと心に決めて、言葉を返す。
「…なにもなかったよ、それよりそろそろ帰ろうよ」
 一緒に作り笑いでみんなに接する。
 みんなは花の何か隠しているような雰囲気に、内心首を傾げながらも「そうだね」といって先程上がってきた長い階段を一緒に降りて行く。
 降りていく途中で、天井からここに導いたクジラが上から降りてくると花の耳元まで近づいて、悪魔の囁きのように一言。
『この運命には抗うことなどできませんよ。』
「!」
 身体をビクつかせて、隣を振り向くと最初に見た透明の状態で浮かんでおり、そのまま上の階へ姿を消してしまった。
 透明の状態はわたし以外には聞こえない、一度芽生ちゃんたちの方を見るとやっぱりみんなは気づいていないくて、お喋りをしていた。
 少し恐怖心が芽生え、服をきゅっと掴んで唇を噛み締めながら出口へと向かっていく。塔の中からでると少し日が沈みかけていた。
 芽生ちゃんの案で、かけっこすることになりみんなが同時に走り出す、ここに来るときに通った道を走り抜けて。
 ただ笑っていられるこの空間が楽しい。絶対に壊れることなんてないだろうと、きっと夢なんだと思いながら足を動かした。
「じゃあみんな!また来週ね~!」
「わかった、また会おうね。」
「おっけ~、じゃあまたね!」
「忘れないでよみんな?」
「大丈夫だよ、春ちゃん」
 かけっこの結果は芽生ちゃんの優勝で終わり、休憩を少し挟んだあと5人はそれぞれ別れて自分たちの街に帰っていった。

 家に着くことには当たりは茜色に染まっていた。
 右ポケットから家の鍵を取り出して鍵穴に差し込み、右に回して鍵を開けると、鍵を抜いてドアノブを掴んで引っ張って開ける。
「ただいまー」
 靴を脱いで揃えながら奥にいる家族に向けて言うと「おかえりー」と返ってくる。
 そのままリビングに向かって歩いていく。
「今日は少し遅かったね、友達と話盛り上がってたの?」
 リビングにある椅子に座って、スマホを操作しているお姉ちゃんが聞いてくる。
 それに少し本当のことを言うかどうか迷いながらも、隠すことにして「うん」と答えた。そのまま椅子に座って軽く一呼吸する。
 当たり前のこんな平和な時間が無くなるだなんて思えなかった。
(絶対にないよね…)
 そんなことを思ったときだ。この思いを踏み潰すかのように、街中に警報が鳴り響き渡った。耳を塞ぎたくなるような不愉快な警報音。
 料理をしていたお母さんもすぐに火を消して、エプロンを脱ぎ始めて、お姉ちゃんはスマホの電源を消して椅子から立ち上がってわたしの手を取ってみんなで急いで靴を履いてから家の外に出た。
「なに…あれ…」
 アパートから出て、茜色の空を見ると中央には大きなヒビが入っており、それがバンッバンッとガラスを叩くような音と共にどんどん広がっていく。
 そして同時にわたしはあの時言われた石像の言葉を思いだした。
 "もうすぐ世界が崩壊してしまうけどね"
「う、うそ…」
 怯えて、一歩後ろに下がった時だ。
 そして等々結界が割れ、今まで見えていなかった何かが見えた。それはまるで浮島。
「あれが…天空の、島…」
 この場にいる全員が唖然として、足を止めて空に浮かぶ島を見上げる。
その直後、空がピカピカと小さく光ると地上の各地で大爆発が起こった。
「な、なに…?!」
 マンション近くの大きな噴水でも同じ様に爆発が起こり、噴水だった物が水しぶきと共に辺りに散らばっていく。
 その場には人影があった、それも5人ほど。姿を捉えると、彼らは背中から純白の翼を生やしていて、手に武器を持っていることに気づいて周りに居た人たちは声を上げながら逃げはじめる。
「は、花!…逃げよう!!」
 お姉ちゃんに手を握られて急いで反対方向に走る。
 マンションの影の上へ着いた時だ。突然上で爆発が起こった。
「花!!桜!!」
「お母さん!?」
 お母さんが私たちの元に走ってくると、背中を強く押した。
「あなた達だけでも、生きて…!!」
 私たちは押されたことで前に少し進んで、直後後ろから何かが落下していく音が聞こえた。
「そ、んな…」
「お母さん…」
 花と桜は後ろを振り返って、目を大きく開いた。
 お母さんが、建物の瓦礫の下敷きになっており、大きな瓦礫が積み上がった場所の下から赤い血が流れている。
「…花、早く!!」
 桜は急いで花の腕を掴んで、森の方へ走っていく。その森の中で隠れられる場所に向かった。

 たどり着いた場所は詰めれば20名は入れるそうな広さをした洞窟、その洞窟にはわたしたち以外にも避難してきた人たちが何人も居た。
 地面に座って息切れになったお姉ちゃんは息を整える。
「はぁ、はぁ…」
「……」
 花はひんやりした石の上に座って、ここまで何が起きたのかを頭の中で一度整理する。
 まず一つ、空に張られていた結界が割れた。その結界が壊されたことで今まで見ていた空の景色は作られた景色から、本来の景色に変わったことであの浮島が見えるようになった。
 次に2つ、結界が破壊されたせいで浮島の住人が地上に降りて、襲いかかってきたこと。そのせいでさっきお母さんが死んでしまった。多分…他の人も…。
「あの人たちは、だれ…」
 あの浮島から降りてきた彼らの背中には天使のような純白の翼が生えていた。あれは人間なのか、それとも別の種族なのか…教科書は図鑑にさえ載っていないからわからない。
 そんな中で聞き覚えのある声が、花の頭の中で響き渡る。
『彼らは空人そらびと。何千年と前から結界の外側にいる人種です。』
「!」
 突然頭の中からあのクジラさんの声が聞こえて洞窟内を見渡すがどこにも居ない。
「どう、したの…?花」
「い、いや…なんでも、ない。」
 突然の行動に、桜は花に問うが本人は誤魔化すように少し微笑んで答える。
 するとまたあの声が聞こえて、わたしは目を閉じてクジラさんの話を聞く。
『ワタシの体はありません。魔女サマの存在が消えてしまいましたからね。この声はあなたの頭の中でしか聞こえません。』
 一度、クジラさんと話がしたくなり、隣に座っていたお姉ちゃんに一言伝える。
「お姉ちゃん、ちょっと外に出てくるね」
「え、でも…」
「大丈夫だから、安心して」
 心配するお姉ちゃんはわたしのことを信用して「気をつけて」とだけ言って、わたしはは洞窟を出て、上に登って比較的大きな木の後ろに向かった。
「あなたが言った空人は、何が目的なの?」
 襲いかかってくるほどなのだからきっとなにか理由があると思いクジラさんに質問すると頭の中でその質問の返事が返ってきた。
『ヤツらの目的は、住む場所を手に入れる事です。住む場所が欲しがために、この5つの街を奪いに来たのです。それはわかっているでしょう?』
 くじらが言う5つの街。それは花がいる【花の街】、芽生が住んでいる【夜の街】、春 が住んでいる【風の街】、瀬界が住んでいる【異世界の街】、幸が住んでいる【氷の街】の5つ。
 この5つが繋がり、大きな円となっている。

「てことは、芽生ちゃん達のところにも…」
『はい。今頃ここと同じように死者や建物への被害が出ている頃でしょうね。』
「どうやったら、止められる…?」
『今のアナタ様では止めることなど不可能に近いでしょう。そもそも、力がありませんからね。』
「そんな…」
 これ以上罪のない人たちには死んでほしくない、芽生ちゃんたちも…。
 花は一度、どうにか止められる方法がないか考えてみる。そこで生まれた答えは――
「…一緒に暮らすことって、できない、の?」
『何故そう考えたのですか?彼らはアナタの住む街を壊し、母親を殺したのですよ?』
 その言葉と共に、あのシーンが頭の中で流れてしまう。お母さんの最後の言葉と、赤い血も。
「でも…、あの人達だって住む場所が欲しいんでしょ…?」
 自分があの友達と一緒に、家族とただ会話をする普通が好きだ。それはきっと向こうも同じなはず。
 服を両手で強く掴み、唇を噛み締める。
 心のどこかでは、お母さんを殺したことに対しての負の感情はないといえば嘘になってしまう。けれど、彼らとも話し合えればきっと一緒に暮らせるだろうと思ってしまう。
「私、行ってくる…」
『お待ちください!ヤツらは話を聞く気などありませんよ!!』
 クジラさんの言葉は無視して、私は進む。
 お姉ちゃんのいる洞窟を通り過ぎて、さっきの場所に戻る。
「花…」
 けれど後ろから手首を掴まれてしまい、足が止まった。
 誰が掴んだのかを確かめるために後ろを振り返る、私の手首を掴んだのはお姉ちゃんだった。心配している表情で、少し起こっているような声色で私に言葉をかける。
「なにしようとしてるの…危ないでしょ?」
「わたし…あの人達と話がしたいの」
「ダメに決まってるでしょ!」
 お姉ちゃんは声を大きくした。
 それでも、私は諦めていない。
「でも、話せばきっと…!」
「お母さんが言ってた言葉、聞いてなかったの?『あなた達だけでも生きて』って…」
「そうは、言ってたけど…」
 お母さんの声とともにその言葉が頭の中で流れてくる。
 服をさっきよりも強く掴んで、顔を下げる。目から溢れ出る涙が靴に落ちていく。
「! 花…下がって」
 お姉ちゃんが突然私の身を守るように前に出る。
 気づけは周りには先程クジラさんが言っていた空人が逃さないように囲んでいた。
「……」
 風が吹き、木々が揺れて音が鳴る。
「ハァ!」
 お姉ちゃんが目の前の空人に向かって走り、腹部を拳で殴りつけると畳み掛けるように顎を殴りつけて手に持っていた弓を奪い取る。そして今度は腹部に右足で蹴りつけて吹き飛ばす。
「行け!絶対に殺せ!!」
 空人2人は同時に桜の元へ襲いかかる、一方桜は弓を横にすると突き出して剣を抑え込む。
 そのまま押し返して素早く動いて弓で首筋を叩きつけて気絶させた。
「す、すごい…んッ!?」
 突然花が後ろから口を押さえつけれ、首元に剣の刃が触れる。
 すぐそこにはひんやりとした刃があり、死が近づいてきているという感覚が襲い自然と声が出せなくなってしまう。
「ッ…!」
「動くな、こいつが死ぬぞ?」
 お姉ちゃんはすぐ手に持った弓を足元に落とすと両手を挙げる。
 空人は押さえつけたわたしの口を少しだけ緩ませる。それにお姉ちゃんが気づくと足元に落とした弓を右足で勢いよく蹴った。
「っ!!」
 弓は縦に回転しながら速いスピードで空人の顔にぶつかった。
「うぐッ!」
 空人は鼻血を出しながら地面に倒れる。
「お姉ちゃん!」
「花!!」
 わたしがお姉ちゃんのもとに走り出したときだった。
 無慈悲な銃声とともに、お姉ちゃんの左胸が撃ち抜かれて赤い血が吹き出して顔に少し着く。
そのままお姉ちゃんは足を踏み外して地面に倒れる。
「お姉ちゃん!?お姉ちゃん…」
 口をゆっくり開く。
「ご、めん…は、な…。わた、しは、いいから…はや、く…にげて…」
 そのままお姉ちゃんの目が閉じ、同時に身体の力が抜けて動かなくなってしまう。
「そん、な…」
 目から涙が勝手に溢れ出る。
そんな花のもとに足音が近づいてく。
「あとは、お前だけだ。」
 顔をあげると30代後半くらいの男性が銃口を向けて立っている。
「なんで…?なんで一緒に暮らすなんてこと考えなかったの…?」
 掠れた声で目の前の空人に聞く、その答えは…
「何を言っている。できるわけがないだろ。」
(あぁ…無理なんだ…)
 そっか…今考えてみたら当たり前だ、街を壊して、人を簡単に殺めるんだから。
 もういい。力が欲しい、空人に対抗できる力を…。
『では、あなたに力を授けましょう。』
 わたしの頭の中で、くじらさんの言葉が響く。
 同時に、男性の持つ銃から弾丸が音と共に飛び出し、花に迫る。
「……。」
 だが目の前に大きく開花した花が現れると、それが盾になったことで防いだ。
「なっ…、なんだ?!」
 盾が弾丸を防いだ後、花たちが居る荒れた地面に草や花が咲き始める。
 それに困惑する空人はこの不気味さに恐れ、下がっていくがわたしは右腕を伸ばす。
「くッ…!!なんだっ…離せッ!」
 緑色の触手が空人の両手、両足を掴んで逃げないように拘束。
 花が立ち上がると足元から大きな花が咲く、そして空人の方に向く柱頭は力を集中させていく。
「待て!落ち着け!!頼むから!命だけはぁあっ!!」
「命を奪ったくせに、何言ってるの?」
 花そう言って、指をパチンッと鳴らし、それに合わせて溜まりきった力を一気に一直線に放射し、空人を焼き殺すのだった。

『これで【花】の魔女が覚醒いたしました。』

 くじらが呟いた単語を小さく復唱する。
「花の、魔女…」
 すると空中からさっきまで居なかったはずのくじらさんの姿が透き通った状態で現れるとそのまま私の目の前に近づく。
「新たな主様、ワタクシに名前をおつけください。」
「名前…、じゃああなたの名前は【デュラタン】。」
 するとデュラタンの体が光だして透明だった身体に色が付く、黒一色の体となり青ベースへ、体の模様が描かれて目元と尻尾は赤色と変色した。
「これから、よろしくおねがいします。主様。」
「…よろしくね、デュラタン。」
 こうして、花は魔女として覚醒したことで人間離れした特殊な能力をその身に宿した。その証拠に、元々黒かった目がデュラタンの色に近いものに変化しているのだが本人はわかっていない。
「では、主様。なにをしますか?」
「……」
 わたしは一度考える、今空人から守るために優先したほうがいいのは街の人もだけど、やっぱりわたしの大切な人たちが無事かどうか気になってしまう。
「わたしの、わたしの友達を助けに行こう。デュラタン。」
「承知いたしました。ではワタクシの中にお入りください。」
 そういってデュラタンは一度大きくなると、口を開いた。花はなぜ口の中なのか気になってしまい固まってしまうが、少し急かすようにデュラタンが言う。
「奴らにバレてしまいますから、透明になる力があるワタクシの中に入ってください!!」
「わっ、わかった…でもちょっと待ってて」
 デュラタンは渋々了承して、花は死んだ姉の近くに能力を使って穴を掘る。その後掘った穴の中に優しく入れる。
「ありがとうお姉ちゃん。大好きだったよ…」
 そう言葉を投げかけて、最後に頬に触れた。冷たい。
 涙を堪えながら埋め、花は髪を軽く整えてデュラタンの口の中に入った。
「ではまずは、【夜】の街に向かいましょう。」
「わかった。」
 少し休もうと思い目を閉じると、デュラタンの視界が共有される。
 ふわっと体が浮く感覚がすると、そのまま上昇していく。3分程で【花】の街の全体が見える距離にまで到達する。
共有された視界から見た街は、綺麗でもなんでもなく、とっても最悪だった。
「行きますよ。」
 そう言葉が聞こえると、目的の場所に向けて前に進み出して行った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魅了魔法の正しい使い方

章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のジュリエンヌは年の離れた妹を見て、自分との扱いの差に愕然とした。家族との交流も薄く、厳しい教育を課される自分。一方妹は我が儘を許され常に母の傍にいて甘やかされている。自分は愛されていないのではないか。そう不安に思うジュリエンヌ。そして、妹が溺愛されるのはもしかしたら魅了魔法が関係しているのではと思いついたジュリエンヌは筆頭魔術師に相談する。すると──。

旧王家の血筋って、それ、敵ですよね?

章槻雅希
ファンタジー
第一王子のバルブロは婚約者が不満だった。歴代の国王は皆周辺国の王女を娶っている。なのに将来国王になる己の婚約者が国内の公爵令嬢であることを不満に思っていた。そんな時バルブロは一人の少女に出会う。彼女は旧王家の末裔だった。

処理中です...