出向先は恋の温泉地

ラムライ

文字の大きさ
10 / 37

第10話:仕事後の打ち上げ(二月)

しおりを挟む
パチンコ店のイベントコンパニオンの仕事を終えて着替えた後、僕たちは打ち上げをしようと近くの居酒屋に集まっていた。

「かんぱーい!」

佐々木課長の音頭で、飲み会が始まった。あと、僕ら三人と他の社員も数人出席していた。

「今日は疲れましたねー」

小林さんは、グラスを片手に、ほっとした表情を浮かべている。

「そうですね。でも、楽しかった!」

僕は、笑顔で答えた。

「高橋さん、鈴木さん、小林ちゃん、今日は本当に頑張ったわ。ありがとうね」

課長は、二人に向かって言った。

「いえ、こちらこそ、ありがとうございました!」

二人は、声を揃えて答えた。
高橋さんは、少し離れた席で、一人静かに飲んでいた。

(…あれ?どうしたんだろ?)
彼女は、頬を膨らませて、拗ねている様子。

「高橋さん、どうしたんですか?元気ないですね」

僕は、心配になって声をかけた。

「だって…」

彼女は、僕を見上げ、寂しそうな表情を浮かべた。

「だって、健太さんと由佳ちゃんばっかり…!私、一人ぼっちだったんだから!」

彼女は、ぷりぷりしながら訴えた。

「え?あやかさん、一人で寂しかったんですか?」

僕と小林さんは、驚いて聞き返したが、

(え?いきなりファーストネーム?)
にも驚いていた。

「そうよ!私だって、健太さんや由佳ちゃんと一緒に回りたかったのに…!」

彼女は、涙目で訴える。

「ごめん、高橋さん…」

僕は、彼女の頭を撫でた。

「…もう、健太さんの意地悪!」

彼女は、僕の胸を軽く叩いてきた。

「ごめん、ごめん。今度、埋め合わせするから」

僕は、彼女を宥めた。

「…本当?じゃあ、明日、二人でデートに行きましょう!」

彼女は、上目遣いで僕を見つめてた。

「ああ、約束するよ」

僕は、笑顔で答えた。

「因みに、どこに行きたい?」

僕は、彼女に尋ねた。

「うーん、温泉とか、遊園地とか…」

彼女は、ようやく笑顔を取り戻し、楽しそうに答えた。

「分かった。明日、一緒に行こう」

僕は、彼女に約束した。

「やったー!明日九時ね!楽しみにしてるわ!」

彼女は、目を輝かせて僕の腕に抱き着いてきた。

「高橋さん、鈴木くんを困らせちゃダメですよ」

課長が、彼女を窘めた。

「大丈夫ですよ。高橋さんは、ちょっと寂しかっただけみたいですし」

僕は、課長に微笑みかけた。

「そうですか…」

課長は、少しだけ安心したようだ。

その後、飲み会は、和やかな雰囲気で進んだ。
高橋さんや小林さんや課長と、色々な話をした。

仕事のこと、プライベートのこと。
話しているうちに、皆との距離は、さらに縮まった。


飲み会の帰り道、僕は酔っていた高橋さんを支えながら、彼女の寮へ歩いていた。

「健太さん、もっとこっち来て…」

彼女は、僕の腕にしっかりと絡みつき、甘えるように呟いた。

「はいはい…」

僕は、彼女の独占欲の強さに、少しだけ戸惑っていた。

「いたたたたた!」

しかし、ヒールを履いた彼女は現在男性の僕より少し背が高くなっていた。時折、彼女の腕が首に絡みつき、ヘッドロックに近い技をかけられている。

「ねるぅ~」
「ちょっと高橋さん!」

堪らず公園のベンチで休もうとするも、背もたれがなく大の字で寝転ぶのでスカートがずり上がってしまう。また重い腰を上げる羽目になった。

(彼女、酔うと結構大胆になるんだな…)

普段は明るく元気な彼女だが、酔うと甘えたがりで、独占欲が強くなる。

「健太さん、私のこと、「高橋」でなく「あやか」と呼んで…」

彼女は、ぼそりと呟いた。

「え…?」

僕は、彼女の言葉に、ドキッとした。

「健太さんは、私のもの…誰にも渡したくない…」

彼女は、そう言い残すと、僕の腕の中で、すやすやと眠ってしまった。

(…高橋さん)
健太は、眠るあやかを見つめながら、複雑な気持ちになった。

「ピンポーン」
「はーい。あ、鈴木さん!それに高橋さんも!」

先に帰っていた小林さんが出てくれてほっとした。

「夜遅くごめんね。高橋さんが酔いつぶれちゃって…とりあえず小林さんに相談しに来たんだけど…」

「あちゃー、やはりそうなりましたか…わかりました。高橋さんをお預かりしますので、大丈夫です」

「ありがとう。同じ寮だし、助かるよ」

その夜、何度も腕が彼女の胸に押し付けられた感触、シャンプーの臭いを思い出しドキドキしたが、何とか眠りについた。
また、彼女は一時間後に程良く酔いが覚め、自分の部屋に戻れたとのことだった。


しかし…

「きゃぁぁぁあ!」(午後二時起床)

翌日の日曜日、二日酔いの彼女は盛大に寝坊。電話に出てくれたのは昼過ぎで、とりあえずデートは近くのカフェのみとなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

処理中です...