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2章
旅のおとも
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「え? 師匠が単身でミカゲ様たちを助けに行くの?」
美由に出立を告げると、彼女は心配そうに眉を顰めた。
「ああ、ジョゼからの依頼でな。しばらく美由の護衛ができなくなるけど、そもそも俺より強いから問題ないだろ?」
「私のことはいいんだけど。……平気なのかな、その師匠の良い香り。敵に感付かれない?」
「『女神の加護』の? ジョゼは敵には香らないって言ってたよ。この匂い、味方にしか影響ないんだってさ」
「ならいいけど……、でも心配だな。私もついていこうか?」
俺の弟子はどうも心配性だ。思わず苦笑する。
気に掛けてくれるのはありがたいが、三十路越えのおっさんが18歳の女の子に付き添ってもらうというのは逆だろう。
「大丈夫だ、今回は戦いがメインじゃないし。ミカゲ様たちを見つけたら、速やかに連れて帰ってくるよ」
「うん……」
渋々という感じで頷いた美由の隣で、対照的に舞子はきらきらと瞳を輝かせた。
「師匠さん、ミカゲ様を助けに行くのね!? 危険を顧みず敵地に飛び込んで、そこからドキドキ愛の逃避行! これはロマンスが生まれないわけがない!」
「ロマンス? 何で?」
「うむ、受けが鈍感! 美味しい!」
何が美味いのかよく分からない。
首を傾げた俺に、美由は「気にしないで」と手を振った。
「師匠、気を付けて行ってきてね」
「分かってるよ、ありがとう」
「師匠さん、帰ってきたらミカゲ様との一部始終を聞かせてね!」
俺とミカゲの何が聞きたいというのか。
不思議に思いながら部屋を出た俺は、再びジョゼの部屋へと向かった。
ジョゼの部屋には何故か、小さな黒猫がいた。
そしてその首に巻かれているのは、ミカゲの動物憑依の術式が刻まれた首輪。
「……この猫は? 首輪も……」
「「動物憑依を私の記名にして再利用することにしました」」
ジョゼと猫が同じ科白を吐く。
「何でそんなことを……あれ? もしかしてこの猫も連れて行くのか?」
「「アンチマジックを使えるとしても、結界や防御術式は巧斗では感知できないでしょう。私がこうして同行すれば道案内もできますしオルタとの連絡も取り合えますし、ちょうどいい」」
「確かにそうか……。それにしても同じ音声が2カ所から聞こえるのは気持ち悪いな。これって常時つながってんの?」
「もちろん切り離すこともできますよ。そうでないとそちらに意識を向けっぱなしにしなくてはいけなくなる」
今度はジョゼだけがそう言って、黒猫を抱き上げた。
「この子は肩に乗せるかリュックに入れるかして連れて行って下さい。定期的に私が意識をつなげて、指示を出します。もし巧斗の方から用事がある場合は、声が出せる状態なら呼んでくれればいいですし、声が出せないときは猫の頭をとんとんと叩いてくれれば大丈夫です」
「わかった」
俺は黒猫を受け取るととりあえず肩に乗せた。まだ成猫ではないのか、それほど重くない。
ジョゼと意識がつながっていないと普通のなつこい猫らしく、こちらの頬に頭をすり寄せてきた。可愛い。つい頭を撫でてしまう。
「この猫、ジョゼが憑依していないときに逃げちゃったりしないのかな」
「首輪がついている間は基本的に支配を受けているので、それを外さない限りは勝手な行動はしません。ミカゲの術式は良くできていて、憑依していない間も指示さえ出しておけば自分で目的地に向かって歩いてくれたり、匂いで目当ての人間を見つけてくれたりできるんですよ」
「へえ。やっぱりミカゲ様って術式を組むセンスがあるんだな」
そんな有能な人間を牢に閉じ込めておくなんて、ヴィアラント王城の奴らは本当に見る目がない。
「じゃあ、そろそろ出発するよ。とりあえず国境を越えたあたりから指示頼む」
「分かりました。王城までは最短で3日で行けます。ミカゲはおそらくそこの地下牢に閉じ込められているはず。少し強行軍になりますが、頼みますよ」
「了解。じゃあな」
最低限の水と食料は用意している。しかし敵国で火を起こすような不用意なこともできないし、食事も睡眠も十分にはとれないだろう。
往復でたったの6日、そんなのは覚悟の上だ。
俺はオルタを出ると、国境へと足を向けた。
美由に出立を告げると、彼女は心配そうに眉を顰めた。
「ああ、ジョゼからの依頼でな。しばらく美由の護衛ができなくなるけど、そもそも俺より強いから問題ないだろ?」
「私のことはいいんだけど。……平気なのかな、その師匠の良い香り。敵に感付かれない?」
「『女神の加護』の? ジョゼは敵には香らないって言ってたよ。この匂い、味方にしか影響ないんだってさ」
「ならいいけど……、でも心配だな。私もついていこうか?」
俺の弟子はどうも心配性だ。思わず苦笑する。
気に掛けてくれるのはありがたいが、三十路越えのおっさんが18歳の女の子に付き添ってもらうというのは逆だろう。
「大丈夫だ、今回は戦いがメインじゃないし。ミカゲ様たちを見つけたら、速やかに連れて帰ってくるよ」
「うん……」
渋々という感じで頷いた美由の隣で、対照的に舞子はきらきらと瞳を輝かせた。
「師匠さん、ミカゲ様を助けに行くのね!? 危険を顧みず敵地に飛び込んで、そこからドキドキ愛の逃避行! これはロマンスが生まれないわけがない!」
「ロマンス? 何で?」
「うむ、受けが鈍感! 美味しい!」
何が美味いのかよく分からない。
首を傾げた俺に、美由は「気にしないで」と手を振った。
「師匠、気を付けて行ってきてね」
「分かってるよ、ありがとう」
「師匠さん、帰ってきたらミカゲ様との一部始終を聞かせてね!」
俺とミカゲの何が聞きたいというのか。
不思議に思いながら部屋を出た俺は、再びジョゼの部屋へと向かった。
ジョゼの部屋には何故か、小さな黒猫がいた。
そしてその首に巻かれているのは、ミカゲの動物憑依の術式が刻まれた首輪。
「……この猫は? 首輪も……」
「「動物憑依を私の記名にして再利用することにしました」」
ジョゼと猫が同じ科白を吐く。
「何でそんなことを……あれ? もしかしてこの猫も連れて行くのか?」
「「アンチマジックを使えるとしても、結界や防御術式は巧斗では感知できないでしょう。私がこうして同行すれば道案内もできますしオルタとの連絡も取り合えますし、ちょうどいい」」
「確かにそうか……。それにしても同じ音声が2カ所から聞こえるのは気持ち悪いな。これって常時つながってんの?」
「もちろん切り離すこともできますよ。そうでないとそちらに意識を向けっぱなしにしなくてはいけなくなる」
今度はジョゼだけがそう言って、黒猫を抱き上げた。
「この子は肩に乗せるかリュックに入れるかして連れて行って下さい。定期的に私が意識をつなげて、指示を出します。もし巧斗の方から用事がある場合は、声が出せる状態なら呼んでくれればいいですし、声が出せないときは猫の頭をとんとんと叩いてくれれば大丈夫です」
「わかった」
俺は黒猫を受け取るととりあえず肩に乗せた。まだ成猫ではないのか、それほど重くない。
ジョゼと意識がつながっていないと普通のなつこい猫らしく、こちらの頬に頭をすり寄せてきた。可愛い。つい頭を撫でてしまう。
「この猫、ジョゼが憑依していないときに逃げちゃったりしないのかな」
「首輪がついている間は基本的に支配を受けているので、それを外さない限りは勝手な行動はしません。ミカゲの術式は良くできていて、憑依していない間も指示さえ出しておけば自分で目的地に向かって歩いてくれたり、匂いで目当ての人間を見つけてくれたりできるんですよ」
「へえ。やっぱりミカゲ様って術式を組むセンスがあるんだな」
そんな有能な人間を牢に閉じ込めておくなんて、ヴィアラント王城の奴らは本当に見る目がない。
「じゃあ、そろそろ出発するよ。とりあえず国境を越えたあたりから指示頼む」
「分かりました。王城までは最短で3日で行けます。ミカゲはおそらくそこの地下牢に閉じ込められているはず。少し強行軍になりますが、頼みますよ」
「了解。じゃあな」
最低限の水と食料は用意している。しかし敵国で火を起こすような不用意なこともできないし、食事も睡眠も十分にはとれないだろう。
往復でたったの6日、そんなのは覚悟の上だ。
俺はオルタを出ると、国境へと足を向けた。
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