12 / 13
第十二話(生者視点)
しおりを挟む
「宰相、城を移すぞ。」
「ロンバルト陛下、一体どういう事でしょうか?」
また、何か思いついたというのか。
単純な王は操りやすいが、時々とんでもないことを言い出すものだ。
「この城はマリアベルの呪いがかかっている。」
「しかし、呪いなどと不確定なことで城を移すとなると、貴族やその他の民から不満が出るかと。」
「こんな城に残っている方が、不満が出るに決まっている!
大体お前の弟のリアムもマリアベルを恐れて登城しないではないか!」
「陛下、不肖の弟がご迷惑をおかけして申し訳ございません。
恐れながら、弟のリアムは病気療養中でございます。ご容赦ください。」
頭を少し下げると、イライラしたようにつま先で床をたたく。
『マリアベル妃の呪い』はずっと陛下を追い詰めている。ひとつひとつは大したことではない。鏡に影が映った、寒気を感じた、物が動いた、呻き声が聞こえた。子どもの悪戯のようなことばかりだが、長く続くと消耗するのだろう。
「いいか、新しい城の場所はまかせる。貴族院の承諾が下りるようにしておけ。」
私が何も言わないからだろう、イライラしながら陛下は部屋を出て行ってしまった。
元々直情的なところのある陛下だったが、ますます我慢が効かなくなって、執務にも公務にも身が入っていない。
マリアベルがいなくなってからは諫める者がいないのだから仕方がないだろう。最近は誰も何もいわないのをいいことに、昼間から女を侍らせ酒を煽っているようだ。
それにしても新しい城か……。
場所は南側の貧民街を全て取り壊してしまえは問題はないだろう。住民の抗議が起こるかも知れんが……。
まあいい。確かにこんな辛気臭い城にこだわる事はないだろう。新しい支配者には新しい城が必要だ。
今、リアムは公爵家の一室に閉じこもり、一日中ぶつぶつと呟いている。
「……兄さんに…言われたようにしたのに……僕は…言われたとおり………」
単純で愚かしい最愛の弟は私のためにとても良く動いてくれた。そう、言われたとおり。
リアムがマリアベル妃に惚れていなければこんなに上手くはいかなかっただろう。
ロンバルトからマリアベルを奪いたいが、遠くから見ていることしかできないリアム。ロンバルトから婚約破棄されるよう、リリーへの嫌がらせがマリアベルの仕業だと見せかけさせた。
婚約破棄されれば、次の婚約者に推してやると。
婚約破棄は前国王とトリージャ公爵に阻まれてしまったが、毒殺未遂が思いの外上手くいった。
マリアベルは汚名に塗れて亡くなり、トリージャの跡取りが毒の瓶をマリアベルの部屋に置いた証拠もある。まさか義姉を陥れるとはな。
この証拠がある限り、トリージャは私の意のままだが、たいして使い道はないかも知れんな。自分が特別だと思っているだけの凡人だからな。
トリージャ公爵を排除することができたのは僥倖だった。領地に逃げられてしまった事は痛いが、もう王都で盛り返す事はできまい。あのベルクでは、公爵家の権力を使いこなすことなどできんだろう。
王妃はすでに執務も公務も放棄している。
毎日、ドレスだの宝飾品だの散財しているようだ。財務官から苦情が上がっているが、王族の命令は絶対だ。そのことを徹底させるにはいいだろう。
ショーン殿下を忌み嫌い、離宮に追いやったらしいが、ろくな世話係などつけてはいないはずだ。
くくっ!この女も頭がおかしくなっているのだろう。ショーン殿下の抱えたぬいぐるみがマリアベル妃に見えるらしい。
王と王妃は来るべき私の御代の為の礎となってもらおう。愚かしければ愚かしいほど、私が王となる正当性が増すに違いない。
私こそが王には相応しいのだ!
私が偉大なる王として後世に名を残すのだ。
「ロンバルト陛下、一体どういう事でしょうか?」
また、何か思いついたというのか。
単純な王は操りやすいが、時々とんでもないことを言い出すものだ。
「この城はマリアベルの呪いがかかっている。」
「しかし、呪いなどと不確定なことで城を移すとなると、貴族やその他の民から不満が出るかと。」
「こんな城に残っている方が、不満が出るに決まっている!
大体お前の弟のリアムもマリアベルを恐れて登城しないではないか!」
「陛下、不肖の弟がご迷惑をおかけして申し訳ございません。
恐れながら、弟のリアムは病気療養中でございます。ご容赦ください。」
頭を少し下げると、イライラしたようにつま先で床をたたく。
『マリアベル妃の呪い』はずっと陛下を追い詰めている。ひとつひとつは大したことではない。鏡に影が映った、寒気を感じた、物が動いた、呻き声が聞こえた。子どもの悪戯のようなことばかりだが、長く続くと消耗するのだろう。
「いいか、新しい城の場所はまかせる。貴族院の承諾が下りるようにしておけ。」
私が何も言わないからだろう、イライラしながら陛下は部屋を出て行ってしまった。
元々直情的なところのある陛下だったが、ますます我慢が効かなくなって、執務にも公務にも身が入っていない。
マリアベルがいなくなってからは諫める者がいないのだから仕方がないだろう。最近は誰も何もいわないのをいいことに、昼間から女を侍らせ酒を煽っているようだ。
それにしても新しい城か……。
場所は南側の貧民街を全て取り壊してしまえは問題はないだろう。住民の抗議が起こるかも知れんが……。
まあいい。確かにこんな辛気臭い城にこだわる事はないだろう。新しい支配者には新しい城が必要だ。
今、リアムは公爵家の一室に閉じこもり、一日中ぶつぶつと呟いている。
「……兄さんに…言われたようにしたのに……僕は…言われたとおり………」
単純で愚かしい最愛の弟は私のためにとても良く動いてくれた。そう、言われたとおり。
リアムがマリアベル妃に惚れていなければこんなに上手くはいかなかっただろう。
ロンバルトからマリアベルを奪いたいが、遠くから見ていることしかできないリアム。ロンバルトから婚約破棄されるよう、リリーへの嫌がらせがマリアベルの仕業だと見せかけさせた。
婚約破棄されれば、次の婚約者に推してやると。
婚約破棄は前国王とトリージャ公爵に阻まれてしまったが、毒殺未遂が思いの外上手くいった。
マリアベルは汚名に塗れて亡くなり、トリージャの跡取りが毒の瓶をマリアベルの部屋に置いた証拠もある。まさか義姉を陥れるとはな。
この証拠がある限り、トリージャは私の意のままだが、たいして使い道はないかも知れんな。自分が特別だと思っているだけの凡人だからな。
トリージャ公爵を排除することができたのは僥倖だった。領地に逃げられてしまった事は痛いが、もう王都で盛り返す事はできまい。あのベルクでは、公爵家の権力を使いこなすことなどできんだろう。
王妃はすでに執務も公務も放棄している。
毎日、ドレスだの宝飾品だの散財しているようだ。財務官から苦情が上がっているが、王族の命令は絶対だ。そのことを徹底させるにはいいだろう。
ショーン殿下を忌み嫌い、離宮に追いやったらしいが、ろくな世話係などつけてはいないはずだ。
くくっ!この女も頭がおかしくなっているのだろう。ショーン殿下の抱えたぬいぐるみがマリアベル妃に見えるらしい。
王と王妃は来るべき私の御代の為の礎となってもらおう。愚かしければ愚かしいほど、私が王となる正当性が増すに違いない。
私こそが王には相応しいのだ!
私が偉大なる王として後世に名を残すのだ。
0
あなたにおすすめの小説
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる