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エピローグという名のゲームの強制力
しおりを挟む『呪われた城の嘆きの王妃』
150年前 暗愚王ロンバルトは美しい王妃を娶ったが、側妃との愛欲に塗れ、邪魔になった王妃を亡き者とした。
暗愚王ロンバルトはその後の悪政により、家臣共々、押し寄せた民衆に殺されたのである。
その後、乱れた国を憂いた王妃の嘆きが城を覆い、毎夜怨嗟の呻き声が聞こえるようになった。その声を聞いた者は呪われるといわれ、今では北の街道を通る者はいない。
**************
勇者としてこの城を、王妃の怨霊をなんとかして欲しいという依頼をしてきたのは、ここから南に下った街の長だ。ここで次のクエストに有利となる「チェンバーの灯」が手に入るらしい。
明け方近くまで廃墟となった城を探索したが、怨霊どころかネズミ一匹出なかった。
パーティーの仲間はまだ寝ているが、俺は念のため城の様子を見にきたのだが……
「あった~らしい、あっさがきた~!」
昼間の明るい日差しに照らされた城の中から、それは元気なラジオ体操の歌が聞こえる。ラジオ体操のうた⁈
城の中庭で体の透けた美女が元気にラジオ体操をしている!!
俺は出来るだけ音を立てないよう、急いで仲間を呼びに行った。
たのむ、戻るまで消えないでくれよ!
「ねえ、この曲ってあい●ょんのマ●ーゴールドよね。」
「あの幽霊ももしかして転生者?」
仲間と共に戻っても幽霊はそこにいた。
およそ幽霊には見えない彼女は楽しそうに歌を歌っているが、どう聞いても俺たちの知っている日本の歌だ。
「こんにちは。もしかして日本人の方ですか?」
「え、日本人!!そうです、そうです。うわあ!こんなところで日本の方に会えるなんて!!」
思わず海外旅行先で出会った日本人同士のような会話になったのは仕方ないだろう。なんせここは異世界だ!
俺たち5人は2年ほど前、渋谷からこの世界に召喚された。世界を滅ぼそうとするラーミアを倒すため、戦士、僧侶、魔法使い、盗賊の仲間と一緒に冒険する。まんま「ラーミアクエスト」略してラミクエの世界だ。
「あたし、高橋あかりです。なんでか幽霊してるけど。」
あかりと名乗った儚げな北欧美女は今までの城での出来事を話し始めた。なんでもこの城が放棄されてからずっと一人で話す人も居なかくて寂しかったと。しかもそれまでいた人たちもあかりと喋れる人は一人しかいなかったというので喋る喋る。
あかりが喋りまくっているうちに周りはだんだん暗くなってきたので、城の中庭で今日は泊まることにして焚き火に火をつけた。
「なんか俺たちの聞いた話と結構ずれがあるな。」
「そう?まあ、まずマリアベルが怨霊になる前にあかりに変わっちゃったからからね。」
「それでもこの国は滅びたんだよな。暗愚王ロンバルトって本当にあかりが知ってるロンバルトなのか?」
「とても悪逆の限りを尽くした悪党には聞こえんな。」
「暗愚王を誘惑した妖艶な側妃もイメージ違うんですけど~。クマのぬいぐるみから逃げ回ってたって。ぷふふ。」
俺たちは城に来る前に聞き込んだ話をあかりに聞かせてやった。150年も経っているから、伝承みたいな形になってるけどな。
暗愚王ロンバルトと悪女リリーは、自分たちは贅の限りを尽くして、民を虐げまくったために一揆を起こした民に、家臣共々惨殺されたらしい。その首はここから南に行った城跡のところに晒されたらしく、ロンバルトの首塚ってのがあったなぁ。
「ロンバルトは革命で死んだの?宰相に殺されたんじゃなくて?」
「あくまでも伝承だけどね。なに、宰相って?」
「え~。なんか「次の王は私だ!」とか「歴史に名を残すのは私だ!」とか痛い事を言ってる人がいたのよ。その人がクーデターとか起こしたのかな~って思っていたから。」
「うわ!痛いすぎ~」
「歴史に名をって!伝承に名前すら出てこないのかよ~」
「自分が特別だと思い込んでる凡人ほど痛い奴はいないよな~」
ボロクソだな。きっと宰相とやらは草葉の陰で悔しがっているだろう。
「ねえ、ショーンて名前は出てこない?」
あかりが不安そうな顔で聞いてきた。
「ああ、俺たちに依頼した街の長がいるって言っただろ。その人の友人がショーンて人の子孫らしい。」
空間魔法で『ショーンの日記』を取り出す。
「わぁ!なにそれ!魔法?」
「驚くのか?ガッツリ魔法と剣の世界だろう。」
「ああ、そういえば昔浄化の魔法を使うって人が来たことあったわ!なんかあったかい風が吹いたやつ。」
「お前、浄化魔法効かねーの?チートだな。」
『ショーンの日記』は重くてあかりは持てないそうだ。表紙も中もボロボロで内容はよくわからない。ただ、持ち主によるとショーンは城から離れた離宮にいた為、一揆に巻き込まれずに済んだらしい。そして、北の砦の兵士たちに助けられて国外に亡命したと聞いている。
「良かった~ショーン~」
話終わると、えぐえぐとあかりが泣き出した。ずっと心配だったらしい。
……それにしても、見た目はいいのに………残念美女…
「表紙の裏に書いてある文字はあかりと読めるらしいぜ。」
表紙を開いてあかりに見せる。
あかりがその小さな手で文字に触れる。
「ショーン!」
あかりは一瞬眼を見開いて、そしてゆっくりと眼を閉じたとたんに日記が輝きだす。あかりの目からは一筋の涙が……
日記がサラサラと光りながら消えていく。そして、一際強い光を放って完全に消えてしまった。
「……日記消えちゃったね。」
あかりが呟いた。
「「うわあ!!あかり!」」
「え、今ので成仏する流れじゃない、今の!」
「あたしもそう思ったんだけど……」
あかりが物凄く申し訳ない顔をしてるので、俺たちは顔を見合わせて大笑いしてしまった。
「あかりが消えないってことは、まだ役目があるってことじゃないのかなあ。」
「あ、俺も思った。あかりがこの世界で幽霊になったのは、マリアベルの魂が居なくなったからじゃないかな。」
「どういうこと?」
「つまり、この国が滅びる事はこの世界では必然だった。だけど、マリアベルはとっとと成仏(?)しちゃったからあかりを転移させて国を崩壊させた。そして、俺たちにアイテムを渡すのを待っていた。」
「なるほど!ゲームの強制力ってやつ。」
「いやいや、そんなの迷惑だよ~!
それにあたし、アイテムなんて持ってないし。」
「マジか!」
あかりの嘆きもわかるが、アイテムがないって………
がっかりした俺たちにあかりが謝る。
いや、あかりのせいじゃないよ……
「よし!今夜は騒いじゃうぞぉ~~」
気を取り直して、空間魔法でしまっていた食べ物を出して宴会だ!
あかりが羨ましそうに肉を見ている。幽霊は流石に肉は食えないよな。
「あ、そうだ」
俺は空間魔法でエレキギターを取り出した。異世界転移したとき持っていた物だ。
「ギター!すごい弾けるの?」
「俺たちバンド組んでたんだよ。」
「そうそう」
「アンプ無いからろくな音出ないけど。」
「あ、キーボードは電源ないから使えないや。」
ワイワイ言いながらアンプの無いギターとベースを弾くと、その辺の木の板を叩いたり、手拍子でなかなかに盛り上がる。
「あかりは歌好きだよな。」
「うん、ストレス発散は一人カラオケだったし!歌ってるとなんか、力が漲る気がするの!」
「結構上手だよね~ボーカル交代か~?」
「じゃあ次デュエットしようよ!」
一晩中歌って騒いだのはこの世界に来て初めてだった。
「ああ、電源さえあればなぁ。俺のキーボードにも歌わせてやれるのに!!」
空が白み始める頃、キーボードをなでながらボソリと言う。
「電源欲しいよね~」
「ねえ、あたしも触っていい?」
「どうぞどうぞ」
ソ~
「「「え!」」」
「すごーい!音なるじゃん。」
あかりが嬉しそうに猫ふんじゃったを弾いている。音が出てる?
つーかあかりの姿がどんどん薄くなっていくような…
「「あかり!!!」」
中庭に朝日が差し込む。
キーボードの前のあかりは消えてしまった。
「なに?どうなったの?」
「おい!周り見てみろよ」
今までは廃墟ではあったが、石造りの建物があった。しかし今は建物があったところには崩れかけた塀があるだけだ。もう、中庭とは言えないほど見通しが良くなっている。
「夢?だったのか?」
「いや、見てみろよ、キーボード。」
キーボードの電源ライトが光っている。
「……呪われたキーボード?」
「「「おいっ!!マジか!!!」」」
キーボードの電源ライトか嬉しそうに瞬いた。
どうやらゲームの強制力は、ここに働いたらしい。
呪いのチェンバロもとい、呪いのキーボードとなったあかりのおかげで次のクエストは楽勝だった。
伝承にあるマリアベルでは、キーボードに乗り移ってくれたかどうか……
勇者一行と呪いのキーボード。
そして伝説が始まる。
終
**************
最後がかなり駆け足になってしまいましたが、楽しんでいただけたでしょうか。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
読んでくださった皆様に、最大限の感謝を込めて。
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