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何度でも感極まります
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「これで私たちの真実の愛を邪魔するものは居なくなった。」
「ええ、私たち二人の真実の愛は永遠ですわ。ノーナシン殿下。」
「愛している。ヒロリアリア。」
「愛しております。ノーナシン殿下。」
抱き合う二人にスポットがあたって、幸せな二人の姿に、会場からは大きな拍手と歓声が溢れている。
「…フラン、貴女また泣いてるの?」
「いえ~っ何度見ても、ふうっ、か、感動します~」
「自分の書いた台本でしょう。」
「じっ、じ、自分の書いた台本が、こんな、こんな、ぐすっ素晴らしい舞台になるなんて~~」
舞台袖でハンカチを噛み締めながら、なんとか声を殺していたワタシに、いつのまにか隣に立ったラクシュエル様が新しいハンカチを渡してくださいました。
あ、いい匂い。
スーハースーハーしながら息を整えるのを、また笑われてしまった。
「…し、しかも、こんな沢山の方が見にきてくれるなんて!……すごいですね。」
ラクシュエル様が立ち上げたという割に、演劇部はあまり学園での認知度は高くないのよね。
でも今回は小講堂といえども満員御礼だ。
「ふふ、これもマクシミリアン様のおかげだわ。」
「なんで殿下は急に台本の台詞を言い出したんですかね?公開リハーサルも見にきてはいなかったと思うんですけど。」
しかも結構な長台詞だ。
演劇嫌いの第二王子殿下が観覧したということで、今回の公演は今までにない盛況になったのだが……。
「うふふ。聞いたところによると、マクシミリアン様の演説の原稿に台本が混じっていたのですって。」
聞いたところって、ラクシュエル様がやったとしか思えないんだけど……黙っときますよ。その笑顔が最高に怖いので。
「でも、普通気が付きますよね。あんな婚約破棄とか言っている台本。」
「あら、あの方の特技なのよ。一度見た文章をそのまま覚えるというの。だから演説の原稿は直前に一回見ただけなんじゃないかしら。
そのまま丸ごと暗記するけど、内容を理解していないことが難点と言えば難点よね。」
「覚えるだけですか?」
「そう、覚えてるだけ。」
確かに理解して覚えていれば、第二王子殿下の成績はもっと良いはず……あわわっ!黙っとこう。
「まぁ、婚約破棄はしようとはしていたみたいね。だから余計に気がつかなかったのでしょうけど。」
「え?」
小さな呟きはカーテンコールにこたえていた役者たちが戻ってきたことでたち消えた。
「お疲れ様、とても良かったわ。」
やり切った笑顔でラクシュエル様の言葉に応える先輩や同級生。ワタシも慌てて笑顔で迎える。
「…ぷっ。ひどい顔だな。」
さっきまで泣いていたので、瞼と鼻がヒリヒリしてるからきっと真っ赤になってるんだと鏡を見なくてもわかる。
初日にワタシの顔を見た先輩たちは、顔を引き攣らせて声をかけてくれたけど、流石に今日の最終日はみんな笑顔でスルーしてくれる、けど…。
「リグリー。お疲れ様。」
「3回目なんだから、そろそろ慣れてもいいんじゃないか?」
「3回目なんだから、そろそろ見ないふりをするのが紳士じゃないの?」
「見ないふりをしたら、フランはそのまま人前に出そうだからな。」
「そ、んなことしないわよ!」
公演後で興奮しているのか、リグリーはいつもより口数のが多いわね。
いつも無口でボソッと喋るリグリーは、舞台に立つと本当に別人になる。ラクシュエル様の言う『ガ○スの仮面』て言うのはよくわからないけど、今年の春に一緒に入部したのに、重要な役をもう当てられて、看板役者になっているのだからすごいと思う。ちなみに今回の役は、ヒロインの幼馴染でヒロインに恋をしながら二人を結びつける重要な役だ。
「あはは!フラン。今日もすげー顔になってるな。」
「もう、ダイアンもやめてよ!わかってるから!!」
我が演劇部の2枚看板役者のリグリー・トエルともう一人の看板役者ダイアン・ロッカバルがおもしろそうに寄ってきたので、慌てて持っていたハンカチで鼻を隠す。
「ダイアンもお疲れ様。素敵な王子様だったわ。」
「ありがとうございます。姫。」
大袈裟な身振りで、ラクシュエル様の手の甲にキスする姿が、本当の王子様みたいにみえる。
この国の基準からするとちょっと細身だけど、金髪に碧の目、甘いハンサムの彼が舞台に登場すると、女性たちの黄色い声援がすごいのだ。
「ま、舞台も大成功ってことで、腹減ったぁ!!」
見た目は王子様だけど、こんな喋り方ってのはどうなのかな。
そんなギャップも好き、って感じ?
いやいや、この際身分を隠した王子様ってところかな。悪の宰相に王位を奪われた悲劇の王子が、身分を隠して正統な王位復権を目指す!そして影に日向に王子を助けるヒロインとの甘い…恋。
「おい、フラン。またボーッとして腹減ってんのか?ラクシュ姫が差し入れしてくれてっから、そのひでー顔洗ってこい。」
……ない。
「これで私たちの真実の愛を邪魔するものは居なくなった。」
「ええ、私たち二人の真実の愛は永遠ですわ。ノーナシン殿下。」
「愛している。ヒロリアリア。」
「愛しております。ノーナシン殿下。」
抱き合う二人にスポットがあたって、幸せな二人の姿に、会場からは大きな拍手と歓声が溢れている。
「…フラン、貴女また泣いてるの?」
「いえ~っ何度見ても、ふうっ、か、感動します~」
「自分の書いた台本でしょう。」
「じっ、じ、自分の書いた台本が、こんな、こんな、ぐすっ素晴らしい舞台になるなんて~~」
舞台袖でハンカチを噛み締めながら、なんとか声を殺していたワタシに、いつのまにか隣に立ったラクシュエル様が新しいハンカチを渡してくださいました。
あ、いい匂い。
スーハースーハーしながら息を整えるのを、また笑われてしまった。
「…し、しかも、こんな沢山の方が見にきてくれるなんて!……すごいですね。」
ラクシュエル様が立ち上げたという割に、演劇部はあまり学園での認知度は高くないのよね。
でも今回は小講堂といえども満員御礼だ。
「ふふ、これもマクシミリアン様のおかげだわ。」
「なんで殿下は急に台本の台詞を言い出したんですかね?公開リハーサルも見にきてはいなかったと思うんですけど。」
しかも結構な長台詞だ。
演劇嫌いの第二王子殿下が観覧したということで、今回の公演は今までにない盛況になったのだが……。
「うふふ。聞いたところによると、マクシミリアン様の演説の原稿に台本が混じっていたのですって。」
聞いたところって、ラクシュエル様がやったとしか思えないんだけど……黙っときますよ。その笑顔が最高に怖いので。
「でも、普通気が付きますよね。あんな婚約破棄とか言っている台本。」
「あら、あの方の特技なのよ。一度見た文章をそのまま覚えるというの。だから演説の原稿は直前に一回見ただけなんじゃないかしら。
そのまま丸ごと暗記するけど、内容を理解していないことが難点と言えば難点よね。」
「覚えるだけですか?」
「そう、覚えてるだけ。」
確かに理解して覚えていれば、第二王子殿下の成績はもっと良いはず……あわわっ!黙っとこう。
「まぁ、婚約破棄はしようとはしていたみたいね。だから余計に気がつかなかったのでしょうけど。」
「え?」
小さな呟きはカーテンコールにこたえていた役者たちが戻ってきたことでたち消えた。
「お疲れ様、とても良かったわ。」
やり切った笑顔でラクシュエル様の言葉に応える先輩や同級生。ワタシも慌てて笑顔で迎える。
「…ぷっ。ひどい顔だな。」
さっきまで泣いていたので、瞼と鼻がヒリヒリしてるからきっと真っ赤になってるんだと鏡を見なくてもわかる。
初日にワタシの顔を見た先輩たちは、顔を引き攣らせて声をかけてくれたけど、流石に今日の最終日はみんな笑顔でスルーしてくれる、けど…。
「リグリー。お疲れ様。」
「3回目なんだから、そろそろ慣れてもいいんじゃないか?」
「3回目なんだから、そろそろ見ないふりをするのが紳士じゃないの?」
「見ないふりをしたら、フランはそのまま人前に出そうだからな。」
「そ、んなことしないわよ!」
公演後で興奮しているのか、リグリーはいつもより口数のが多いわね。
いつも無口でボソッと喋るリグリーは、舞台に立つと本当に別人になる。ラクシュエル様の言う『ガ○スの仮面』て言うのはよくわからないけど、今年の春に一緒に入部したのに、重要な役をもう当てられて、看板役者になっているのだからすごいと思う。ちなみに今回の役は、ヒロインの幼馴染でヒロインに恋をしながら二人を結びつける重要な役だ。
「あはは!フラン。今日もすげー顔になってるな。」
「もう、ダイアンもやめてよ!わかってるから!!」
我が演劇部の2枚看板役者のリグリー・トエルともう一人の看板役者ダイアン・ロッカバルがおもしろそうに寄ってきたので、慌てて持っていたハンカチで鼻を隠す。
「ダイアンもお疲れ様。素敵な王子様だったわ。」
「ありがとうございます。姫。」
大袈裟な身振りで、ラクシュエル様の手の甲にキスする姿が、本当の王子様みたいにみえる。
この国の基準からするとちょっと細身だけど、金髪に碧の目、甘いハンサムの彼が舞台に登場すると、女性たちの黄色い声援がすごいのだ。
「ま、舞台も大成功ってことで、腹減ったぁ!!」
見た目は王子様だけど、こんな喋り方ってのはどうなのかな。
そんなギャップも好き、って感じ?
いやいや、この際身分を隠した王子様ってところかな。悪の宰相に王位を奪われた悲劇の王子が、身分を隠して正統な王位復権を目指す!そして影に日向に王子を助けるヒロインとの甘い…恋。
「おい、フラン。またボーッとして腹減ってんのか?ラクシュ姫が差し入れしてくれてっから、そのひでー顔洗ってこい。」
……ない。
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