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4章 東支部攻略戦
旅は道連れ
しおりを挟むソボイ村には2日滞在した。これから先の旅路で消費する食料を買い込み、武具屋や雑貨屋を覗いたりしながら、東支部への進路を改めてゴルザさんと話し合った。
ここから東支部へは、野営をしながら進んでおよそ一週間。それぐらい進むと、東支部の数ある砦が見えてくるらしい。その辺りになると、勇者が現れたことを知っている東支部の魔物たちともかち合うそうだ。今はまだ僕たちが東支部に向かっていることを魔物たちに知られてはないそうだが、もしも僕たちの動向が魔物たちに知れれば、本格的に対勇者の体制を取られてしまい、攻略が難しくなるらしい。
真っ向勝負になると、物量で劣るこちらが圧倒的に不利になる。それを避ける為、東支部への攻撃は短期決戦で行うべきだというのが、ゴルザさんからの提案だった。僕もそれに賛成した。
「人数で不利をとる以上、こういった手数を増やせるアイテムは必須だと思いまして」
ゴルザさんが見せてくれたのは、手のひらより少し小さいくらいの玉だった。玉にはラベルのようなものが貼られていて、氷を模したマークが描かれている。このアイテムには見覚えがあった。
「魔術道具、でしたっけ」
「おや、ご存知でしたか。まぁ、戦いに縁のない人でもそれなりに噂などで聞いたことはあるのでしょうか。仰る通り、これは相手に向かって投げつけることで魔術を発動させられる、使い切りの魔術道具です。これは低級の氷の魔術が込められたものですね」
ゴルザさんは他にも色んな魔術の込められた玉を取り出した。炎や雷、土や風など様々な属性の魔術玉が並べられた。
「雑貨屋で買い揃えたので、良かったらいくつかどうぞ」
「ありがとうございます」
どれも手頃なサイズ感で、懐にしまっていざという時に使えそうだ。手に持ってみて握り込んでみても、手にフィットしてとても扱いやすく思えた。
僕は、魔物が本能的に怯える炎の魔力玉と、目眩しに使えると説明された雷の魔力玉を選んだ。ゴルザさんもそれらなら効果が分かりやすくて使いやすいだろうと賛成してくれた。残りの魔力玉はゴルザさんが懐へとしまった。
「咄嗟のピンチを切り抜けたり、遠距離からの攻撃がしたい時にも使えます。ただ、これとは別に、ナギルさん自身も魔術を使えるようになっておいた方が良いと、私は思います」
「僕が、ですか?」
「えぇ。ご存知の通り、聖剣ヴァイルセイバーには大魔術師ヴァイルが刻み込んだ光の魔術が込められています。実はそれ以外にも、様々な種類の魔術が込められているのです」
「そうなんですか?でも、魔物と戦っている時にそんな感覚はありませんでしたけど」
「光の魔術は、ヴァイルセイバーの斬撃そのものに付与されます。魔物により効果的にダメージを与える為です。それとは別に、斬撃には乗らずに、使い手である勇者自身が自由に使えるように込められた魔術もあるんです。正直、どこまでそれらの魔術を扱えるようになるかは、本人の適性にもよるんですけどね」
「つまり、光の魔術を宿した剣で攻撃しながら、魔術師のように魔術での攻撃もできるかもしれない、と?」
「回復や防御、力を倍増させる魔術も込められていると聞きます。あくまで勇者としての適性は光の魔術への適性と同一というだけで、それ以外の魔術への適性がどうかは分からない、というわけです」
「つまり、あの、その内色んな魔術が使えるかもしれない、ってことですか?」
「まぁ、大まかにそう思ってもらって構いません。東支部へ向かう道中で、魔術が引き出せるかの簡単な特訓もしましょう。もし今すぐに使える魔術があれば、戦いを有利に進められます。基本的に魔物たちは魔術が使えませんから、大きなアドバンテージになるはずです」
「分かりました、頑張ります!」
次の日の朝、ソボイ村を発った。
本当に良い村だった。食べ物は美味しかったし、宿屋のベッドは野営で寝床代わりにしていた藁などとは比べ物にならなかった。もし、東支部での戦いを無事生き抜けたら、是非ともまた立ち寄りたかった。
「宿への忘れ物はありませんね」
「はい、大丈夫です」
買ったものを詰め込んだ鞄は持っているし、聖剣もちゃんと腰に差してある。元々忘れっぽい気質ではないが、念のためきちんと確認した。
「では、行きましょうか」
ゴルザさんに並んで歩き出す。すると、あと少しで村を出ようというところで、目の前に一つの人影が飛び込んできた。
伸びるがままにボサボサになっていた髪は整えられ、随分と着続けていたであろうよれよれだった衣服はピシッと伸ばされた服に変わり、両手足に腕当てと脛当て、腰には一振りの剣を携えていたその、見覚えがあるようでまるで違う人影の正体は。
「俺も連れて行ってくれ」
「ラグラベさん……!」
「俺も戦いたいんだ。お前の兄貴の無念を晴らす為、俺と後悔を振り払う為。それと、お前を死なせない為に。頼む」
ラグラべさんはそう言うと僕たちに向かって頭を下げた。ゴルザさんの方を見ると、微笑みながら僕に頷きかけてくれた。ならば、答えは一つだ。
「もちろんです、一緒に行きましょう!」
「……、ありがとう!」
頼もしい仲間ができて、本当に嬉しかった。
東支部へ進む足が、心なしか軽く感じた。
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