魔王軍中間管理職ですが、2年連続で勇者が来るのは聞いてません

鹿樋歩

文字の大きさ
24 / 30
4章 東支部攻略戦

旅は道連れ

しおりを挟む


 ソボイ村には2日滞在した。これから先の旅路で消費する食料を買い込み、武具屋や雑貨屋を覗いたりしながら、東支部への進路を改めてゴルザさんと話し合った。

 ここから東支部へは、野営をしながら進んでおよそ一週間。それぐらい進むと、東支部の数ある砦が見えてくるらしい。その辺りになると、勇者が現れたことを知っている東支部の魔物たちともかち合うそうだ。今はまだ僕たちが東支部に向かっていることを魔物たちに知られてはないそうだが、もしも僕たちの動向が魔物たちに知れれば、本格的に対勇者の体制を取られてしまい、攻略が難しくなるらしい。

 真っ向勝負になると、物量で劣るこちらが圧倒的に不利になる。それを避ける為、東支部への攻撃は短期決戦で行うべきだというのが、ゴルザさんからの提案だった。僕もそれに賛成した。

「人数で不利をとる以上、こういった手数を増やせるアイテムは必須だと思いまして」

 ゴルザさんが見せてくれたのは、手のひらより少し小さいくらいの玉だった。玉にはラベルのようなものが貼られていて、氷を模したマークが描かれている。このアイテムには見覚えがあった。

「魔術道具、でしたっけ」

「おや、ご存知でしたか。まぁ、戦いに縁のない人でもそれなりに噂などで聞いたことはあるのでしょうか。仰る通り、これは相手に向かって投げつけることで魔術を発動させられる、使い切りの魔術道具です。これは低級の氷の魔術が込められたものですね」

 ゴルザさんは他にも色んな魔術の込められた玉を取り出した。炎や雷、土や風など様々な属性の魔術玉が並べられた。

「雑貨屋で買い揃えたので、良かったらいくつかどうぞ」

「ありがとうございます」

 どれも手頃なサイズ感で、懐にしまっていざという時に使えそうだ。手に持ってみて握り込んでみても、手にフィットしてとても扱いやすく思えた。

 僕は、魔物が本能的に怯える炎の魔力玉と、目眩しに使えると説明された雷の魔力玉を選んだ。ゴルザさんもそれらなら効果が分かりやすくて使いやすいだろうと賛成してくれた。残りの魔力玉はゴルザさんが懐へとしまった。

「咄嗟のピンチを切り抜けたり、遠距離からの攻撃がしたい時にも使えます。ただ、これとは別に、ナギルさん自身も魔術を使えるようになっておいた方が良いと、私は思います」

「僕が、ですか?」

「えぇ。ご存知の通り、聖剣ヴァイルセイバーには大魔術師ヴァイルが刻み込んだ光の魔術が込められています。実はそれ以外にも、様々な種類の魔術が込められているのです」

「そうなんですか?でも、魔物と戦っている時にそんな感覚はありませんでしたけど」

「光の魔術は、ヴァイルセイバーの斬撃そのものに付与されます。魔物により効果的にダメージを与える為です。それとは別に、斬撃には乗らずに、使い手である勇者自身が自由に使えるように込められた魔術もあるんです。正直、どこまでそれらの魔術を扱えるようになるかは、本人の適性にもよるんですけどね」

「つまり、光の魔術を宿した剣で攻撃しながら、魔術師のように魔術での攻撃もできるかもしれない、と?」

「回復や防御、力を倍増させる魔術も込められていると聞きます。あくまで勇者としての適性は光の魔術への適性と同一というだけで、それ以外の魔術への適性がどうかは分からない、というわけです」

「つまり、あの、その内色んな魔術が使えるかもしれない、ってことですか?」

「まぁ、大まかにそう思ってもらって構いません。東支部へ向かう道中で、魔術が引き出せるかの簡単な特訓もしましょう。もし今すぐに使える魔術があれば、戦いを有利に進められます。基本的に魔物たちは魔術が使えませんから、大きなアドバンテージになるはずです」

「分かりました、頑張ります!」



 次の日の朝、ソボイ村をった。

 本当に良い村だった。食べ物は美味しかったし、宿屋のベッドは野営で寝床代わりにしていた藁などとは比べ物にならなかった。もし、東支部での戦いを無事生き抜けたら、是非ともまた立ち寄りたかった。

「宿への忘れ物はありませんね」

「はい、大丈夫です」

 買ったものを詰め込んだ鞄は持っているし、聖剣もちゃんと腰に差してある。元々忘れっぽい気質ではないが、念のためきちんと確認した。

「では、行きましょうか」

 ゴルザさんに並んで歩き出す。すると、あと少しで村を出ようというところで、目の前に一つの人影が飛び込んできた。

 伸びるがままにボサボサになっていた髪は整えられ、随分と着続けていたであろうよれよれだった衣服はピシッと伸ばされた服に変わり、両手足に腕当てと脛当て、腰には一振りの剣を携えていたその、見覚えがあるようでまるで違う人影の正体は。 

「俺も連れて行ってくれ」

「ラグラベさん……!」

「俺も戦いたいんだ。お前の兄貴の無念を晴らす為、俺と後悔を振り払う為。それと、お前を死なせない為に。頼む」

 ラグラべさんはそう言うと僕たちに向かって頭を下げた。ゴルザさんの方を見ると、微笑みながら僕に頷きかけてくれた。ならば、答えは一つだ。

「もちろんです、一緒に行きましょう!」

「……、ありがとう!」 

 頼もしい仲間ができて、本当に嬉しかった。
 東支部へ進む足が、心なしか軽く感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...