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藕断糸連哥和弟(切っても切れぬ兄弟の絆)
055:黄霧四塞(二)
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「案ずることはない。恐らくは尾の先のほうであろう」
声の人物は小黄だった。
小黄を抱えた凰黎の目にも微かに戸惑いの表情が見て取れる。一方の小黄は妙に落ち着いた表情で、先ほどの声音も普段の子供らしさは一切感じられなかった。
「小黄? 尻尾ってなんだ?」
驚いて煬鳳が聞き返すと、今度は小黄がきょとんとした顔になる。
「煬大哥? どうしたの?」
「いま、小黄は尻尾って言わなかったか?」
小黄は暫く唸って考えたあと、首を振った。
(どういうことなんだ?)
いまのは彼の意志で発した言葉ではなかったのだろうか?
聞きたいが、本人に覚えがない以上問い詰めるわけにもいかない。凰黎も同じ考えだったようで「多分地震で驚いていたから、風の音でしょう」と言ってその場を収めた。
(やっぱり小黄の身元は調べたほうがよさそうだな……)
もちろんはなから調べる気ではあったが、彼にもなにか秘密があるようだ。それを知るためにもやはり小黄の素性を突き止めなければならないと煬鳳は思った。
地震も落ち着いたことで、再び玄烏門は騒がしくなる。
食事を終えた煬鳳たちを待っていたのは弟子たちの熱烈なもてなしだった。
「小黄坊ちゃん、実はさっきちょいと街まで行ってお菓子を買ってきたんですよ」
人相は悪いが陽気な彼らは凰黎や煬鳳たちの世話をあれやこれや焼いてくれたり、小黄にお菓子を持ってきてくれた。最初は怯えていた小黄だったが、意外にも適応能力が高い。本当に意外なことだが彼らの献身的な対応によって、じきに強面の男たちに囲まれても笑顔を見せるようになった。
「煬様はこの子をどうするおつもりなんで?」
「まだ考えてないよ。小黄の身元も調べてやらないといけないしさ」
「じゃあ、暫くのあいだはうちで預かるんですね!」
「そうなるな」
野太い男たちの歓声が沸き起こる。
およそ子供が訪れることなど少ない玄烏門では、小さな子供がやってくるなどとても珍しいことだ。しかも、一日だけではなく、煬鳳たちが外出している間ずっとなのだから彼らの喜びようといったらない。
「さあ坊ちゃん、あっし達と遊びましょう」
さっそく小黄が玄烏門に滞在すると分かった途端、男たちが小黄のことを取り囲んでわいわいやっている。
「おいおい、小黄は長旅で疲れてるんだぞ。少し休ませてやれ!」
見かねた煬鳳が門弟たちを一喝すると、蜘蛛の子を散らすようにみな消えていった。
「……ったく、浮かれすぎだっつうの」
呆れながら煬鳳がぼやくと、凰黎がくすくすと笑っている。煬鳳は夜真の耳を引っ張ると小声で囁く。
「夜真。俺がいないあいだ、小黄のこと頼んだぞ」
「任せてよ、煬兄」
「それからもう一つ。小黄は記憶がないんだ。名乗った名前も本人の名前か怪しい限りでさ」
「え!? こんな小さいのに!?」
煬鳳は頷く。
「黒炎山の中腹でたった一人、泣いていたんだ。……念のため、手が空いてる奴らに小黄のこと調べさせてやってくれ。家族がいるかもしれないからさ」
「分かった。こっちは任せてといて」
夜真が頷くと、善瀧が一歩進み出た。「凰様……」と言いかけたところで、凰黎が善瀧の肩にそっと触れる。
「善瀧。貴方も夜真と共に頼みますよ」
「はっ、はい!」
いつ言い出そうかと先ほどから躊躇っていた善瀧は勢いよく凰黎に頷いた。
爽やかな若者二人、いつ何時も仲睦まじくお似合いだ。
* * *
「ふう。騒がしい奴らだけど、あいつらが小黄の世話を、喜んでやってくれそうで安心したよ」
久しぶりの玄烏門の自室で、煬鳳は寝台の上にごろりと寝転がる。小黄は弟子たちと共に寝ることになった。みな随分小黄のことを歓迎してくれたので、小黄も旅のときよりも沢山笑顔を見せるようになっていた。
「黒炎山で小黄を見つけてからというもの、貴方は小黄にかかりっきりでしたものね」
凰黎は煬鳳の隣に腰を下ろし、寝転がる煬鳳を見下ろす。
「それでも俺なんかより凰黎のほうがずっと面倒を見てたよ。だって、俺は子供に対する言葉の加減も分からないし、つい言い方がきつくなるからさ。凰黎がいてくれて本当に良かった」
これは本当のことで、凰黎が小黄のことを随分よく見ていてくれたお陰で小黄の小さな変化にもたびたび気づくことができた。
記憶全てを失っている少年――といってもまだ五歳か六歳程度の子供は、子供らしいところもあるがとても臆病で普通の子供よりも敏感だ。些細な人の心の変化や言葉の意味合いに怯え、ともすると心を閉ざしてしまいそうになる。
煬鳳と凰黎については旅を続けるうちに警戒することは少なくなっていったが、通りすがりの街や村で会う、大人たちの何気ない言動にも酷く怯えていることが多かった。
「彩鉱門からの帰りは、行きと同じ道を歩きましたよね。道すがら小黄と初めて出会った場所の周囲も確認しましたが、あの周辺には争った形跡も馬車が通った形跡もありませんでした」
「それって、どういうことだ? 小黄が嘘をついていると?」
「いいえ、彼は嘘などついていないと思います」
語気強く言った煬鳳を宥めるように凰黎の手が頬に触れた。柔らかくて心地よい凰黎の手に触れられて煬鳳の鼓動は一瞬跳ねあがる。
「小黄は一人だと言いましたが、大人と一緒だったとも誰かに襲われたとも言っていません。記憶もないのですから言おうにも難しいことでしょうけれど」
「た、確かに。あいつが良家の息子で道中襲われたかもしれない、ってのは俺たちが勝手に推測したことなんだよな」
「そうです」
凰黎は頷く。
「じゃあ本当に小黄については手掛かりが殆どなし、ってことなんだな」
「そうなりますね。ただ、子供が行方不明ならいずれ身元は分かることでしょう。それこそ、家族の誰かが生きていて且つ小黄を取り戻したいと考えているならば、ですが」
「……」
その言動だと『捨てられた』という選択肢も入ってきてしまう。それはそれでなんともいえず、煬鳳は複雑な気持ちになった。
「小黄のことも心配ですが、煬鳳。貴方のことも心配ですよ」
「俺のことなら心配することないって。五行盟への報告は悩ましいけど、恒凰宮に万晶鉱の剣があるってことも分かったろ?」
「ええ。ですが……それでも心配です。……いけませんか?」
凰黎の手のひらが煬鳳の頬に触れる。
その瞬間に煬鳳は、小黄を連れて黒炎山から玄烏門へと戻る道すがら、凰黎と殆ど触れ合っていなかったことを急激に思い出してしまった。小黄と同じ部屋で寝泊まりする手前、静かに寝るしかなかったし、普段のときも小黄のことを気に掛けるので手一杯で二人ともそれどころではなかったのだ。
「い、いけないなんてことないさ。嬉しいよ」
そんな考えを悟られぬようにと焦りながら、煬鳳は凰黎から目線を逸らす。
「煬鳳?」
急に煬鳳の口数が減ったからか、凰黎は怪訝な表情で顔を寄せる。普通に話しているときは全く気にならないのだが、意図的にやっているのかそうでないのか、凰黎の一挙手一投足はどれをとっても煬鳳の鼓動を高鳴らせた。
「な、何でもないよ」
慌てて上ずった声で煬鳳は答えると、くるりと凰黎に背を向ける。次の瞬間、煬鳳の首筋に凰黎の髪の毛がひと房流れ落ち、思わず煬鳳は声をあげた。
「本当に?」
次いで聞こえる凰黎の声。息がかかるほどの近さを感じて煬鳳は堪らなくなって、背のほうへ転がると手を伸ばし凰黎を抱き寄せる。その行為に驚きこそしなかったが、踏ん張ることのできる態勢でもなかったため、凰黎はそのまま倒れ込み煬鳳の上に覆いかぶさるような形になった。
「煬鳳」
凰黎の腕が煬鳳の背に回される。煬鳳も凰黎の背をしっかりと抱きしめた。煬鳳は抱きしめられたまま、凰黎の耳元で告げる。
「……ごめんさっきのは嘘。ほんとは凰黎と二人っきりだって気づいてから、もうどうしようもなく抑えられなかったんだ」
小屋で二人きりのときは何一つ気兼ねせず好きに言葉を並べ立てていたのに、外に出た途端なにも言えなくなってしまった。先ほどまでは随分と躊躇っていたが、ひとたび口に出すと、存外に言葉が止まらない。
「出発は数日遅らせるつもりだから。だから……今夜は寝ないで。お願いだ」
観念した煬鳳の素直な言葉に凰黎は微笑む。その笑顔は眩しくて、薄暗闇の中でもはっきりと煬鳳には見える。
ほんの一瞬だけ軽く触れる程度に口付けられ、もっと欲しいと煬鳳のほうから凰黎に縋りつく。いままでずっと慣れない場所ばかりにいたせいですっかり忘れていたのだが、抑えていたぶん欲求のほうが勝った。
「凰黎、好きだ」
確かめるように口にすると、凰黎の口元から白い歯が微かに覗く。
「私も、貴方のことを愛していますよ」
凰黎は煬鳳を抱き上げ膝の上に載せる。こうしてゆっくりと二人きり、互いの表情を確かめ合うのも本当に久しぶりのことだった。
煬鳳は万感の思いを込めて凰黎を抱きしめる。
「凰黎――」
そのあとに続けられた言葉は本当にささやかで、煬鳳と凰黎の二人だけにしか聞こえなかった。
声の人物は小黄だった。
小黄を抱えた凰黎の目にも微かに戸惑いの表情が見て取れる。一方の小黄は妙に落ち着いた表情で、先ほどの声音も普段の子供らしさは一切感じられなかった。
「小黄? 尻尾ってなんだ?」
驚いて煬鳳が聞き返すと、今度は小黄がきょとんとした顔になる。
「煬大哥? どうしたの?」
「いま、小黄は尻尾って言わなかったか?」
小黄は暫く唸って考えたあと、首を振った。
(どういうことなんだ?)
いまのは彼の意志で発した言葉ではなかったのだろうか?
聞きたいが、本人に覚えがない以上問い詰めるわけにもいかない。凰黎も同じ考えだったようで「多分地震で驚いていたから、風の音でしょう」と言ってその場を収めた。
(やっぱり小黄の身元は調べたほうがよさそうだな……)
もちろんはなから調べる気ではあったが、彼にもなにか秘密があるようだ。それを知るためにもやはり小黄の素性を突き止めなければならないと煬鳳は思った。
地震も落ち着いたことで、再び玄烏門は騒がしくなる。
食事を終えた煬鳳たちを待っていたのは弟子たちの熱烈なもてなしだった。
「小黄坊ちゃん、実はさっきちょいと街まで行ってお菓子を買ってきたんですよ」
人相は悪いが陽気な彼らは凰黎や煬鳳たちの世話をあれやこれや焼いてくれたり、小黄にお菓子を持ってきてくれた。最初は怯えていた小黄だったが、意外にも適応能力が高い。本当に意外なことだが彼らの献身的な対応によって、じきに強面の男たちに囲まれても笑顔を見せるようになった。
「煬様はこの子をどうするおつもりなんで?」
「まだ考えてないよ。小黄の身元も調べてやらないといけないしさ」
「じゃあ、暫くのあいだはうちで預かるんですね!」
「そうなるな」
野太い男たちの歓声が沸き起こる。
およそ子供が訪れることなど少ない玄烏門では、小さな子供がやってくるなどとても珍しいことだ。しかも、一日だけではなく、煬鳳たちが外出している間ずっとなのだから彼らの喜びようといったらない。
「さあ坊ちゃん、あっし達と遊びましょう」
さっそく小黄が玄烏門に滞在すると分かった途端、男たちが小黄のことを取り囲んでわいわいやっている。
「おいおい、小黄は長旅で疲れてるんだぞ。少し休ませてやれ!」
見かねた煬鳳が門弟たちを一喝すると、蜘蛛の子を散らすようにみな消えていった。
「……ったく、浮かれすぎだっつうの」
呆れながら煬鳳がぼやくと、凰黎がくすくすと笑っている。煬鳳は夜真の耳を引っ張ると小声で囁く。
「夜真。俺がいないあいだ、小黄のこと頼んだぞ」
「任せてよ、煬兄」
「それからもう一つ。小黄は記憶がないんだ。名乗った名前も本人の名前か怪しい限りでさ」
「え!? こんな小さいのに!?」
煬鳳は頷く。
「黒炎山の中腹でたった一人、泣いていたんだ。……念のため、手が空いてる奴らに小黄のこと調べさせてやってくれ。家族がいるかもしれないからさ」
「分かった。こっちは任せてといて」
夜真が頷くと、善瀧が一歩進み出た。「凰様……」と言いかけたところで、凰黎が善瀧の肩にそっと触れる。
「善瀧。貴方も夜真と共に頼みますよ」
「はっ、はい!」
いつ言い出そうかと先ほどから躊躇っていた善瀧は勢いよく凰黎に頷いた。
爽やかな若者二人、いつ何時も仲睦まじくお似合いだ。
* * *
「ふう。騒がしい奴らだけど、あいつらが小黄の世話を、喜んでやってくれそうで安心したよ」
久しぶりの玄烏門の自室で、煬鳳は寝台の上にごろりと寝転がる。小黄は弟子たちと共に寝ることになった。みな随分小黄のことを歓迎してくれたので、小黄も旅のときよりも沢山笑顔を見せるようになっていた。
「黒炎山で小黄を見つけてからというもの、貴方は小黄にかかりっきりでしたものね」
凰黎は煬鳳の隣に腰を下ろし、寝転がる煬鳳を見下ろす。
「それでも俺なんかより凰黎のほうがずっと面倒を見てたよ。だって、俺は子供に対する言葉の加減も分からないし、つい言い方がきつくなるからさ。凰黎がいてくれて本当に良かった」
これは本当のことで、凰黎が小黄のことを随分よく見ていてくれたお陰で小黄の小さな変化にもたびたび気づくことができた。
記憶全てを失っている少年――といってもまだ五歳か六歳程度の子供は、子供らしいところもあるがとても臆病で普通の子供よりも敏感だ。些細な人の心の変化や言葉の意味合いに怯え、ともすると心を閉ざしてしまいそうになる。
煬鳳と凰黎については旅を続けるうちに警戒することは少なくなっていったが、通りすがりの街や村で会う、大人たちの何気ない言動にも酷く怯えていることが多かった。
「彩鉱門からの帰りは、行きと同じ道を歩きましたよね。道すがら小黄と初めて出会った場所の周囲も確認しましたが、あの周辺には争った形跡も馬車が通った形跡もありませんでした」
「それって、どういうことだ? 小黄が嘘をついていると?」
「いいえ、彼は嘘などついていないと思います」
語気強く言った煬鳳を宥めるように凰黎の手が頬に触れた。柔らかくて心地よい凰黎の手に触れられて煬鳳の鼓動は一瞬跳ねあがる。
「小黄は一人だと言いましたが、大人と一緒だったとも誰かに襲われたとも言っていません。記憶もないのですから言おうにも難しいことでしょうけれど」
「た、確かに。あいつが良家の息子で道中襲われたかもしれない、ってのは俺たちが勝手に推測したことなんだよな」
「そうです」
凰黎は頷く。
「じゃあ本当に小黄については手掛かりが殆どなし、ってことなんだな」
「そうなりますね。ただ、子供が行方不明ならいずれ身元は分かることでしょう。それこそ、家族の誰かが生きていて且つ小黄を取り戻したいと考えているならば、ですが」
「……」
その言動だと『捨てられた』という選択肢も入ってきてしまう。それはそれでなんともいえず、煬鳳は複雑な気持ちになった。
「小黄のことも心配ですが、煬鳳。貴方のことも心配ですよ」
「俺のことなら心配することないって。五行盟への報告は悩ましいけど、恒凰宮に万晶鉱の剣があるってことも分かったろ?」
「ええ。ですが……それでも心配です。……いけませんか?」
凰黎の手のひらが煬鳳の頬に触れる。
その瞬間に煬鳳は、小黄を連れて黒炎山から玄烏門へと戻る道すがら、凰黎と殆ど触れ合っていなかったことを急激に思い出してしまった。小黄と同じ部屋で寝泊まりする手前、静かに寝るしかなかったし、普段のときも小黄のことを気に掛けるので手一杯で二人ともそれどころではなかったのだ。
「い、いけないなんてことないさ。嬉しいよ」
そんな考えを悟られぬようにと焦りながら、煬鳳は凰黎から目線を逸らす。
「煬鳳?」
急に煬鳳の口数が減ったからか、凰黎は怪訝な表情で顔を寄せる。普通に話しているときは全く気にならないのだが、意図的にやっているのかそうでないのか、凰黎の一挙手一投足はどれをとっても煬鳳の鼓動を高鳴らせた。
「な、何でもないよ」
慌てて上ずった声で煬鳳は答えると、くるりと凰黎に背を向ける。次の瞬間、煬鳳の首筋に凰黎の髪の毛がひと房流れ落ち、思わず煬鳳は声をあげた。
「本当に?」
次いで聞こえる凰黎の声。息がかかるほどの近さを感じて煬鳳は堪らなくなって、背のほうへ転がると手を伸ばし凰黎を抱き寄せる。その行為に驚きこそしなかったが、踏ん張ることのできる態勢でもなかったため、凰黎はそのまま倒れ込み煬鳳の上に覆いかぶさるような形になった。
「煬鳳」
凰黎の腕が煬鳳の背に回される。煬鳳も凰黎の背をしっかりと抱きしめた。煬鳳は抱きしめられたまま、凰黎の耳元で告げる。
「……ごめんさっきのは嘘。ほんとは凰黎と二人っきりだって気づいてから、もうどうしようもなく抑えられなかったんだ」
小屋で二人きりのときは何一つ気兼ねせず好きに言葉を並べ立てていたのに、外に出た途端なにも言えなくなってしまった。先ほどまでは随分と躊躇っていたが、ひとたび口に出すと、存外に言葉が止まらない。
「出発は数日遅らせるつもりだから。だから……今夜は寝ないで。お願いだ」
観念した煬鳳の素直な言葉に凰黎は微笑む。その笑顔は眩しくて、薄暗闇の中でもはっきりと煬鳳には見える。
ほんの一瞬だけ軽く触れる程度に口付けられ、もっと欲しいと煬鳳のほうから凰黎に縋りつく。いままでずっと慣れない場所ばかりにいたせいですっかり忘れていたのだが、抑えていたぶん欲求のほうが勝った。
「凰黎、好きだ」
確かめるように口にすると、凰黎の口元から白い歯が微かに覗く。
「私も、貴方のことを愛していますよ」
凰黎は煬鳳を抱き上げ膝の上に載せる。こうしてゆっくりと二人きり、互いの表情を確かめ合うのも本当に久しぶりのことだった。
煬鳳は万感の思いを込めて凰黎を抱きしめる。
「凰黎――」
そのあとに続けられた言葉は本当にささやかで、煬鳳と凰黎の二人だけにしか聞こえなかった。
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