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第32話 王国との決別2
しおりを挟む「うわああああああああ、城が崩れるぞ!」
「助けてくれー!」
魔族たちは悲鳴を上げながら崩壊する城に巻き込まれないように逃げ回る。
万一巻き込まれても俺が【破壊の後の創造】スキルで治してあげるから大丈夫だけどね。
城が完全に瓦礫の山になったのを確認した後に俺は【破壊の後の創造】スキルを発動させた。
瓦礫が光を放ち、収まった時には目の前にはアガントス王国の王城と瓜二つの城が出来上がっていた。
「うん、やっぱりお城はこういう見た目の方が落ち着く。さあ中に入ろうロリエ」
「へえ、あんたのスキルって本当に便利ですわね。それでは内装を拝見させて頂こうかしら」
「新しい城の名前も考えないといけないな」
「それでしたらロリックス城というのはどうかしら」
「何で自分の名前をもじってるんだよ」
「一応表向きには私が領主ということになっていますわ」
「そうだけどさぁ……モロクのセンスをどうこう言えないよ?」
俺とロリエは談笑をしながら城の中に足を進めた。
出迎えの魔族たちはその様子を呆気にとられながら眺めていた。
やがて気を取り直した魔族のひとりが口を開いた。
「……お前ら見たか、あれがルシフェルト様のお力だ。ルシフェルト様を怒らせるような事をしてみろ。お前らなんか一瞬で消されるぞ」
「あ、ああ……あの人には絶対に逆らわねえ」
「ひょっとして魔王様より強いんじゃないのか?」
これ以降魔族たちは俺の黒魔法を恐れて素直に言う事に従うようになった。
◇◇◇◇
一方、アガントス王国の王城内は騒然となっていた。
玉座に座っている壮年の男性はアガントス王国の王ペルセウスだ。
ペルセウスは神妙な面持ちで宰相に問いかける。
「そうか、やはりルシフェルトはまだ生きているのだな」
「はい国王陛下、エバートン侯爵の子息アルゴスからの進言通り魔界に密偵を送り探らせたところ、ルシフェルトは黒魔法の力で多くの魔族を従えているとの事。これは由々しき事態ですぞ」
「アルゴスはルシフェルトが魔族を率いて王国への侵攻を企んでいると懸念しておったな。宰相よ、そなたはどう思う」
「ルシフェルトは自分を追放したこの国を怨んでいましょう。ルシフェルトの傍らには現魔王アデプトの姉ロリエの姿が見えたとの報告もあります。ルシフェルトは復讐の為に魔王と手を組んでこのアガントス王国に侵攻するつもりに間違いありません」
「ふむう……やはりエバートン侯爵によるルシフェルトの助命など聞くべきではなかったな。このまま手をこまねいている訳にもいかぬ、急ぎ兵を集め魔王軍との決戦の準備をせい」
「陛下、いっそのこと先手を打っては如何でしょうか。英雄ヘンシェルを魔界に送り込むのです」
「ふむぅ……」
国王ぺルセウスは顎鬚を擦りながら思案する。
アガントス王国が誇る英雄ヘンシェル。
アガントス王国の国教であるシヴァン神教の敬虔な信徒であり、天贈の儀では全ての能力が人間の限界を超えてパワーアップする【救国の勇者】というユニークスキルを授けられた。
かつて辺境の地に現れて市民たちを恐怖に陥れた巨竜ペンドラゴンを単独で討伐してみせた事で王国内にその名を轟かせ、英雄の称号を手に入れた人物だ。
現在は同じくユニークスキルを持った仲間達と共に冒険者として各地を転戦している。
「そうだな、ヘンシェルならばルシフェルトや魔王が相手でも後れは取るまい。よし、急ぎヘンシェルに魔王討伐の命を下せ!」
「は、直ちに使いを送ります」
宰相はペルセウスに一礼をして退室した。
ペルセウスは残った側近たちに更に指示を出した。
「ヘンシェルの首尾次第ではまた魔界との大規模な戦争が始まるやもしれん。急ぎ諸侯にも軍備を整えさせろ」
「ははっ」
国王からの使いが王国各地へ飛んだ。
また戦争が始まる。
民衆はかつて世界中を巻き込み多くの犠牲者を出した魔王軍との戦いの記憶を思い出して戦慄した。
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