スキルがキモいという理由で王子から婚約破棄をされた巫女が実家に帰った結果王国が消滅した話

かにくくり

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第11話 慈愛の手紙

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「ラング様、お気を悪くなされずにお聞き下さい」

 レイチェルは珍しく私に断りを入れた上で進言をした。

「まず、臣下たちが私たちの想像以上にシルヴィアの巫女の力に頼り切っていたのがそもそもの原因です」

「そんな事は分かっている。臣下たちの怠慢のツケがこちらに回ってきている現状をどうすればいいのかという話だ」

「ですからシルヴィア本人を王都に呼び戻せば簡単に解決するのではないかしら?」

「あの魔女を呼び戻すだと?」

 私はレイチェルの献策に絶句した。

 冗談ではない。
 シルヴィアを呼び戻すという事はあの忌まわしい死者の霊魂を利用する力を認めるという事である。
 到底受け入れられるはずもない。

 しかし背に腹は代えられないのは事実。
 レイチェルはそんな私の内心の葛藤を見透かしたかのように私を諭すように続けた。

「ラング様がシルヴィアの力を有効活用して国内を安定させれば元老院も王太子として認めざるを得ないでしょう」

「それはそうだが……」

「そして病の床に伏せているサイクリア陛下は恐らく長くありません。私の見立てでは持って後一ヶ月……」

「成る程……」

 私は膝を叩き得心した。

 父上が亡くなれば否応なく次の王を決める事になる。
 その時私が結果を出していれば私が王位を継承する事に異を唱える者はいないだろう。

 そして即位さえしてしまえばこちらのもの。
 その後私が何をしようと口出しできる者はいない。

 シルヴィアはその後でまた改めて追放なり処罰をすればいい。
 それに念の為に弟たちも早い内に粛正しておいた方が良さそうだな。

「見事な策だレイチェル。それでは早速シルヴィアを呼び戻させるよう書状をしたためよう。それにしても君は本当に聡明な女性だ。もし侯爵家の令嬢として生を受けていなければ私の右腕として歴史に名を残す参謀となっていただろうな」

「あら、それでは殿下のご寵愛を受けられなくなりますわ」

 レイチェルは大袈裟に肩をすくめて苦笑する。

「全くその通りだ」

 私はレイチェルを抱き寄せるとその耳元で囁いた。

「私が王となった暁には君を王妃にしてやろう」

「その時を楽しみにお待ちしていますわラング様……」

 ずっとこうしていたいが今は時間が惜しい。
 私はレイチェルの身体からそっと離れると机へ向かいペンを手にした。

 思えばシルヴィアに書状をしたためる事など初めてだ。
 そもそもずっと同じ王宮で暮らしていたので手紙を書く必要自体が無かった。

 私は初めてシルヴィアと会った時の事を思い出した。

 あれはまだ父上が健在だった頃だ。
 私の婚約者が決まったと聞かされて客室へ赴くとそこに一人の美しい女性が座っていた。

 私はひと目で心を奪われた。

 そうだ、シルヴィアは見た目は悪くない。
 それに彼女と話をしていると不思議と心が安らいだ。
 きっと当時の私は彼女に恋をしていたのだろう。

 それが今では正反対に嫌悪の対象となっている。

 理由は簡単だ。
 彼女の持っている巫女としての力。

 死者の魂を操るというあのようなおぞましい力は到底許容できるものではない。

 愛と憎しみは隣り合わせの感情と人は言う。
 何か一つボタンが掛け違っただけでその想いは簡単に反転してしまう。

 ならば逆に元の鞘に戻す事も容易いのではないか?

 私が嫌悪しているのはシルヴィアの巫女としての力だけ。
 私が王になった後にその力を使わないように約束をさせればシルヴィアを罰する必要もないではないか。
 それどころか今までの事を水に流し、側室として傍に置く事もやぶさかではない。

「ふふっ……我ながら何と慈愛に満ちた男なのだろう」

 私の寛大な心によってシルヴィアが涙を流して喜ぶ姿を想像して自然と頬が緩む。

 父上が病に倒れられてからは臣下へ指示書を書いたり報告書にサインをする時ぐらいしか文字を書く機会がなく、それは苦痛でしかなかったが今日はいつになく筆が進んだ。

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