スキルがキモいという理由で王子から婚約破棄をされた巫女が実家に帰った結果王国が消滅した話

かにくくり

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第31話 没落

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「誰かいらっしゃいませんの!?」

 私レイチェルは王宮の一室で声を張り上げた。

「誰か!」

「はい、ただいま参ります!」

 何度か声を出して漸く近くを歩いていた王宮メイドが気付いてくれた。

「紅茶の葉が切れておりますわ。直ぐに補充をしなさい。それから廊下にあんな大きなゴミが落ちているのに三日間もそのままだなんてあなたたちは本当に掃除をしているのかしら?」

「も、申し訳ございません。何せ人手が足りないものですから……」

「言い訳は結構ですわ。口ではなく手を動かしなさい。これ以上怠慢が続くならクビにいたしますわよ」

「はい、今すぐに……」

 この王宮メイドは涙目になりながら仕事に戻っていったが、翌日にはその顔を見なくなった。

 私がクビにしたのではない。
 自ら職務を放り投げて失踪したのだ。

「どいつもこいつも……役立たずばかりですわね」

 私は頬杖をつきながら大きな溜息をついた。

 こんなはずじゃなかった。

 本当ならば王妃となった私は王国内の全ての臣民を顎で使い、悠々自適贅沢三昧な暮らしが約束されていたはずだった。

 しかし今この王宮内で私の言う事を聞いてくれる人間はほとんどいない。

 そもそも王宮どころか王都中から人がいなくなってしまっているのだ。

 私やラングに従わなかった者たちの役職を解いて地方へ飛ばしたのまでは良かったが、その後を追うように必要な人間まで去っていってしまったのは計算外だった。

 更に父であるエクスディア侯爵とその臣下たちはサイクリア陛下の祟りを恐れて領地に帰ってしまうし、エディー公爵が王都へ連れてきた労働者たちもいつの間にか王都からいなくなっていたという。

 元々王都に住んでいた者たちは真っ先にエディー公爵が連れてきた貴族達の横暴に嫌気がさして王都を離れ地方へ流出している。

 人が減ればそれだけ労働力が足りなくなり、残った者だけでそれを補わなくてはならなくなる。
 今度は皺寄せが来た者も激務に耐えられなくなって行方を眩ませる。

 その負の連鎖は加速的に進み最早手遅れな状態にまで到達していた。

 今や人がいなくなった王都はゴーストタウンと化し、王宮内にはどこにもいく当てが無い僅かな人間が残っているだけという状態だ。

「おい、昼食はまだか! 料理長はクビにしてしまえ!」

 今は昼時だというのに食堂に料理が運ばれてこない。
 玉座に座っているラングは空腹に耐えかねて喚いていた。

「ラング様、料理長なら昨日ラング様のお嫌いなピーマンをお出しした罰として追放されたではありませんか」

「そう言えばそうであった。ならば誰が私の昼食を作ってくれるというのだ」

「まだ料理人がひとり残っていたはずですけど……ちょっと様子を見てきますわ」

 何故王妃である私が昼食の管理までしなければいけないのかとぼやきながら調理場へと向かった。

「エイミー、昼食はまだですの? 陛下がお腹を空かせておりますわよ……あら?」

 調理場には料理人エイミーの姿はなく、代わりに調理台の上に一通の手紙が置かれていた。

 私はそれを拾い上げて書かれている内容を読み上げる。

「『私のような見習い料理人には陛下にお出しするような料理はとても作れません。今までお世話になりました。探さないで下さい』……なんですって!?」

 あろう事か最後の料理人までもがいなくなってしまった。

 食事ができなければラングどころか私たちも飢えてしまう。

 こうなったらまだ王宮内に残っている僅かな臣下の中から最低限の料理を作れる人間を探し出して作らせるしかない。
 ちなみに私は料理なんて全くできない。

 状況を聞いたラングはお腹の虫を鳴らしながらテーブルの上に突っ伏して呟いた。

「レイチェル、私はこのサンクタス王国の王になったはずだ。王が飢餓に苦しんでいるのに国民どもは何をしているのだ」

 言うまでもなく愚かな王であるラングは既に国民たちには見捨てられているのだけどそれを伝えたところでいたずらにラングを苛立たせるだけで何の解決にもならない。

 この状況を打開する為には何とかして人心を取り戻し、再び王都に人が集まってくるようにするしかない。

 しかしラングこの馬鹿にそれができるだろうか?

 いや、やるしか……違う、そうしかない。

「ラング様、このレイチェルにひとつ考えがあります」


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