スキルがキモいという理由で王子から婚約破棄をされた巫女が実家に帰った結果王国が消滅した話

かにくくり

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第39話 決着

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「ぐぬ……私が今相手にしているのは本当にリストリア殿なのか……この一手はまさかあの……」

「エルリーン伯爵、長考ですか?」

「ぐ……もう少し考えさせてくれ」

 お父様は盤面に伸ばした手を止め、そのまま「むむむ」と唸りながら動かなくなった。
 私はチェスのルールは良く分からないけどどうやらリストリア様の方が優勢らしい。

 それからお父様はゆっくりと自分のキングの駒を倒して宣言した。

降参リザインですリストリア殿。もうどう転んでも勝ち筋が見えない」

 お父様がそう告げた瞬間リストリア殿下は両手を大きくつき上げ勝利の雄叫びをあげた。

 同時に試合を観戦していた使用人たちの歓声が祭壇の部屋の中に響き渡った。

「え? 終わったんですか? お、おー!」

 戦況が分からなかった私はようやく勝負がついた事を把握し、ワンテンポ遅れて彼らに続いて声を上げる。

「おめでとうリストリア様」

「これでエルリーン伯爵家の未来も安泰です」

「ありがとう、ありがとう!」

 使用人たちが祝福の言葉をかけると、リストリア様はひとりひとり順番に差し出された手を握り返しながら応える。
 ここにきて私は漸くリストリア様が正式に私の婿としてお父様に認められた事を理解した。

「シルヴィアお嬢様、おめでとうございます」

「どうぞリストリア様とお幸せに!」

「あ、ありがとう……」

 今度は使用人たちが私に向けて祝福の言葉を投げる。

 リストリア様とはここ一年以上の間ずっと屋敷の中で家族も同然に過ごしてきた仲だ。
 結婚すると言われても私の中ではどこか他人事で正直実感はなかったけど、少しずつ現実を理解し始めるにつれてじわじわと恥ずかしさの感情が湧きあがってきた。

 私は顔を紅潮させたまま俯いた。

 リストリア様はそんな私にゆっくりと近付いてきて言った。

「シルヴィア、ずいぶんと待たせてしまったな。これでようやくお前を妻に迎える事ができる。……だが俺のプロポーズを受けるかどうかを決めるのはあくまでお前だ。もし嫌なら断ってくれて構わない」

 もう満足に目を合わせる事もできない程テンパっている私は俯いたまま声を震わせながら言った。

「い、いえ……こ、こちらこそ……宜しくお願いします」

「受けてくれるかシルヴィア!」

 言い終わるや否やリストリア様は人目も憚らず私を強く抱きしめた。
 既に頭が真っ白になっている私はもうどうにでもなれとなすがままにされる。

 周りの使用人たちの歓声が更に大きくなった。




「リストリア殿……ひとつ聞かせてください」

 やがてお祭りのようなこの騒ぎが落ち着いた頃、お父様がリストリア様にぽつりと問いかけた。

「先程リストリア殿が差した一手、かつて伝説のチェスの神と謳われたハードラス伯爵が残したという棋譜で見た事があります。もしやリストリア殿は……」

「はいエルリーン伯爵。私はこの一年間クローディア嬢に頼み込んでハードラス伯爵の魂を【口寄せ】して貰い、師事を受けていたんです。私の身勝手な頼みに愚痴ひとつ言わずに付き合ってくれたクローディア嬢には感謝の言葉もありません」

「やはりそうでしたか。しかしクローディア、良かったのか? お前もリストリア殿の事を好いていたのではないか?」

「うん、私ずっとリストリアお兄ちゃんみたいな人が本当のお兄ちゃんになってくれたらいいなって思っていたの。だからシルヴィアお姉ちゃんと結婚して私の本当のお兄ちゃんになってくれて嬉しいの」

「そうか、ならば良い。今までよくやったなクローディア」

「えへへ……」

 お父様はクローディアの頭を優しく撫でてあげる。

 クローディアは本当に良い子だ。
 もしクローディアが結婚する年齢になったら、リストリア様に負けないくらいの相手が見つかるように何を犠牲にしてでも協力してあげなきゃ、と私は強く決心した。

 余計なお世話かもしれないけどね。

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