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「山猫ンデレラ」(サブキャラ:黒井の母と姉、藤井、西沢)
後編:山猫ンデレラ、流れ星が見られない
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わずかなランプが灯された、大広間の隣の控室。
そこには大きなソファとテーブル、出窓に暖炉、ウイスキーボトルが並んだお酒の棚。ドアを閉じると、外から舞踏会の音楽がかすかに聴こえてきます。
「な、何なんだ突然。あんた王子なら、さっさと戻って、別の娘を・・・」
山猫ンデレラはソファの端っこに座り、もう帰ろう、もう帰ろうと手を震わせていました。
王子にダンスを申し込まれて目立ってしまった上に、駆け落ち(違)のようなことになってしまって、いろいろと気が気ではないのです。
(何でこんなことになっちゃったんだろう。どうして、こんなにドキドキがおさまらないんだろう・・・)
涙すらこらえて下を向く山猫ンデレラ。
王子はそのすぐ隣に座り、山猫ンデレラの肩を抱いて、言いました。
「舞踏会には戻らない。俺はどうしても、お前が気になる」
「・・・あ、会ったばかりでいったい何を」
「だって俺には分かるんだ。お前はこんなキレイな格好をしてるけど、本当はそうじゃない」
「・・・っ、そ、それは」
山猫ンデレラは、隠していた何かがバレたような気がして、ぎゅっと身を固くしました。
「ねえ、俺はお前のことが知りたいよ・・・」
クロ王子は言いながら、片手で山猫ンデレラの両手首を押さえると、もう片方の手はドレスの裾から手を入れて、足首から膝、太ももへと・・・。
「あ、やっ・・・、やめっ・・・」
それから手はさらに上に伸び、下着にたどりつきます。
「あんっ・・・そこは、だめって・・・!」
そして山猫ンデレラは気がつきました。
魔法使いフジーがかけた魔法はドレスだけでなく下着にまで及んでいて、山猫ンデレラのあそこは薄くひらひらした、面積の少ない布に包まれているだけです。そしてみるみるうちに、それは何だかとてつもなく卑猥な感じになってしまいました。
「ク、クロ王子っ」
「うん、だから、お前の名前は何?」
「そ、それは・・・」
「言えないの?キスしたら言う気になる・・・?」
そして王子の唇が、山猫ンデレラの唇と重なる、その直前。
十二時の鐘の音が鳴り響く・・・。
・・・。
・・・って思いましたでしょうか。思いましたよね。
でも作者の「それはご都合主義じゃない?」という体のいいご都合主義により、そんなにタイミングよく鐘は鳴らないことになりました。
* * *
薄い布はぬるぬると濡れて滑り、山猫ンデレラのそれはすでに、布から半分顔を出していました。王子の手が下から這ってきて、その大きな手のひらで触れるか触れないか、まるでセンサーのように周辺の熱を感知してまわります。
「お、お願い、ごめんなさい、許して・・・」
山猫ンデレラはいろいろ、もう、耐えきれません。
招待状なしで入ってきてしまったし、ドレスもガラスの靴も魔法によるまやかしだし、おまけに中身は、もうこんなに・・・。
そんな後ろめたさの中、「お前の全部を知りたいんだ」と言われ、山猫ンデレラの思考はもう働きません。気がつくと、ぎゅっと目をつぶったまま、自分でドレスの裾をゆっくりとまくりあげていました。
慎ましくも、全体の一部分だけを隠している純白の薄い布は、濡れた部分が張り付いてしっとりと透け、その染みが見る間に広がっていきます。
その、とてもいけない光景に、王子の頭の回線は何本か切れました。
「なあ、俺、もう我慢できない。ちょっと、痛くするかも」
「・・・お願い。痛くして、お仕置きして・・・」
それから控室のソファはぎしぎしと軋みましたが、外までは聞こえませんでした。
その揺れとともに、ガラスの靴が片方床に落ちたことも、山猫ンデレラは気がつきませんでした。
* * *
ゴーン、ゴーン・・・。
そしてようやく(作者からの許しを得て)、お城に十二時の鐘が鳴り響きます。
「あっ、か、鐘が・・・」
「・・・っ、なに、ちょっと待っ・・・、あっ、あっ・・・」
「は、早くして、鐘、終わったら・・・っ」
「・・・っ、んんっ」
ゴーン、ゴーン・・・。
そして、最後の鐘の音が、鳴り止みました。
「・・・っ!!・・・はあ、はあ・・・あ、あれ?」
控室には、この城の王子があられもない格好で、ただ一人。
そのソファを白濁液で汚しつつ、熱気とともに肩で息をして、呆然としています。
「・・・な、中に、出せなかった・・・」
山猫ンデレラは鐘の音とともに、魔法のように消えてしまっていました。
* * *
「・・・」
山猫ンデレラは自宅の庭で一人、着古した服を着て、たたずんでおりました。
魔法が解けて、全てが元に戻ったのです。
(なんだ、帰りの馬車は気にしなくてよかったのか。素っ裸になることもなくて、ただここに戻ってくるんなら最初からそう言ってほしかった・・・)
山猫ンデレラはそっと、服の中に手を入れてみました。
下着はいつもの安物トランクスで、後ろにはひりつく痛みがありますが、そこから何かが溢れてくることはなくて・・・。
(どうして、何で、こんなに胸が苦しいんだろう。僕はあの人に名前を告げることもなく、あの人が残したものは何もない・・・)
やがて義母と義姉が帰宅する気配がして、山猫ンデレラは急いで部屋に戻り、寝たふりをしました。二人がお茶をしながら「王子様、全然踊らなかったわね」「締めの挨拶で、もうパーティはやらないとか言ってたけど」「そもそも結婚する気ないんじゃないかしら」などと話すのを、ぼんやり聞いていました。
* * *
それから。
「山猫ンデレラさん、あのー、たまにはお風呂のお掃除をやってもらえないかしら?」
「あっちょっと山猫ンデレラ、卵焦げてる!真っ黒だって!!」
・・・真っ黒。
・・・クロ。
(クロに、会いたい)
あれから何度かの週末を迎えましたが、再び招待状が届くこともなく、山猫ンデレラはすっかり塞ぎ込んでいました。王子に名を告げなかったのですから、たとえ想いが届いていたとしても、見つけてもらう術はないのです。
(会いたいよ、クロ。僕は、お前が・・・)
* * *
「山猫ンデレラさん、お願いだからチューリップまで抜かないで頂戴っ!!」
「山猫ンデレラっ!熱湯風呂やめてっ!!死んじゃう!」
今日もまた義母と義姉による激しい苛めが続きます。
山猫ンデレラは深いため息をついて、あの夜王子からされたことを思い返すと、そそくさと部屋にこもって左手をそこに伸ばしました。
そして、しばらくして、家に来客がありました。
それは城から遣わされた役人でした。
「先日、舞踏会にお越しいただいたかと思いますが」
「ああ、はい。二人で参りましたよ」
「その時に、靴の落とし物をなさいませんでしたか?」
「靴を?いいえ?履いてなければ帰れないじゃありませんこと?」
「それはごもっともです。しかし念のため、この靴を履いてみてもらえませんか」
義母と義姉は首を傾げつつも、役人が取り出したガラスの靴に足を差し入れました。
しかし小柄な義母にはぶかぶか、義姉もゆるくて履けませんでした。
「何これ、ちょっとでかくない?誰が履くの?」
「あのう、これはどういった調査ですの?」
二人の疑問の声はいったん無視して、役人は「こちらのお宅で、他にこの靴が合いそうな方はいませんか」と食い下がりました。
実はこれまで、貴族のニシザワーヌ嬢(?)だけが「こんなん入らんわ!」ときつくて履けませんでしたが、それ以外はこの二人のようにぶかぶかで、誰にも合わなかったのです。
役人は招待客をすべて調べてまわって、ここが最後の家なのでした。
* * *
役人がどうしてもと頼むので、義母は「山猫ンデレラさん、ちょっといらして!」と呼びました。
そして山猫ンデレラはガラスの靴を見て、心臓が飛び出すほど驚きました。
(えっ、ドレスも靴も、魔法とともに元に戻ったんじゃないの?どうしてここにあるの?ああ、あの時落とした?もしかして、魔法が解ける前に本人から離れたものはいわば実体化する・・・いやそれなら本来の僕の靴も片方無くなってないと質量保存の法則が・・・)
頭の中で理屈をこねくりまわしている間に義母と義姉が靴を履かせ、それはぴったりと合いました。
「うわー、ぴったりじゃん山猫ンデレラ!結構足でかかったんだね!」
「あらまあ。でもどうして山猫ンデレラさんが舞踏会で靴を落として・・・??」
山猫ンデレラはとっさに、王子を誑かしたスパイ容疑か何かかと思い「く、靴のサイズが合ったくらいで証拠にはならない!」と叫びましたが、役人が「足の指にも指紋がありますね、そしてこれはガラスの靴ですから・・・?」とカマをかけると、言い逃れできないと思ったのか「・・・僕です」と完落ちしました。
* * *
その後。
山猫ンデレラは城に連れて行かれ、王子と再会し、晴れて結婚を申し込まれました。
しかし「そんな大役は務まらない、晩餐会で客をもてなすとか無理!」と逃げ出すと、王子が追いかけてきて「それじゃ俺が婿に行く!」と言いました。
そしてしばらく義母と義姉とともに暮らしておりましたが、王子は実家みたいにくつろいで、部屋の中で花火をしてボヤ騒ぎを起こしたので、「山猫ンデレラさんの責任ですよっ!」と二人ともお城に帰されてしまいました。
豪華なお城に山猫ンデレラはなじめませんでしたが、実は自分に結構な権限があると分かるや合理化と過剰な節約に走り、勝手にリストラを始めたのでこれまた追い出されてしまいました。
* * *
二人が送られたのは、領地の中でも辺境の地、別荘という名の山小屋でした。
「でも俺、ここ好きなんだ。夜は流れ星が見えるよ」
「そっか、すごいな。俺も見てみたい」
「山猫ンデレラ・・・、俺、キスしたい」
「うん、クロ王子・・・して」
そして、今夜も、次の夜も、その次も、夜空を眺めるどころではなくて、二人は流れ星を見られませんでした。
いつになったら二人が流れ星を見られるのか、それは・・・そんなことは誰も知ったこっちゃないわ!!一生やってろお幸せに!!!
・・・めでたし、めでたし。
* * *
【CAST】
山猫ンデレラ・・・・・・山根 弘史
クロイーヌ(クロ)王子・・・・・・黒井 彰彦
意地悪な義母・・・・・・黒井 世津子
意地悪な義姉・・・・・・咲子(さっちゃん。そういや嫁ぎ先の苗字は考えとらんかった)
魔法使いフジー・・・・・・藤井 玲
ニシザワーヌ・・・・・・西沢 薫
草食ってる馬車の馬・・・・・・あとみく
長いものに巻かれる門番・・・・・・あとみく
えろのために鐘の音を止める作者・・・・・・あとみく
「犯人はあなただ!」的シーンのドヤ顔をやってみたかった役人・・・・・・あとみく
妄想・執筆・・・・・・あとみく
そこには大きなソファとテーブル、出窓に暖炉、ウイスキーボトルが並んだお酒の棚。ドアを閉じると、外から舞踏会の音楽がかすかに聴こえてきます。
「な、何なんだ突然。あんた王子なら、さっさと戻って、別の娘を・・・」
山猫ンデレラはソファの端っこに座り、もう帰ろう、もう帰ろうと手を震わせていました。
王子にダンスを申し込まれて目立ってしまった上に、駆け落ち(違)のようなことになってしまって、いろいろと気が気ではないのです。
(何でこんなことになっちゃったんだろう。どうして、こんなにドキドキがおさまらないんだろう・・・)
涙すらこらえて下を向く山猫ンデレラ。
王子はそのすぐ隣に座り、山猫ンデレラの肩を抱いて、言いました。
「舞踏会には戻らない。俺はどうしても、お前が気になる」
「・・・あ、会ったばかりでいったい何を」
「だって俺には分かるんだ。お前はこんなキレイな格好をしてるけど、本当はそうじゃない」
「・・・っ、そ、それは」
山猫ンデレラは、隠していた何かがバレたような気がして、ぎゅっと身を固くしました。
「ねえ、俺はお前のことが知りたいよ・・・」
クロ王子は言いながら、片手で山猫ンデレラの両手首を押さえると、もう片方の手はドレスの裾から手を入れて、足首から膝、太ももへと・・・。
「あ、やっ・・・、やめっ・・・」
それから手はさらに上に伸び、下着にたどりつきます。
「あんっ・・・そこは、だめって・・・!」
そして山猫ンデレラは気がつきました。
魔法使いフジーがかけた魔法はドレスだけでなく下着にまで及んでいて、山猫ンデレラのあそこは薄くひらひらした、面積の少ない布に包まれているだけです。そしてみるみるうちに、それは何だかとてつもなく卑猥な感じになってしまいました。
「ク、クロ王子っ」
「うん、だから、お前の名前は何?」
「そ、それは・・・」
「言えないの?キスしたら言う気になる・・・?」
そして王子の唇が、山猫ンデレラの唇と重なる、その直前。
十二時の鐘の音が鳴り響く・・・。
・・・。
・・・って思いましたでしょうか。思いましたよね。
でも作者の「それはご都合主義じゃない?」という体のいいご都合主義により、そんなにタイミングよく鐘は鳴らないことになりました。
* * *
薄い布はぬるぬると濡れて滑り、山猫ンデレラのそれはすでに、布から半分顔を出していました。王子の手が下から這ってきて、その大きな手のひらで触れるか触れないか、まるでセンサーのように周辺の熱を感知してまわります。
「お、お願い、ごめんなさい、許して・・・」
山猫ンデレラはいろいろ、もう、耐えきれません。
招待状なしで入ってきてしまったし、ドレスもガラスの靴も魔法によるまやかしだし、おまけに中身は、もうこんなに・・・。
そんな後ろめたさの中、「お前の全部を知りたいんだ」と言われ、山猫ンデレラの思考はもう働きません。気がつくと、ぎゅっと目をつぶったまま、自分でドレスの裾をゆっくりとまくりあげていました。
慎ましくも、全体の一部分だけを隠している純白の薄い布は、濡れた部分が張り付いてしっとりと透け、その染みが見る間に広がっていきます。
その、とてもいけない光景に、王子の頭の回線は何本か切れました。
「なあ、俺、もう我慢できない。ちょっと、痛くするかも」
「・・・お願い。痛くして、お仕置きして・・・」
それから控室のソファはぎしぎしと軋みましたが、外までは聞こえませんでした。
その揺れとともに、ガラスの靴が片方床に落ちたことも、山猫ンデレラは気がつきませんでした。
* * *
ゴーン、ゴーン・・・。
そしてようやく(作者からの許しを得て)、お城に十二時の鐘が鳴り響きます。
「あっ、か、鐘が・・・」
「・・・っ、なに、ちょっと待っ・・・、あっ、あっ・・・」
「は、早くして、鐘、終わったら・・・っ」
「・・・っ、んんっ」
ゴーン、ゴーン・・・。
そして、最後の鐘の音が、鳴り止みました。
「・・・っ!!・・・はあ、はあ・・・あ、あれ?」
控室には、この城の王子があられもない格好で、ただ一人。
そのソファを白濁液で汚しつつ、熱気とともに肩で息をして、呆然としています。
「・・・な、中に、出せなかった・・・」
山猫ンデレラは鐘の音とともに、魔法のように消えてしまっていました。
* * *
「・・・」
山猫ンデレラは自宅の庭で一人、着古した服を着て、たたずんでおりました。
魔法が解けて、全てが元に戻ったのです。
(なんだ、帰りの馬車は気にしなくてよかったのか。素っ裸になることもなくて、ただここに戻ってくるんなら最初からそう言ってほしかった・・・)
山猫ンデレラはそっと、服の中に手を入れてみました。
下着はいつもの安物トランクスで、後ろにはひりつく痛みがありますが、そこから何かが溢れてくることはなくて・・・。
(どうして、何で、こんなに胸が苦しいんだろう。僕はあの人に名前を告げることもなく、あの人が残したものは何もない・・・)
やがて義母と義姉が帰宅する気配がして、山猫ンデレラは急いで部屋に戻り、寝たふりをしました。二人がお茶をしながら「王子様、全然踊らなかったわね」「締めの挨拶で、もうパーティはやらないとか言ってたけど」「そもそも結婚する気ないんじゃないかしら」などと話すのを、ぼんやり聞いていました。
* * *
それから。
「山猫ンデレラさん、あのー、たまにはお風呂のお掃除をやってもらえないかしら?」
「あっちょっと山猫ンデレラ、卵焦げてる!真っ黒だって!!」
・・・真っ黒。
・・・クロ。
(クロに、会いたい)
あれから何度かの週末を迎えましたが、再び招待状が届くこともなく、山猫ンデレラはすっかり塞ぎ込んでいました。王子に名を告げなかったのですから、たとえ想いが届いていたとしても、見つけてもらう術はないのです。
(会いたいよ、クロ。僕は、お前が・・・)
* * *
「山猫ンデレラさん、お願いだからチューリップまで抜かないで頂戴っ!!」
「山猫ンデレラっ!熱湯風呂やめてっ!!死んじゃう!」
今日もまた義母と義姉による激しい苛めが続きます。
山猫ンデレラは深いため息をついて、あの夜王子からされたことを思い返すと、そそくさと部屋にこもって左手をそこに伸ばしました。
そして、しばらくして、家に来客がありました。
それは城から遣わされた役人でした。
「先日、舞踏会にお越しいただいたかと思いますが」
「ああ、はい。二人で参りましたよ」
「その時に、靴の落とし物をなさいませんでしたか?」
「靴を?いいえ?履いてなければ帰れないじゃありませんこと?」
「それはごもっともです。しかし念のため、この靴を履いてみてもらえませんか」
義母と義姉は首を傾げつつも、役人が取り出したガラスの靴に足を差し入れました。
しかし小柄な義母にはぶかぶか、義姉もゆるくて履けませんでした。
「何これ、ちょっとでかくない?誰が履くの?」
「あのう、これはどういった調査ですの?」
二人の疑問の声はいったん無視して、役人は「こちらのお宅で、他にこの靴が合いそうな方はいませんか」と食い下がりました。
実はこれまで、貴族のニシザワーヌ嬢(?)だけが「こんなん入らんわ!」ときつくて履けませんでしたが、それ以外はこの二人のようにぶかぶかで、誰にも合わなかったのです。
役人は招待客をすべて調べてまわって、ここが最後の家なのでした。
* * *
役人がどうしてもと頼むので、義母は「山猫ンデレラさん、ちょっといらして!」と呼びました。
そして山猫ンデレラはガラスの靴を見て、心臓が飛び出すほど驚きました。
(えっ、ドレスも靴も、魔法とともに元に戻ったんじゃないの?どうしてここにあるの?ああ、あの時落とした?もしかして、魔法が解ける前に本人から離れたものはいわば実体化する・・・いやそれなら本来の僕の靴も片方無くなってないと質量保存の法則が・・・)
頭の中で理屈をこねくりまわしている間に義母と義姉が靴を履かせ、それはぴったりと合いました。
「うわー、ぴったりじゃん山猫ンデレラ!結構足でかかったんだね!」
「あらまあ。でもどうして山猫ンデレラさんが舞踏会で靴を落として・・・??」
山猫ンデレラはとっさに、王子を誑かしたスパイ容疑か何かかと思い「く、靴のサイズが合ったくらいで証拠にはならない!」と叫びましたが、役人が「足の指にも指紋がありますね、そしてこれはガラスの靴ですから・・・?」とカマをかけると、言い逃れできないと思ったのか「・・・僕です」と完落ちしました。
* * *
その後。
山猫ンデレラは城に連れて行かれ、王子と再会し、晴れて結婚を申し込まれました。
しかし「そんな大役は務まらない、晩餐会で客をもてなすとか無理!」と逃げ出すと、王子が追いかけてきて「それじゃ俺が婿に行く!」と言いました。
そしてしばらく義母と義姉とともに暮らしておりましたが、王子は実家みたいにくつろいで、部屋の中で花火をしてボヤ騒ぎを起こしたので、「山猫ンデレラさんの責任ですよっ!」と二人ともお城に帰されてしまいました。
豪華なお城に山猫ンデレラはなじめませんでしたが、実は自分に結構な権限があると分かるや合理化と過剰な節約に走り、勝手にリストラを始めたのでこれまた追い出されてしまいました。
* * *
二人が送られたのは、領地の中でも辺境の地、別荘という名の山小屋でした。
「でも俺、ここ好きなんだ。夜は流れ星が見えるよ」
「そっか、すごいな。俺も見てみたい」
「山猫ンデレラ・・・、俺、キスしたい」
「うん、クロ王子・・・して」
そして、今夜も、次の夜も、その次も、夜空を眺めるどころではなくて、二人は流れ星を見られませんでした。
いつになったら二人が流れ星を見られるのか、それは・・・そんなことは誰も知ったこっちゃないわ!!一生やってろお幸せに!!!
・・・めでたし、めでたし。
* * *
【CAST】
山猫ンデレラ・・・・・・山根 弘史
クロイーヌ(クロ)王子・・・・・・黒井 彰彦
意地悪な義母・・・・・・黒井 世津子
意地悪な義姉・・・・・・咲子(さっちゃん。そういや嫁ぎ先の苗字は考えとらんかった)
魔法使いフジー・・・・・・藤井 玲
ニシザワーヌ・・・・・・西沢 薫
草食ってる馬車の馬・・・・・・あとみく
長いものに巻かれる門番・・・・・・あとみく
えろのために鐘の音を止める作者・・・・・・あとみく
「犯人はあなただ!」的シーンのドヤ顔をやってみたかった役人・・・・・・あとみく
妄想・執筆・・・・・・あとみく
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