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ソラを探して新富福町へ
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3匹の大型犬が警戒しながら鼻息荒くウミを武闘派の刑事のように取り調べている。
「シュバルツ、ヴァイス、ロート!神園くんから下がりなさい。」
命令された犬達はウミから離れた。
「新富福町か。昔、ギグをする為に訪れた事があるんだけどよ、柄の悪い奴が多い土地柄だぜ?
なんだってソラはあんな街へ行ったんだろ?」
ウミは腕組みをしながら言った。
「同じくワタクシもオガタに問いましたが、そこまでは把握できませんでした。
ただワタクシの推測だと、双子の妹の…えぇと、お名前を失念してしまいました。」
「セラちゃんか?」
「あぁセラさんでしたわね。
そのセラさんの自宅に大嵐さんが一緒に住んでいる可能性がおおいにあるとワタクシは考えております。」
「おまえもそう思ったか。
俺んちから出ていく時、2人は一緒だったしな…。」
ウミはかつらの部屋に置いてある豪華なオブジェのような時計で時刻を確認すると、別れの言葉もかわさずそのまま出て行こうとした。
「神園くん?」
かつらが呼び止めると忠実な3匹の犬も一斉にウミを見た。
「ああ?」
ドアを開けたウミは振り返りかつらと視線を合わす。
視線こそ外さなかったが、かつらの声はうわずっている。
「ワ、ワタクシもおともしますわ。大嵐さんに恩返しはおろか、償いさえもできておりませんから…。」
ウミに断られてしまうのではないかと恐れていたかつらだが、ソラを想う気持ちが震える口を動かす原動力になった。
「女を連れていくと、足手纏いになっちまうから、いつもの俺なら断るんだがよ、おまえの目を見て感じ取れたんだ。
よっぽどソラに会いてぇようだな。
いいぞ。おまえの好きにしな。」
「ありがとう神園くん!」
「ただひとつ、俺と約束してくれ。
クソがしたくなった時は遠慮なく便所へ行くんだぞ?
俺は小学生のガキじゃねえんだ。
女が便所に行きたそうにしているのを見てバカになんかしねぇからよ。」
かつらは愛しきフィアンセが病床に伏して、そのまま帰らぬ人になった悲劇に見舞われたかのような表情をみせた。
「違うの…違うのよ…神園くん…。それは誤解よ。」
かつらはガクンと俯くと長く繊細な指をなめらかに顔に当てた。
感受性豊かな3匹の犬達は何かを感じ取り、かつらに鼻をつけ顔を舐めまわしている。
「お嬢様、私も同伴します。」
広大な庭でオガタが2人を待ち構えていた。
「オガタ、大嵐さんの行方を調査してくれた事を感謝しているわ。
でも、ここからは砂城院家の力を借りず大嵐さんを探しだしたいの。」
「同行するその者を知らないわけではございませんが、2人きりになるのはいかがなものかと…。」
オガタは表情を変えずサングラスの位置を指で整えた。
「おいグラサンのおっさんよ。俺がコイツに如何わしい事をすると思ってんのかい?
俺は自分の女を探しに行くだけなんだぜ?」
ウミが近づくとオガタの黒いサングラスにウミの顔が反射している。
「お嬢様はおまえに惚れ…」
「オガタぁぁぁぁ!!!」
余計な事を言うなとオガタが話すのを遮り、口封じをするかつらは姫君学院時代を彷彿とさせるほど、狂気に満ちていた。
「おまえちょっとキレ過ぎだぞ?」
「いやだわ、ワタクシったら。オホホホ。」
ウミに引き攣った微笑みを見せたあと、かつらはオガタに近づき耳打ちをした。
「神園くんは大嵐さんの夫なの。
ワタクシは神園くんをキッパリ諦めているのよ。
余計な事を言ってややこしくしないで。」
「もちろん神園ウミと大嵐ソラの関係は承知しております。
が、しかしあの者が妻帯者である事を忘れて、美しいお嬢様に性的な危害を加える可能性がないとは断言できません。」
「ないわ。絶対にないと言い切れる。ワタクシなんかが付け入る隙はないわ。
2人の愛の前ではワタクシは無力よ。
2人を結ぶ赤い糸は鋼鉄の刃でも切ることはできない。」
かつらは自分自身が口にした言葉で落ち着きを取り戻し、本来の聡明な表情を浮かべた。
「早くしろよ!先に行くぞ?」
「お待ちになって神園くん!」
顔をウミに向けて言い放った後、すぐさまオガタに視線を合わせた。
「いいわね。先ほども話たとおりよ。
砂城院家の力はこれ以上借りるつもりはないわ。
それでないとなんの意味もないの。
身を挺して守ってくれた大嵐さんを探す事こそ、私に課せられた使命。
必ず大嵐さんを見つけ出して、ボタンを掛け違えた2人の為に、神園くんと大嵐さんが愛し合う夫婦として再出発するお手伝いをしたいのよ。
わかってくれるわよね?オガタ。」
オガタはかつらに気付かれないよう静かにため息を吐いた。
「もう置いてくぞ!」
先を歩くウミは怒鳴りだした。
「心配しないでワタクシなら絶対に大丈夫だわ。」
オガタにそう告げると、かつらは麦わら帽子を被りウミの元へ如何にもお嬢様然とした内股で走り出した。
「シュバルツ、ヴァイス、ロート!神園くんから下がりなさい。」
命令された犬達はウミから離れた。
「新富福町か。昔、ギグをする為に訪れた事があるんだけどよ、柄の悪い奴が多い土地柄だぜ?
なんだってソラはあんな街へ行ったんだろ?」
ウミは腕組みをしながら言った。
「同じくワタクシもオガタに問いましたが、そこまでは把握できませんでした。
ただワタクシの推測だと、双子の妹の…えぇと、お名前を失念してしまいました。」
「セラちゃんか?」
「あぁセラさんでしたわね。
そのセラさんの自宅に大嵐さんが一緒に住んでいる可能性がおおいにあるとワタクシは考えております。」
「おまえもそう思ったか。
俺んちから出ていく時、2人は一緒だったしな…。」
ウミはかつらの部屋に置いてある豪華なオブジェのような時計で時刻を確認すると、別れの言葉もかわさずそのまま出て行こうとした。
「神園くん?」
かつらが呼び止めると忠実な3匹の犬も一斉にウミを見た。
「ああ?」
ドアを開けたウミは振り返りかつらと視線を合わす。
視線こそ外さなかったが、かつらの声はうわずっている。
「ワ、ワタクシもおともしますわ。大嵐さんに恩返しはおろか、償いさえもできておりませんから…。」
ウミに断られてしまうのではないかと恐れていたかつらだが、ソラを想う気持ちが震える口を動かす原動力になった。
「女を連れていくと、足手纏いになっちまうから、いつもの俺なら断るんだがよ、おまえの目を見て感じ取れたんだ。
よっぽどソラに会いてぇようだな。
いいぞ。おまえの好きにしな。」
「ありがとう神園くん!」
「ただひとつ、俺と約束してくれ。
クソがしたくなった時は遠慮なく便所へ行くんだぞ?
俺は小学生のガキじゃねえんだ。
女が便所に行きたそうにしているのを見てバカになんかしねぇからよ。」
かつらは愛しきフィアンセが病床に伏して、そのまま帰らぬ人になった悲劇に見舞われたかのような表情をみせた。
「違うの…違うのよ…神園くん…。それは誤解よ。」
かつらはガクンと俯くと長く繊細な指をなめらかに顔に当てた。
感受性豊かな3匹の犬達は何かを感じ取り、かつらに鼻をつけ顔を舐めまわしている。
「お嬢様、私も同伴します。」
広大な庭でオガタが2人を待ち構えていた。
「オガタ、大嵐さんの行方を調査してくれた事を感謝しているわ。
でも、ここからは砂城院家の力を借りず大嵐さんを探しだしたいの。」
「同行するその者を知らないわけではございませんが、2人きりになるのはいかがなものかと…。」
オガタは表情を変えずサングラスの位置を指で整えた。
「おいグラサンのおっさんよ。俺がコイツに如何わしい事をすると思ってんのかい?
俺は自分の女を探しに行くだけなんだぜ?」
ウミが近づくとオガタの黒いサングラスにウミの顔が反射している。
「お嬢様はおまえに惚れ…」
「オガタぁぁぁぁ!!!」
余計な事を言うなとオガタが話すのを遮り、口封じをするかつらは姫君学院時代を彷彿とさせるほど、狂気に満ちていた。
「おまえちょっとキレ過ぎだぞ?」
「いやだわ、ワタクシったら。オホホホ。」
ウミに引き攣った微笑みを見せたあと、かつらはオガタに近づき耳打ちをした。
「神園くんは大嵐さんの夫なの。
ワタクシは神園くんをキッパリ諦めているのよ。
余計な事を言ってややこしくしないで。」
「もちろん神園ウミと大嵐ソラの関係は承知しております。
が、しかしあの者が妻帯者である事を忘れて、美しいお嬢様に性的な危害を加える可能性がないとは断言できません。」
「ないわ。絶対にないと言い切れる。ワタクシなんかが付け入る隙はないわ。
2人の愛の前ではワタクシは無力よ。
2人を結ぶ赤い糸は鋼鉄の刃でも切ることはできない。」
かつらは自分自身が口にした言葉で落ち着きを取り戻し、本来の聡明な表情を浮かべた。
「早くしろよ!先に行くぞ?」
「お待ちになって神園くん!」
顔をウミに向けて言い放った後、すぐさまオガタに視線を合わせた。
「いいわね。先ほども話たとおりよ。
砂城院家の力はこれ以上借りるつもりはないわ。
それでないとなんの意味もないの。
身を挺して守ってくれた大嵐さんを探す事こそ、私に課せられた使命。
必ず大嵐さんを見つけ出して、ボタンを掛け違えた2人の為に、神園くんと大嵐さんが愛し合う夫婦として再出発するお手伝いをしたいのよ。
わかってくれるわよね?オガタ。」
オガタはかつらに気付かれないよう静かにため息を吐いた。
「もう置いてくぞ!」
先を歩くウミは怒鳴りだした。
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