私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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ラスト あれから

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「ユウシン?おまえは呼ばれたのか?
ウミ先輩のワンマンライブ?
ネットのニュースによれば速攻でソールドアウトだったのはマジだな。
クラスの奴ら、チケット買えなかった奴ばっか!」

「うん。こないだ僕もソラさんから連絡があったよ。」

「そうか良かったな。おまえは俺とは違って影が薄いだろ?
ソラさんに忘れられてんじゃないか心配したんだ。
でも連絡があったんなら大丈夫だ。これで会場まで一緒に行けるな。
この俺が独りぼっちのおまえを連れて行ってやるよ。」

「実はさ、僕、彼女ができたんだ。
ウミ先輩のライブは彼女と2人で行くから、トモキ君は僕の事を気にしないでいいよ。」

「カノジョ…?」

「そう。彼女!
彼女ができた事をソラさんに伝えたらありがたい事に彼女も招待してくれたよ。」

小柄のユウシンは頷き、下からトモキを見た。
トモキは長身だがユウシンの発言を聞いて、反対に上からユウシンに見下ろされたかのように感じた。

「じゃあねトモキ君!僕は彼女と約束があるからまたね!」

色白のユウシンは頬をピンクに染めながら、ショックを受けて呆然と立ち尽くすトモキを気にもせず走り出した。

「女みたいな顔したユウシンなんぞにカノジョができるなんて…。
それも、この俺より先にだと…。」

トモキはユウシンを追って走り出した。

「待ちやがれ!ユウシンの分際で生意気だぞ!」


****

(写真スタジオ・ヒロコ)

「お疲れ様っす!お先に失礼!」

「セラちゃん、お疲れ様!」

「おう、お疲れ。」

セラは玄関ドアを閉めてエレベーターへ向かって行った。

ガタイの良いオオニシは身体を伸ばす。

あの子セラはいつも元気だな。
大したもんだよ。
アマチュアからプロの格闘家になって、デビュー戦を初勝利で飾るなんてさ。」

スタジオの壁にはセラのデビュー戦の写真が飾られていた。

「それに比べ俺はまだ何もやり遂げていない50の親父。
歳のせいか疲れが取れやしないよ。」

「寂しいことを言わないでよね。
可愛い妻の為にまだまだ頑張ってもらわないと。」

「そうだな。」

「そう!まだまだこれから!」

照れくさそうに笑うオオニシとヒロコの薬指には結婚指輪が光っていた。




セラは姉夫婦が住む部屋でチャイムを鳴らす。

「おうセラちゃん、お疲れさん。お目当てなら寝ているぜ。」

「ウソ!?見せて見せて!」

玄関で脱いだ靴を揃えず、ドタバタ足音を鳴らしリビングへ向かう。

「おじゃましまーす!」

寝室から泣き声が聞こえてくる。

「セラ、アンタのせいで起きちゃったじゃないの?」

母になったソラは赤ん坊を抱き上げながら言った。

「あっ、ごめん!あたしのせいだ。寝てたんだよね。」

「そうだよぉ。やっと寝ついてくれたのに。」

ソラは泣き出す赤ん坊の為に乳房を出して母乳を与えはじめた。
赤ん坊はベソをかきながらも乳首を咥え、乳房に小さな左手を添えている。

「わぁ、姉貴のオッパイを吸い付くように飲んでる。」

「あのさ、この子を可愛がってくれるのは嬉しいけどね。だからといって毎日ウチに来られても困るんだけど。」

「ごめんね。」

ため息を吐くソラに妹は気まずそうに苦笑いを浮かべて謝った。

「どんどん俺に似てくるよな。」

寝室へ入ってきたウミはセラに話しかけた。

「うん、そっくり!」

「またその話?よく見てよね。
私にも似ているよぉ。お目目や耳とか。」

「姉貴にも似ているとこあるよ。」

「セラちゃんがソラに気を遣ってらあ。」

「そうなの?セラ。」

「そんなわけないって。ほんと、ほんと。ほんとだから。」

「ウミは大丈夫?せっかくのお休みでしょ。
ずっと私と起きていて疲れてない?
先に休んで欲しいな。」

「ソラ、俺なら大丈夫だ。それよりあとは俺に任せておまえは寝ろよ。」

「ありがとう。でもまだ私のオッパイ飲んでるから。」

「いや、もう寝ているぞ。」

赤ん坊は目を擦り、ソラの胸で再び眠りについていた。

「可愛い顔で寝ちゃった。」

先ほどのように起こさないよう細心の注意を払い小さな声でセラは言った。

ソラはベビーベッドにゆっくり寝かしつけると、授乳服の中に大きく張った乳房を隠した。


3人は静かに寝室を出て、リビングにあるテーブル席へ腰掛けた。
2人用の席にベビーチェアが置かれていた。

ウミはペットボトルのコーラをグビっと飲む。
顔が天井に向くほどの角度だ。

「ウミィ、炭酸飲料は1ヶ月に一本までだよぉ。
それ飲んだら今月はお終いだからね。」

「わかってる。」

「姉貴、お義兄さんを管理してない?」

「当然。だって健康管理は大切でしょ。
バンドやっているとただでさえ、不規則な生活なんだもん。
私がお世話してあげなきゃ。
それに大切なあの子もいるんだからね。
もしウミの身に何かあったらーーーーー」

義妹のセラがいる手前、会話の内容に恥ずかしくなったウミは話題を変えて近況を話し出した。

「来月のワンマンは評判が良くてよ、SNSでトレンド入りしていたぜ。」

「うんあたしも知ってる。お義兄さんのバンドは海外からも注目されてるんだってね。
ソースはかつらちゃんだからマジだよ。」

褒められたウミは得意げに鼻を擦っている。

「ねぇ、ウミィ?」

「なんだ?」

「この音楽雑誌のインタビュー記事に書いてある事、教えて欲しい。」

「なに?あたしにその記事を読ませて。」

セラはウミが表紙を飾った分厚い音楽雑誌を手に取り、隣にいるソラが人差し指でなぞる。

「あっ、ここか。えっと~、ん~。
来月の29日のギグで俺はファンに発表しようと思ってるんだ。
俺にとってある意味、自分の命やバンドより大切な事でね。
ファンやマスコミにはずっとシークレットにしている事なんだけどさ。」

「あぁ、それね。」

ウミはペットボトルを宙に回してキャッチする行為を繰り返している。

「お義兄さんは何を発表すんの?」

「ソラが出産してくれたおかげで俺は親父になれた事だよ。」

「そんな事したら…ファンの女の子達がバンドから離れていっちゃわない?」

震える声でソラは言った。

「俺はアイドルでもなけれゃ、愛想よく可愛い顔したロックバンドをやる気もない。
嫌いなら聴くなってスタンスだぞ。
前にも話したが俺のバンドは男もかなり聴いてくれてんのソラも知ってんだろうよ。」

「ありがとうウミィ。
ずっと私と赤ちゃんとと共に愛に溢れた家庭を築いていきたい。」

照れくさそうにしているウミだったが、真正面に座るソラから目を逸さなかった。

「もう何があっても、私はね、逃げないよぉ。
!」

赤ん坊は母であるソラの声に反応したようで寝室から泣き声を発した。


























































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