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三章 妻、夏子を守れ!
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「ところで…。」
父が言いかけて止めた。
10秒ほど4人は何をする事もなく黙った。
秋奈には父が何を言いたかったわかっていたし、秋奈も知りたかったので、父に返事をした。
「お父さんはお母さんの事、気になっているでしょ?
ねぇ、お母さん。お母さんは最近留守にする事が多かったけど、どこで何をしていたの?」
「うん。私はね、少しでも家計の足しにしようと思ってパートでも始めようって思っていたのよ。
外出していたのは、面接の為だったの。
いざ、面接に行けば求人広告に記載されていた情報は嘘ばっかり。
ガッカリして帰宅したわ。
お父さんは仕事を辞めていたから、尚更焦るばかりで。」
「さっき言っていた通り、お父さんはお爺ちゃんのお店で働いているのでしょ?
それなら、お金がないわけじゃないよ。
だから大丈夫だよ!」
「そうね、フユちゃん。」
夏子は暖かい笑顔を作った。
「家族に心配をかけてしまったな。
どうしても、プライドが邪魔して長く勤めていた会社を辞めたと言えなかったんだ。」
「お父さんが以前の職場を辞めても、生活はちっとも変わってないし問題ないわ。
私のお小遣いは寧ろアップしているくらいだし。
てか、私もバイトしよっかな?お爺ちゃんの団子屋さんで。」
「僕もお爺ちゃんの団子屋で働くよ!」
「おまえはガキだからダメ!」
「そんなー!」
姉弟がゴチャゴチャ言い争いをする中で、夏子は春彦に言った。
「春くん。
確かに以前とは変わらない生活をしているよ?
そうは言っても、その…。」
「父さんの団子屋じゃ、不安定だって言いたいのだろう?
子ども達の進学費用やら、この家のローンもある。
父さんの道楽で始めた実家の団子屋を継いだって、いつ生活が傾くかもわからない。
そう言いたいのだろう?」
首を横に振って夏子は否定したが、胸の内を見抜かれてしまい、動揺を隠すかのように手で口元を無意識で覆った。
「安心してくれ、全て上手くいくって言うのは嘘になるが、さっきも話したように、売り上げが増していてね、それに比例して俺のやり甲斐も増しているんだよ。
雇われの身では、わからなかった世界が見えてきてね。
父さんは俺に勝手な事をするなと文句を言いながらも、会社をあんな形で辞めて屍の如く生きていた俺が主体的に動く姿を密かに喜んでくれている。」
「自惚れるなよ。春彦。
おまえが店に貢献したなんて、つゆほど思ってないぞ。
なぁにが、雇われのみでは分からなかった世界だ。
おまえは現在も雇われの身だ。
この俺のな。」
「父さん!!」
突然、姿を見せた春蔵に春彦と夏子は驚いた。
子ども達は祖父が連れてきたサクラを夢中で撫でている。
「お義父さん、あのどうされたのですか?
身体は大丈夫ですか?」
「ああ、夏子さん。身体はだいぶ良くなりました。
今日は、このバカ息子が体調が悪いと言うもんでね、ちょっと様子を見に来たところだったんだがーーーー」
小馬鹿にしたように春彦を見る。
「この分なら大丈夫そうだな。」
「わざわざすみません。」
「なあに、久しぶりに孫の顔も見たかったし、丁度良かったんだ。
実のところ、春彦を口実にして孫に会うのが目的だったわけでね。」
「すみません。
お義母さんがお亡くなりになってから色々と辛い思いをされているのに、ご無沙汰でしたから…。」
「謝らんでくれ、夏子さん。
それより、春彦もようやく使い物になってきた。
将来に備えたり用心するのは大切だが夫婦が、家族が不安によってバラバラになるのは元も子もない。
皮肉にも不安は守りに入れば入るほど増幅する。
もう少し、ラクに考えてもいいはずだ。」
「父さん、店は閉めたのか?
お客はこの時間帯に山ほどくるし、お茶会予約があるから仕込みもあるんだぞ?」
「体調不良で帰ったおまえが言えるのか?
仕事に責任感のないバカ息子め!」
「俺がいないと回らないのさ。」
春彦は夏子に微笑んだ。
「体調も先程に比べれば悪くない。
ちょっと疲れていただけかもな。
俺は今から店に戻るよ。
休もうなんて甘かったな。」
「フン!」
「でも…。」
「大丈夫だよ。夏子さん。
コイツを甘やかしてはいけないよ。」
「父さんもしっかり働いてくれよ。
まだまだボケる歳ではないだろ?」
「何を言う!この戯け者!」
2人は犬のサクラを連れて春蔵の車に乗り込んだ。
父が言いかけて止めた。
10秒ほど4人は何をする事もなく黙った。
秋奈には父が何を言いたかったわかっていたし、秋奈も知りたかったので、父に返事をした。
「お父さんはお母さんの事、気になっているでしょ?
ねぇ、お母さん。お母さんは最近留守にする事が多かったけど、どこで何をしていたの?」
「うん。私はね、少しでも家計の足しにしようと思ってパートでも始めようって思っていたのよ。
外出していたのは、面接の為だったの。
いざ、面接に行けば求人広告に記載されていた情報は嘘ばっかり。
ガッカリして帰宅したわ。
お父さんは仕事を辞めていたから、尚更焦るばかりで。」
「さっき言っていた通り、お父さんはお爺ちゃんのお店で働いているのでしょ?
それなら、お金がないわけじゃないよ。
だから大丈夫だよ!」
「そうね、フユちゃん。」
夏子は暖かい笑顔を作った。
「家族に心配をかけてしまったな。
どうしても、プライドが邪魔して長く勤めていた会社を辞めたと言えなかったんだ。」
「お父さんが以前の職場を辞めても、生活はちっとも変わってないし問題ないわ。
私のお小遣いは寧ろアップしているくらいだし。
てか、私もバイトしよっかな?お爺ちゃんの団子屋さんで。」
「僕もお爺ちゃんの団子屋で働くよ!」
「おまえはガキだからダメ!」
「そんなー!」
姉弟がゴチャゴチャ言い争いをする中で、夏子は春彦に言った。
「春くん。
確かに以前とは変わらない生活をしているよ?
そうは言っても、その…。」
「父さんの団子屋じゃ、不安定だって言いたいのだろう?
子ども達の進学費用やら、この家のローンもある。
父さんの道楽で始めた実家の団子屋を継いだって、いつ生活が傾くかもわからない。
そう言いたいのだろう?」
首を横に振って夏子は否定したが、胸の内を見抜かれてしまい、動揺を隠すかのように手で口元を無意識で覆った。
「安心してくれ、全て上手くいくって言うのは嘘になるが、さっきも話したように、売り上げが増していてね、それに比例して俺のやり甲斐も増しているんだよ。
雇われの身では、わからなかった世界が見えてきてね。
父さんは俺に勝手な事をするなと文句を言いながらも、会社をあんな形で辞めて屍の如く生きていた俺が主体的に動く姿を密かに喜んでくれている。」
「自惚れるなよ。春彦。
おまえが店に貢献したなんて、つゆほど思ってないぞ。
なぁにが、雇われのみでは分からなかった世界だ。
おまえは現在も雇われの身だ。
この俺のな。」
「父さん!!」
突然、姿を見せた春蔵に春彦と夏子は驚いた。
子ども達は祖父が連れてきたサクラを夢中で撫でている。
「お義父さん、あのどうされたのですか?
身体は大丈夫ですか?」
「ああ、夏子さん。身体はだいぶ良くなりました。
今日は、このバカ息子が体調が悪いと言うもんでね、ちょっと様子を見に来たところだったんだがーーーー」
小馬鹿にしたように春彦を見る。
「この分なら大丈夫そうだな。」
「わざわざすみません。」
「なあに、久しぶりに孫の顔も見たかったし、丁度良かったんだ。
実のところ、春彦を口実にして孫に会うのが目的だったわけでね。」
「すみません。
お義母さんがお亡くなりになってから色々と辛い思いをされているのに、ご無沙汰でしたから…。」
「謝らんでくれ、夏子さん。
それより、春彦もようやく使い物になってきた。
将来に備えたり用心するのは大切だが夫婦が、家族が不安によってバラバラになるのは元も子もない。
皮肉にも不安は守りに入れば入るほど増幅する。
もう少し、ラクに考えてもいいはずだ。」
「父さん、店は閉めたのか?
お客はこの時間帯に山ほどくるし、お茶会予約があるから仕込みもあるんだぞ?」
「体調不良で帰ったおまえが言えるのか?
仕事に責任感のないバカ息子め!」
「俺がいないと回らないのさ。」
春彦は夏子に微笑んだ。
「体調も先程に比べれば悪くない。
ちょっと疲れていただけかもな。
俺は今から店に戻るよ。
休もうなんて甘かったな。」
「フン!」
「でも…。」
「大丈夫だよ。夏子さん。
コイツを甘やかしてはいけないよ。」
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