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【Case.1】狙われた竜の卵
16 さあ、行こう!
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首長竜に乗るための鞍や手綱に関しては、本来ならそれも装着の仕方の手ほどきがあるらしいんだけど、今日はもう緊急事態だということで、ダドリーさんが引き受けてくれることになった。
そうこうしている間に、他のねぐらから次から次へと首長竜が顔を出し始めて、ダドリーさんの顔が真っ青になった。
「うわっ、おまえらまでよせっ! 気持ちは分かるが、おまえらが行って暴れたら罪もない村が吹っ飛ぶ! っつーか、まとめて生け捕りにされる可能性があるから、行くなっ‼」
「えっ⁉」
確かに、この「牧場」にいる何十頭もの竜が飛べば、仮に追いつけたとしてもその先は大乱闘、卵を略奪した先が何も知らない村人たちが暮らす村だったらと思うと、ダドリーさんでなくともぞっとする。
だけど、生け捕りって。
「こいつらの仲間意識を利用して、追いかけて来た竜も捕まえて素材にして売り払うってことだよ! 卵を狙ってたってのも確かだろうが、成竜を捕まえて、解体して売り飛ばすってのも計画の一つに入っているはずだ。でないと正直、首長竜の卵だけじゃ割に合わねぇ!」
「――――‼」
ダドリーさんがそう叫んだ瞬間、僕の目の前にいた首長竜が、突如として凄まじい咆哮をあたりに響き渡らせた。
「なんだぁ⁉」
あまりにいきなりだったので、僕だけじゃなくダドリーさんも、両手で耳を塞いでいた。
誰だって目の前の竜がいきなり声をあげれば、それはビックリする。
「え……今啼いたのって、キミ?」
やっぱり、僕を乗せずに自分も飛んで追いかけたいのかと一瞬思ったけれど、どうやら少し違ったみたいだった。
ねぐらから出ようとしていた竜たちが一斉にその動きを止めて、視線をこちらに向けたのだ。
「…………ちょっと怖いかも」
「いや、大丈夫だ坊主。こいつぁ……」
言いながらダドリーさんも、僕を乗せてくれようとしている首長竜をじっと見上げていた。
「どうやらコイツが、この牧場内の竜の中でのボス的な立ち位置にいるみたいだ」
「え」
ダドリーさんの声に合わせて、僕も思わず首長竜を見上げる。
目線が合うと、その首長竜はゆっくりと首を動かして、ダドリーさんが装着した鞍を、長い首を捻じるように指し示していた。
「坊主。十中八九、とっとと乗れっつってるぞ」
「……僕もそんな気がします」
多分、今の咆哮で、他の竜たちが飛び出して行こうとしたのを、牽制してくれたっぽかった。
さすが、冒険者ギルド資料室勤務の僕よりも、現役B級冒険者であるダドリーさんの方が、動揺からの立ち直りは早かった。
首長竜の腹部あたりをポンっと叩いて「悪いな」と、声をかけている。
「卵は俺と俺の相棒が追いかけるから、おまえは他の連中を鎮めて、この坊やに応援を呼びに行かせてやってくれるか?」
本当はおまえが追いかけたいだろうけどな、と最後に言葉を発しているところで、ハッとさせられてしまった。
そうか。
竜は仲間意識が強いという話だ。
自分がこの牧場内の竜の主であったなら、確かに自分が先陣を切って行きたいと思うかも知れない。
「……ゴメンね?」
僕はそう言って首長竜の長い首がある方向を見上げた。
「ザイフリート辺境伯領には、僕なんかよりもよっぽど腕の立つ人たちがいるから、一緒に呼びに行こう。向こうには火竜がいるからね。辿り着ければ、きっとまだ間に合うよ!」
分かった、とでも言うように咆哮をした首長竜は、改めて鞍の付いた自分の背を首で指し示した。
「うん、ありがとう」
ここまでくれば、ダドリーさんに言われずとも首長竜は人間と意思の疎通が出来るのだと確信せざるを得ない。
ダドリーさんも「ははは……!」と豪快な笑い声をあげた。
「ああ、まずは首長竜と意思疎通出来た時点で講習の第一段階は合格だ! あとは怯えず、周囲に気を配って、出来る範囲で良いからコイツに指示を出してやれ! 目的地と違うところへ行きそうになったら、きちんと主導権を握って引き返させるようにするんだ!」
「ええっ⁉ ダドリーさん、僕、初心者ですよ……!」
竜への騎乗は、鞍に付いているロープを辿って登るか、腕力がなければ尾の方から歩いて鞍のあるところに行くかの二択だ。
とりあえず、リュート叔父さんやギルさんにちょっとだけ鍛えられてはいるので、僕はロープを掴んで、鞍が付けられたところまでよじ登った。
「誰でも初めてはある、それがたまたま今日というだけだ! 二人乗りの経験があるなら、まだ何とかなる!」
もう一人の指導員であるテッドさんとはほとんど話せていないけれど、少なくともダドリーさんは、初心者の不安を和らげて、自信を持たせる誘導が巧みだと思った。
「その磁石は魔道具だ、行きたいところを念じればそこへ至るまでの道筋を指し示してくれる! 今はザイフリート辺境伯家を指し示してるが、そのあとは火竜騎獣軍に貸すことも含めて、向こうの指示に従うんだ、いいな‼」
「分かりました!」
「おう、じゃあ行って来い! よそ見をして振り落とされるなよ!」
首長竜の背に跨った僕にそう叫んだダドリーさんは、それが合図だとでも言うように、首長竜の腹部を軽く叩いた。
「!」
閉じられていた首長竜の羽根が音を立てて横へと広がって、首長竜自身もゆっくりと立ち上がる。
「わ……わっ」
僕は慌てて手綱を持ってバランスを保つ。
首長竜の方は、我関せずとばかりに、それでも少しゆっくりと歩を進めると、ねぐらから身体の全てを外へと出した。
一度少しだけ身を屈めた後、勢いをつけるようにして、その場から上空へと飛び上がった。
「よしっ、じゃあ行こうか! ザイフリート辺境伯領へ‼」
僕の上着のポケットから洩れて伸びる光の方角へと、僕を乗せた首長竜はゆっくりと旋回した。
そうこうしている間に、他のねぐらから次から次へと首長竜が顔を出し始めて、ダドリーさんの顔が真っ青になった。
「うわっ、おまえらまでよせっ! 気持ちは分かるが、おまえらが行って暴れたら罪もない村が吹っ飛ぶ! っつーか、まとめて生け捕りにされる可能性があるから、行くなっ‼」
「えっ⁉」
確かに、この「牧場」にいる何十頭もの竜が飛べば、仮に追いつけたとしてもその先は大乱闘、卵を略奪した先が何も知らない村人たちが暮らす村だったらと思うと、ダドリーさんでなくともぞっとする。
だけど、生け捕りって。
「こいつらの仲間意識を利用して、追いかけて来た竜も捕まえて素材にして売り払うってことだよ! 卵を狙ってたってのも確かだろうが、成竜を捕まえて、解体して売り飛ばすってのも計画の一つに入っているはずだ。でないと正直、首長竜の卵だけじゃ割に合わねぇ!」
「――――‼」
ダドリーさんがそう叫んだ瞬間、僕の目の前にいた首長竜が、突如として凄まじい咆哮をあたりに響き渡らせた。
「なんだぁ⁉」
あまりにいきなりだったので、僕だけじゃなくダドリーさんも、両手で耳を塞いでいた。
誰だって目の前の竜がいきなり声をあげれば、それはビックリする。
「え……今啼いたのって、キミ?」
やっぱり、僕を乗せずに自分も飛んで追いかけたいのかと一瞬思ったけれど、どうやら少し違ったみたいだった。
ねぐらから出ようとしていた竜たちが一斉にその動きを止めて、視線をこちらに向けたのだ。
「…………ちょっと怖いかも」
「いや、大丈夫だ坊主。こいつぁ……」
言いながらダドリーさんも、僕を乗せてくれようとしている首長竜をじっと見上げていた。
「どうやらコイツが、この牧場内の竜の中でのボス的な立ち位置にいるみたいだ」
「え」
ダドリーさんの声に合わせて、僕も思わず首長竜を見上げる。
目線が合うと、その首長竜はゆっくりと首を動かして、ダドリーさんが装着した鞍を、長い首を捻じるように指し示していた。
「坊主。十中八九、とっとと乗れっつってるぞ」
「……僕もそんな気がします」
多分、今の咆哮で、他の竜たちが飛び出して行こうとしたのを、牽制してくれたっぽかった。
さすが、冒険者ギルド資料室勤務の僕よりも、現役B級冒険者であるダドリーさんの方が、動揺からの立ち直りは早かった。
首長竜の腹部あたりをポンっと叩いて「悪いな」と、声をかけている。
「卵は俺と俺の相棒が追いかけるから、おまえは他の連中を鎮めて、この坊やに応援を呼びに行かせてやってくれるか?」
本当はおまえが追いかけたいだろうけどな、と最後に言葉を発しているところで、ハッとさせられてしまった。
そうか。
竜は仲間意識が強いという話だ。
自分がこの牧場内の竜の主であったなら、確かに自分が先陣を切って行きたいと思うかも知れない。
「……ゴメンね?」
僕はそう言って首長竜の長い首がある方向を見上げた。
「ザイフリート辺境伯領には、僕なんかよりもよっぽど腕の立つ人たちがいるから、一緒に呼びに行こう。向こうには火竜がいるからね。辿り着ければ、きっとまだ間に合うよ!」
分かった、とでも言うように咆哮をした首長竜は、改めて鞍の付いた自分の背を首で指し示した。
「うん、ありがとう」
ここまでくれば、ダドリーさんに言われずとも首長竜は人間と意思の疎通が出来るのだと確信せざるを得ない。
ダドリーさんも「ははは……!」と豪快な笑い声をあげた。
「ああ、まずは首長竜と意思疎通出来た時点で講習の第一段階は合格だ! あとは怯えず、周囲に気を配って、出来る範囲で良いからコイツに指示を出してやれ! 目的地と違うところへ行きそうになったら、きちんと主導権を握って引き返させるようにするんだ!」
「ええっ⁉ ダドリーさん、僕、初心者ですよ……!」
竜への騎乗は、鞍に付いているロープを辿って登るか、腕力がなければ尾の方から歩いて鞍のあるところに行くかの二択だ。
とりあえず、リュート叔父さんやギルさんにちょっとだけ鍛えられてはいるので、僕はロープを掴んで、鞍が付けられたところまでよじ登った。
「誰でも初めてはある、それがたまたま今日というだけだ! 二人乗りの経験があるなら、まだ何とかなる!」
もう一人の指導員であるテッドさんとはほとんど話せていないけれど、少なくともダドリーさんは、初心者の不安を和らげて、自信を持たせる誘導が巧みだと思った。
「その磁石は魔道具だ、行きたいところを念じればそこへ至るまでの道筋を指し示してくれる! 今はザイフリート辺境伯家を指し示してるが、そのあとは火竜騎獣軍に貸すことも含めて、向こうの指示に従うんだ、いいな‼」
「分かりました!」
「おう、じゃあ行って来い! よそ見をして振り落とされるなよ!」
首長竜の背に跨った僕にそう叫んだダドリーさんは、それが合図だとでも言うように、首長竜の腹部を軽く叩いた。
「!」
閉じられていた首長竜の羽根が音を立てて横へと広がって、首長竜自身もゆっくりと立ち上がる。
「わ……わっ」
僕は慌てて手綱を持ってバランスを保つ。
首長竜の方は、我関せずとばかりに、それでも少しゆっくりと歩を進めると、ねぐらから身体の全てを外へと出した。
一度少しだけ身を屈めた後、勢いをつけるようにして、その場から上空へと飛び上がった。
「よしっ、じゃあ行こうか! ザイフリート辺境伯領へ‼」
僕の上着のポケットから洩れて伸びる光の方角へと、僕を乗せた首長竜はゆっくりと旋回した。
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