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side エルク③
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僕だと思っていた人が泉から出て行き、僕とお姉ちゃん、眠らされたルイナという人と、まだ目を覚まさない精霊だけが残される。
「本当に大丈夫なの?」
お姉ちゃんに再度心配される。
「うん……。心の整理が出来たとは言わないけど、前に僕の中にもう1人誰かいるんじゃないかって思ったことはあったんだ。その時に一番怖かったのは、元々のこの体の持ち主であるエルクという男の子の人生を僕が奪ってしまったんじゃないかってこと。そうじゃなかっただけでよかったって思ってるよ」
まだ心はモヤモヤしたままだけど、あの人が元々のこの体の人格で、僕に体を奪われたから外に出たと言われるよりはマシだ。
そうだとすれば、罪悪感に押しつぶされていたかもしれない。
「私はずっとエルクは変わってしまったと思ってた。でも、小さい頃のエルクの面影はちゃんと残ってたから、完全に別人になったわけじゃないとも思ってて、さっきの人が言ったことに正直安心してる。さっきの人の言うことを信じるなら、ここ数年もエルクは自分の意思でちゃんと生きてきたの。だから今までの自分を受け入れて前を向いて生きてほしい」
お姉ちゃんに肩を掴まれてまっすぐ見つめられて言われる。
「うん、ありがとう。お姉ちゃんがどう思ったかわからないけど、僕はあの人が悪い人には思えなかった。天使様を連れ去ったことが良い事だとは言わないけど、本当に僕の自由にさせてくれてたんだと思う。それに、僕や周りに危機がある時に、なんだかやらないといけないような、そんな不思議な感覚があったと思う。多分あの人がいなかったら取り返しのつかないことになってたんじゃないかなって思うんだ」
ルフを見つけた時に森に行こうと思ったことや、フランベルグ領に向かう道中に引き返すことになったラクネ達に支援魔法を掛けないといけないと思ったのは、多分僕に危険を知らせてくれていたからだと思う。
あの時ルフを見つけてなければ、ラクネ達に支援魔法を掛けてなければ、そう思うだけで恐ろしい。
「……そうね。善悪はわからないけど、エルクのことを考えてくれていたとは思うわ」
「それにね、僕は一度死んでるみたいだから、今記憶が混濁しているのが生き返る代償なのだとしたら安いものだよ。お姉ちゃんと話してたら落ち着いてきたから本当にもう大丈夫だと思う」
落ち着いて考えると、記憶が混濁するという悪いことに対して割に合わない程の恩恵を受けていたとわかる。
「今度はちゃんと抱え込まずにお姉ちゃんに相談するのよ」
「うん」
「精霊様も生まれたみたいだしリーナ達のところに帰りたいわけだけど、この子どうしたらいいのかな?ルイナって呼ばれてたけど……」
「カムイ君のところにって言ってたけど、カムイ君の知り合いなのかな?帝国に行けばって言ってたし、僕達と一緒に行動して欲しいみたいだったよね?」
「ここに置いていくわけにもいかないから、とりあえず一緒にリーナ達のところに行ってから考えようか」
「うん、そうだね」
ルイナさんをおんぶして、来た時と逆の手順で泉を出る。
「出発する前にルフと話してもいい?」
「エルクと契約してなかったみたいだし、色々と聞かないといけないわね」
『ルフに聞きたいことがあるんだ。本当は僕と契約してなかったこととか聞いたんだけど……』
ルフに呼びかける。
『そちらに向かいます。少しだけお時間をください』
ルフから返事がくるが、ルフは王都でお母さん達と暮らしているはずだ。
どうやって来るつもりなのか考えていると、ルフがすごい速さで飛んできた。
「お待たせしました。あの方から全てお聞きしたと聞いています。まずは騙していたことを謝罪します」
僕の前に降りたルフは早々に頭を下げる。
「ルフが僕のお願いを聞いてくれていたのは本当のことだから謝らなくてもいいよ。ルフはこの子のことを知ってる?それから、どうやってこんなに早くここまで来たの?王都にいたはずだよね?僕と契約しなかった経緯とか色々と教えてくれる?」
さっき聞いた話ではよくわからない点が多いのでルフからも話を聞かせてもらう。
「もちろん全てお話しします。まず、エルク様と契約しようとしたあの時、エルク様と契約する為に魂を繋げた瞬間に脅されました。私の本当の主はエルク様ではありません。そして、逆らうことが出来ずに主と契約しました。本来悪魔はスキルや魔法を習得することは出来ませんが、エルク様が創造のスキルを今でも使えるように、私も色々と出来ることが増えました。現在、王都では私の分身体がエルク様のご両親と生活しています。ここからさほど離れていないところにおり、魔法で移動を補助していたのでこれだけ早く到着しました」
ルフが説明を始める。
確かに自身を鑑定しても、分身というスキルが存在している。
「そうだったんだ」
「聞いていると思いますが、スキル屋の正体も私の分身体です。それから、エルク様と関係のあるところだと、ロックも私です」
「えっ!」
色々と覚悟していたつもりではあったけど、これは驚きだ。
ロック君とは仲良くなれたと思っていたのに少し残念に思う。
「私の分身体の一つはロックという名を与えられて学院に潜り込むことになりました。エルク様に敗北をあじあわせて、訓練で魔法をたくさん使わせる為にです。エレナ様との対戦を楽しみにしていたエルク様の心を利用したのです。エルク様の魔力は甚大です。エルク様が魔力を消費することは主の魔力を高めることに大きく繋がります」
「そっか……。そうだとしてもロック君に負けたのはやっぱり悔しいな」
「再戦であればいつでも私がお相手します。……今お話ししたように、私は実体のない主の手となり足となり、色々と裏で工作していました。主が外の世界に干渉する媒体が私だったということです」
僕は本当のルフのことを全然知らなかったみたいだ。
「この子は?それから、カムイ君もルフの分身体だったりするの?」
「ルイナは主の弟子になります。元々はルイナと私も主と共に天界に赴く予定でしたが、お一人で向かわれました。カムイはルイナの兄弟子になります」
「カムイ君のところに連れて行くのがいいってこと?」
「主が言われたわけではありませんので私の憶測になりますが、主はルイナが幸せになることを望んでいます。ただ、私には何が正解かはわかりません」
「起きたらどうしたいか本人に聞くしかないわよね」
お姉ちゃんの言う通りかもしれない。まずは本人の意思を確認しないと。
「そうだね。ルフはこれからどうするの?僕の執事でいる必要も無いってことだよね?」
僕と契約していなかったことをバラした以上、ルフが僕にこれ以上従う理由はなくなった。
「主の決着がつき次第、主との主従契約はなくなることになってます。もしエルク様が許してもらえるならエルク様にお仕えしたいと考えています。結果として、エルク様とは契約をあの時しませんでしたが、私の命を救って頂いたのはエルク様です」
「魔窟に帰らなくていいの?契約が切れれば帰れるかもしれないって言ってたよね?」
「魔窟に帰る方法は既に主が見つけてくれています。今この時にでも帰ろうと思えば帰れますが、それは命を救われた恩を返してからでも遅くありません。悪魔は滅されない限り死にませんから」
「それなら、改めてこれからもよろしくね」
「よろしくお願いします。それでは、私は王都にいることになっていますので、ラクネ様、リーナ様と合流する前に失礼させて頂きます。何かありましたら遠慮なくお申し付けください」
ルフが一礼してから文字通り姿を消す。
転移したのかな。
「本当に大丈夫なの?」
お姉ちゃんに再度心配される。
「うん……。心の整理が出来たとは言わないけど、前に僕の中にもう1人誰かいるんじゃないかって思ったことはあったんだ。その時に一番怖かったのは、元々のこの体の持ち主であるエルクという男の子の人生を僕が奪ってしまったんじゃないかってこと。そうじゃなかっただけでよかったって思ってるよ」
まだ心はモヤモヤしたままだけど、あの人が元々のこの体の人格で、僕に体を奪われたから外に出たと言われるよりはマシだ。
そうだとすれば、罪悪感に押しつぶされていたかもしれない。
「私はずっとエルクは変わってしまったと思ってた。でも、小さい頃のエルクの面影はちゃんと残ってたから、完全に別人になったわけじゃないとも思ってて、さっきの人が言ったことに正直安心してる。さっきの人の言うことを信じるなら、ここ数年もエルクは自分の意思でちゃんと生きてきたの。だから今までの自分を受け入れて前を向いて生きてほしい」
お姉ちゃんに肩を掴まれてまっすぐ見つめられて言われる。
「うん、ありがとう。お姉ちゃんがどう思ったかわからないけど、僕はあの人が悪い人には思えなかった。天使様を連れ去ったことが良い事だとは言わないけど、本当に僕の自由にさせてくれてたんだと思う。それに、僕や周りに危機がある時に、なんだかやらないといけないような、そんな不思議な感覚があったと思う。多分あの人がいなかったら取り返しのつかないことになってたんじゃないかなって思うんだ」
ルフを見つけた時に森に行こうと思ったことや、フランベルグ領に向かう道中に引き返すことになったラクネ達に支援魔法を掛けないといけないと思ったのは、多分僕に危険を知らせてくれていたからだと思う。
あの時ルフを見つけてなければ、ラクネ達に支援魔法を掛けてなければ、そう思うだけで恐ろしい。
「……そうね。善悪はわからないけど、エルクのことを考えてくれていたとは思うわ」
「それにね、僕は一度死んでるみたいだから、今記憶が混濁しているのが生き返る代償なのだとしたら安いものだよ。お姉ちゃんと話してたら落ち着いてきたから本当にもう大丈夫だと思う」
落ち着いて考えると、記憶が混濁するという悪いことに対して割に合わない程の恩恵を受けていたとわかる。
「今度はちゃんと抱え込まずにお姉ちゃんに相談するのよ」
「うん」
「精霊様も生まれたみたいだしリーナ達のところに帰りたいわけだけど、この子どうしたらいいのかな?ルイナって呼ばれてたけど……」
「カムイ君のところにって言ってたけど、カムイ君の知り合いなのかな?帝国に行けばって言ってたし、僕達と一緒に行動して欲しいみたいだったよね?」
「ここに置いていくわけにもいかないから、とりあえず一緒にリーナ達のところに行ってから考えようか」
「うん、そうだね」
ルイナさんをおんぶして、来た時と逆の手順で泉を出る。
「出発する前にルフと話してもいい?」
「エルクと契約してなかったみたいだし、色々と聞かないといけないわね」
『ルフに聞きたいことがあるんだ。本当は僕と契約してなかったこととか聞いたんだけど……』
ルフに呼びかける。
『そちらに向かいます。少しだけお時間をください』
ルフから返事がくるが、ルフは王都でお母さん達と暮らしているはずだ。
どうやって来るつもりなのか考えていると、ルフがすごい速さで飛んできた。
「お待たせしました。あの方から全てお聞きしたと聞いています。まずは騙していたことを謝罪します」
僕の前に降りたルフは早々に頭を下げる。
「ルフが僕のお願いを聞いてくれていたのは本当のことだから謝らなくてもいいよ。ルフはこの子のことを知ってる?それから、どうやってこんなに早くここまで来たの?王都にいたはずだよね?僕と契約しなかった経緯とか色々と教えてくれる?」
さっき聞いた話ではよくわからない点が多いのでルフからも話を聞かせてもらう。
「もちろん全てお話しします。まず、エルク様と契約しようとしたあの時、エルク様と契約する為に魂を繋げた瞬間に脅されました。私の本当の主はエルク様ではありません。そして、逆らうことが出来ずに主と契約しました。本来悪魔はスキルや魔法を習得することは出来ませんが、エルク様が創造のスキルを今でも使えるように、私も色々と出来ることが増えました。現在、王都では私の分身体がエルク様のご両親と生活しています。ここからさほど離れていないところにおり、魔法で移動を補助していたのでこれだけ早く到着しました」
ルフが説明を始める。
確かに自身を鑑定しても、分身というスキルが存在している。
「そうだったんだ」
「聞いていると思いますが、スキル屋の正体も私の分身体です。それから、エルク様と関係のあるところだと、ロックも私です」
「えっ!」
色々と覚悟していたつもりではあったけど、これは驚きだ。
ロック君とは仲良くなれたと思っていたのに少し残念に思う。
「私の分身体の一つはロックという名を与えられて学院に潜り込むことになりました。エルク様に敗北をあじあわせて、訓練で魔法をたくさん使わせる為にです。エレナ様との対戦を楽しみにしていたエルク様の心を利用したのです。エルク様の魔力は甚大です。エルク様が魔力を消費することは主の魔力を高めることに大きく繋がります」
「そっか……。そうだとしてもロック君に負けたのはやっぱり悔しいな」
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僕は本当のルフのことを全然知らなかったみたいだ。
「この子は?それから、カムイ君もルフの分身体だったりするの?」
「ルイナは主の弟子になります。元々はルイナと私も主と共に天界に赴く予定でしたが、お一人で向かわれました。カムイはルイナの兄弟子になります」
「カムイ君のところに連れて行くのがいいってこと?」
「主が言われたわけではありませんので私の憶測になりますが、主はルイナが幸せになることを望んでいます。ただ、私には何が正解かはわかりません」
「起きたらどうしたいか本人に聞くしかないわよね」
お姉ちゃんの言う通りかもしれない。まずは本人の意思を確認しないと。
「そうだね。ルフはこれからどうするの?僕の執事でいる必要も無いってことだよね?」
僕と契約していなかったことをバラした以上、ルフが僕にこれ以上従う理由はなくなった。
「主の決着がつき次第、主との主従契約はなくなることになってます。もしエルク様が許してもらえるならエルク様にお仕えしたいと考えています。結果として、エルク様とは契約をあの時しませんでしたが、私の命を救って頂いたのはエルク様です」
「魔窟に帰らなくていいの?契約が切れれば帰れるかもしれないって言ってたよね?」
「魔窟に帰る方法は既に主が見つけてくれています。今この時にでも帰ろうと思えば帰れますが、それは命を救われた恩を返してからでも遅くありません。悪魔は滅されない限り死にませんから」
「それなら、改めてこれからもよろしくね」
「よろしくお願いします。それでは、私は王都にいることになっていますので、ラクネ様、リーナ様と合流する前に失礼させて頂きます。何かありましたら遠慮なくお申し付けください」
ルフが一礼してから文字通り姿を消す。
転移したのかな。
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