天職が『盗賊』という理由で追放されました。盗みを極めし男はやがて魔王と呼ばれる

こたろう文庫

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視察③ 路地裏

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商業ギルドのことは、ギルドマスターに話をしてから対処法を考えることにして、次はスラムがあるのか確認しにいく。

「スラムがあるとしたらどこにあるのかな?」

「あるのかわかりませんが、あるとすれば街の隅の方ではないでしょうか」

「とりあえず、人通りのなさそうな方へと歩いてみようか。見つからなかったら散歩ってことで」

「お供します」

シトリーとドンヨリとした空気がする、負のオーラが溜まっていそうな方へと歩いていく。

実際にはそんなのわからないので、細い道を選んで適当に歩いているだけだけど……。

「兄ちゃん達、ちょいと待ちな!」
歩いていたら、3人組の男に止められる。

「なんでしょうか?」

「この先は行き止まりだ。何の用だ?」
この先に何かあるようだ。この人達は見張りなのかな?

「この先に何かあるんですか?」

「知らないなら悪いことは言わねえ。来た道を戻りな」
どうしようか……。明らかにこの先で何か悪いことをしている。

気になるけど、騒ぎを起こしたくはないな。

「わかりました」
僕達は一旦この場を離れる。

「何をやってるのか気になるけど、今は騒ぎを起こしたくないんだよね。フェレスさんやルマンダさんには黙って街に来ているから、何か予定が狂うかもしれないし……」

「私がコソッと見てきましょうか?」
シトリーが簡単そうに言った。

「出来るの?」

「絶対に見つからないとは言えませんが、さっきの道を通らなくても家を飛び越えて奥に行くことも出来ますし、仮に見つかったとしても、姿を隠したまま逃げることは出来ると思います。シンクちゃんくらいに強い人がいれば話は変わりますが……」

「……それじゃあ頼もうかな。無理しない程度で、見てくるだけでいいからね」
今のシンクくらいに強い人なんてそうそういないだろう。
心配ではあるけど、シトリーが他の人よりもかけ離れた能力をしているのはわかっているので、シトリーに頼ることにする。

「わかりました。行ってきます」
シトリーが目に追えない速さで跳んでいった。

「見てきました」
すぐにシトリーが戻ってくる。

「ありがとう。何があった?」

「……多分ですが、人身売買が行われていました。この先に古い家があって、その中に鎖に繋がれた人が5人はいました。3人は子供で2人は大人の女性です。他にもいるかもしれません」

「それって捕まるような悪いことだよね?」
この世界での法はよく知らないので、悪いことだと思いつつも確認する。

「売られる方が奴隷であれば、法は犯していません。ただし、今回売られそうになっているのは奴隷ではないと思います。奴隷であれば鎖に繋ぐ必要はないです。もちろん、罪もなく無理矢理奴隷とされた人を売ることはいけません」

「拐われてきた人の可能性が高いってことだよね?」

「そうです」
どうしようか……。
助けたほうがいいのはわかるけど、ここで騒ぎを起こすのはよくないよな……。

「マオ様、助けるのであれば早くしたほうがいいです。隷属の呪法を使われてしまった場合、呪いを解くことは困難になります」

「どうやったら解けるかわかる?」

「私の知っている限りだと、主人が死んだ場合と呪法を掛けた際の核が壊れた時です。主人が複数人となっている場合は全員死なないといけません」

「呪いをかけられた人を助けるには、主人になっている人を皆殺しにするか、その核というやつを壊さないといけないんだね。その核っていうのは壊せる物なの?」

「強く命じる際に取り出すことはあるそうですが、普通は収納に入っています。マオ様であれば盗むことも出来るかもしれませんが、出来なかった場合には拷問等をして、本人の意思で出させないといけません。手に入れる事が出来れば簡単に壊せると思います」
僕の盗むはチートなので確かに可能かもしれない。
でも出来ないかもしれないので、呪いを掛けられる前に助けたい。

「助けたいんだけど、出来るだけ騒ぎを大きくしたくないんだ。シトリーの力で目立たずに囚われている人を救ってくることは出来ないかな?難しそうなら強行突破しようとは思うけど、可能なら正直助かる」
シトリーが目にも留まらぬ速さで救い出してきてくれれば、これから売ろうとしている人がいなくなることでの騒ぎにはなるけど、乱闘騒ぎになったりはしないはずなので、最小限で抑えられるはずだ。

シトリーに丸投げするような形になってしまうけど……

「任せて下さい。マオ様の為にやり遂げてみせます」

「無理はしてない?大丈夫?」

「大丈夫です。行ってきます」
シトリーが消えるように跳んでいき、少しして5人抱えて戻ってきた。

「大丈夫だった?」

「この人達は気絶しているだけです。ただ、この子は既に隷属されていました。外すことが出来ないので、この首輪に呪いが掛けられていると思います」

「ありがとう。それでもシトリーのおかげで4人は助かったよ」
一歩遅かったようだ。
僕が悩んでいなければと悔やまれる。

僕は首輪の付けられた男の子に盗むを使う。
首輪を盗むことが出来れば、呪いも一緒に男の子から離れると思う。

『盗むが成功しました。盗むものを選んで下さい』

▶︎スキル
▶︎財力
▶︎心

ダメだ。選択肢に首輪が出なかった。
僕の運が悪いのか、それとも首輪は呪われていて外せないから出てこないのか……。

可能性があるのは財力か?首輪が含まれていれば盗めるかもしれない。
他のものに関しては後で返せばいいし……。

それか心かな?盗めば隷属の呪法よりも僕の方を優先してくれないかな……。

迷った結果、僕は財力を選択する。

結果、男の子の首には首輪が付いたまま消えることはなく、収納には銅貨が3枚と銭貨が2枚入ってきた。

収納が使えるようになってから初めて盗むのスキルを使ったけど、何が収納に入ったかは感覚としてわかる。

「マオ様、厳しいことを言いますが、首輪を外せないのであればこの子は置いていくべきです。今はこの子が気絶しているので問題ありませんが、口封じの為に自害するように命令が下された場合には、命令に逆らえず死のうとしてしまいます」
時間稼ぎをするにも、ずっと気絶させるか、自害出来ないように拘束しておくしかないのか。

「この子を諦めたくない。騒ぎが大きくなってもいいから主人を見つける。やりたくはないけど、この子がこれから奴隷として無理矢理生きていくくらいなら、ここにいる人を犠牲にしたほうがいい。天秤に掛けるものではないけど、罪のない子供と大勢の悪人なら、罪のない子供の命の方が重いと僕は思う」

「……私もそう思います。その方がいいです」

「ただ、出来るだけ殺したくはない。シトリーには手間を掛けるけど、手加減して気絶させることは出来る?」

「大丈夫です。さっきと同じことをすれば気絶するはずです。さっきは気絶させるつもりはありませんでしたが……」
抱えてきた人が気絶していたのは、シトリーが何かしたからだったようだ。

「それなら、まずは殺さずに気絶させよう。どの人が主人なのか、どの人が呪法の核を持っているのかわからないから、ここにいる人全員を気絶させて、僕が盗むを使ってみる。シトリーは核を見れば、それが核だってわかる?」

「実物を見たことはありませんが、核は黒い球だそうです」

「それらしい物があったら全部壊すことしよう。頼りにしてるね」

「はい!」

僕はシトリーにやって欲しいことを説明する。
大丈夫。うまくいくはずだ
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