ピースオブケイク

沙那

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劣等感。凡庸。

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 僕は部屋に篭り曲を作っていた。

たいそうなモノじゃ無い。この前見た"ピスケ"の演奏に触発されただけだ。



小学生の頃にピアノを習っていたお陰で楽譜は読めた。

ギターはあまり得意では無かったけど、コードを並べて弾けばそれっぽくなる。

そこに適当なストロークをつけてその時の気持ちを歌詞に乗せて歌う。

ちなみに歌もあまり得意じゃない。


でもそれで良かった。
狭い部屋で色々考えてしまう。

どうせ後ろ向きな事ばかり考えるのだからと、歌詞は卑屈でも旋律は明るくした。


どうせプロ目指してないし、と誰も見てないのに言い訳をした。


本音を言えば、音楽をやって有名になりたかった。

けど一流を目指していると胸を張れるほどの努力は出来なかった。

誘われれば飲みに行くし、気分が乗らない日は1度もギターを握らなかった。



でも今日は未来を歌おう。
とびきりデカい夢を。



目を閉じて考えるのは、スポットが当たる自分。

アリーナは満席で外にもファンが溢れてる。

僕の爪弾く曲に合わせて客は揺れる。


『夢は必ず叶う。努力は報われる』
『願えば実現する。全て上手く行く』





壁にもたれた背中に衝撃が走る。隣人からの熱い声援だ。

現実に引き戻され、虚しさを噛み締める。




小さい頃、音楽の才能があると言われていた。
けど男でピアノを弾いてる事に羞恥心を覚えた。

音楽は辞めたけど、部活ではエースだった。
仲間に唆されプロチーム入るか!なんて笑った。その年の大会は2回戦で負けた。

勉強は出来ない方では無かったが、面倒だったので進学先はランクを落とした。



なんでも卒なくこなせるタイプだった。
だが結果がすぐに出ないとつまらなかった。

1回目で他の人より上手く出来た事は、何度も練習した1番苦手だった奴に大体劣ってた。

何かに真剣に向き合った事なんて無かったが「何者か」になりたかった。


普通になんとなくやれば、才能だ!
と言われ有名に。
何かを披露すれば人気者に。

そんな事にまだ出会えてないだけだと、
いろんな事を手当たり次第やってすぐ辞めた。



何か残してから死にたかった。



音楽もスポーツも見るよりやる方が好きだった。
享受するだけで楽しんでいる奴らが理解出来なかった。

僕はこんな奴らとは違う、と。
僕が生み出した物は世紀のヒット間違い無しだと。


SNSを開けばそんな奴で溢れかえっていた。
皆が皆、同じ事を言っていた。

人とは違う。才能がある。

そう思う事が普通であり、
そんな凡庸な奴らが何かを残せた事は無いと。

酷く劣等感を抱えていた。
きっと努力で磨き上げる事が出来た「何者か」と自分を比べて。



【今話題沸騰!!現役高校生シンガー!!】


狭い部屋でネットに書き込む。
『こんなの大した事ない。』

そんな書き込みさえあっという間に流され、惨めな気持ちになる。

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