ピースオブケイク

沙那

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視線

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 「先輩って、いつも下見て歩いてますよね」

「何、急に」

「前見てないと人にぶつかりますよ」

「大丈夫、誰も僕の近くなんて通らないよ」

「出た、先輩の卑屈~。その癖やめなって」


ハルキに諭される。

僕は人とすれ違うのが苦手だった。
品定めされてる気がするから。



道の反対を歩く男2人組がはしゃいでいる。

「今の子チョー可愛くね?!」

「いや、俺はもっとおっぱい大きくて背が低くて黒髪のぉ~」

「ギャハハ」



まさにこれだ。この逆を想像してしまう。

カッコイイと思われる?

まさか。ダサい、ブス、醜い。

そんな事を思われる様な気がするのだ。
人からの視線は暴力だった。


じゃあ身なりを整えればいいと治るかと言われてもそんな事は無かった。

マネキン買いをしたって浮いてると感じる。


僕は僕の魂から、細胞の1つまでが汚れている。自分を信じられない。

もはや強迫観念だった。日の当たる場所と人混みは僕には苦痛だった。



僕は主役に憧れていた。
カーストのトップに憧れていた。
タレントに憧れていた。

彼らの持つものは何一つ持っていない。



「あ、見てハルキ。あの子めっちゃキレイ…モデルかな」

「本当だ!すっご!顔小さ~肌キレ~細~い!可愛い~」


自分の醜さに敏感な僕は、人の美しさにも敏感だった。

そしてこの日はこれ以降最悪な気持ちで過ごすハメになった。
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