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9.蒼生

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軽くシャワーを浴び、ホテルを後にした俺たちは、タクシーに乗り蒼生の家に向かった。後部座席では、運転手に見えないようにしっかりと手を繋いでいた。今までセフレと手を繋いで移動したことはなくて、自分でも驚いている。
暫くすると、タクシーは大きなタワーマンションの前で止まった。蒼生が料金を払い、タクシーを降りたのでそれに続く。オートロックを解除し、エントランスへと入って行く。

「驚いた?部屋はもっと驚くよ」

エレベータに乗り込み、最上階のボタンを押す。二人きりになると、今度は服の裾をためらいがちに掴んできた。…怯えてる??最上階に着き扉が開くと、天井までがっちりガードされた門扉があった。ロックを解除し、蒼生は門を開ける。

「さ、入って」
「お邪魔、します…」

委縮しながら門をくぐる。今度はカードキーで、玄関と思われる自動ドアを開けた。

「僕しかいないから遠慮しないで」
「あ、うん」

広い玄関は、一面白い大理石でピカピカだった。凄すぎて、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
リビングに案内され、ソファーに座るように促された。飲み物を持ってきた蒼生は、眼鏡を外して俺の横にぴったりと座った。

「驚いた?」
「そりゃあ、こんな家入ったことないし…」
「……気になる?」

蒼生の声がどことなく淋しそうに聞こえたので、気にはなるが俺は聞くのを止めた。

「蒼生が話したくないなら、聞かない」
「じゃあ、そのうち、ね。あ、先に言っとくけど、この家に入れたのが初めてだから…」
「えっ?」

そう言って俯いた蒼生の耳は、さっきまでと違い真っ赤にしていた。
どっちが本来の蒼生か分からないが、きっとどっちも蒼生なんだろう。
なんか可愛くて、俺は蒼生の肩を抱き寄せた。

「翔」
「あ…」
「翔だよ、蒼生」
「あ、その、僕どうも興奮するとなんて言うか…」

湯気でも出そうなくらい真っ赤な顔で、目を逸らす蒼生。ちょっと仕返ししてもいいかな?

「セフレにもそんな顔するの?」
「し、しないよ!彼らには初めから優しくなんかしないし、その、お互い性欲処理というか…」
「じゃあ、俺は?」
「…か…翔の事はほんとに好き…!あの時言ったのは全部ほんとで…。えっと…さっきはごめん。翔にあんなことするつもりは無かったんだけど、その、翔にキスされて理性が無くなったというか…」
「いっつもああなの?」
「ち、違う!普段はほとんど話さないし、僕はほとんど寝てるだけで何もしないし!自分でも、あんなになるなんて思わなくて…」

涙目で俺を見る蒼生。ほんとさっきとは別人だな。…チュッ。

「えっ?」

きょとんとした顔。なんだこのカワイイ生き物。…なんかいいな。あ、そっか…。

「そんなに俺の事好き?」
「…好き」
「じゃ、付き合う?」
「えっ?!でも、翔は女の子が…」
「今まではね。でも、俺も蒼生が好きみたい。いや、好きだよ」
「ほんとに?夢じゃ無いよね?」

自分の頬っぺたを抓る蒼生。ダメだ、可愛すぎる。エッチ以外はまるで小動物だな。

「ほんとに僕で良いの?自分で言うのもあれだけど、その…」
「カワイイ蒼生も、エッチな蒼生も好きだよ」

蒼生の綺麗な目から涙が溢れた。













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