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しおりを挟む終業式が終わり照りつく太陽の下、漁師町の海沿いの道を私と親友の萌は歩いていた。
「マジで!タケ先輩ってば、ミオとレイコ先輩を二股かけてたの?」
「はぁ~しかも私の方がキープだって、馬鹿にして!もう死にたいわ・・・」
「可哀そうなミオちゃん、明日カラオケ行こうよ、おごるから~ユキちゃんも誘ったら?」
「うん!明日十時に駅前でね!」
私は香川美緒、高校2年生だが昨年自動車事故にあって1年留年している。
瀕死の重傷だったのが奇跡的に回復した。
タケとレイコは昨年同級生だった。私が入院している間にタケはレイコと浮気したのだ。
ユキは中学三年生の妹、反抗期で母が手を焼いている。
タケに振られたけど明日のカラオケで発散しようと、私は鼻歌を歌いながら帰宅した。
***
「深夜のカップラーメン、この背徳感がたまらない!」
スープも飲み干し、明日のカラオケを楽しみにベッドに横になった。
(あ・・・歯磨きしなきゃ・・・)
でも睡魔に勝てず、意識が遠のいた・・・
どれぐらい寝ていただろうか。
「歯磨き!」と目を開けると、私は風吹く夜の草原にいた。
「あれ?夢?・・・うぅう寒い。今は夏よね?」
空には巨大な紫の月が怪しく輝いている。
「!!ファンタジーな夢だ。素敵~・・・んん?・・・良い匂いがする・・・」
どこからか甘く優しい香りがして、私は歩き出した。
「こんな所で何をしているのですか?」
不意に声を掛けられて振り向くと、薄暗い草原に恐ろしくイケメンな外国人が立っている。
「こんな時間に女性が何をしているのですか?」
「ふふ、日本語上手ですね。夢だもんね。うぅ寒い・・・・」
長い銀髪で赤い目のイケメンは、騎士のような格好で腰には剣を携えている。
上から下まで私を見定め「紫月の乙女?」と呟きコートを脱ぐと、寒くて震えている私を包んだ。
「え、ちょ、ひゃぁああーーー」
イケメンは軽々と私を抱きかかえて歩き出した。
ああ、良い匂いの元はこの騎士様だ・・・クラクラする・・・
見れば見るほど素敵な騎士様(ハリウッド俳優かな?なんの映画に出てたんだっけ?)
「お姫様抱っこなんて夢みたい。素敵な騎士様チュッ♡」
(夢だからいいよね)
超イケメン騎士様の頬にキスをすると彼は立ち止まってコクリと頷き、また歩き出す。
(タケなんか、騎士様に比べたら漬物石だわ、ククク)
とってもハイな気分だった。頭がポワンポワンして体が熱くなってくる。
騎士様は長い足で歩くのが早く、まるで飛んでいるようだ。
草原から少し歩くと巨大な壁に突き当たり、門扉があって中に入れば中世のヨーロッパのような街並みが広がっていた。
「貴方の名前をまだお聞きしていませんでしたね」
「ミオです。騎士様は?」
「私はリシャール、王宮の騎士です。第三王子の護衛と従者を兼ねています」
「え、王子様?会ってみたい!」
「ミオは浮気者ですか?」
「いいえ!浮気者はタケよ!」
「………」
夜の街に城が見えてきた。
「王子様に会いたい。早く早く!目が覚めたら消えちゃう」
すると騎士のリシャールは立ち止まり「王子には失礼のないようにお願いしますね」と注意した。
素敵な夢にはしゃぎ過ぎたのかも知れない。
「はい、でも残念、眠くなってきたわ。ここで寝たら夢が覚めるのかな」
「眠ってもいいですよ」
「素敵な騎士様、毎晩夢に出てきてね!チュッ♡」
これで夢から覚めて、きっと私は自宅のベッドの上だ。
「・・・いいでしょう、申し出をお受けしましょう」
歩きながらリシャールに思いっきり口づけをされて、激しくて息が止まりそうになった。
「ん?・・・んん・・」
(舌を噛まれた???・・なんか生々しい・・・ヘンだ)
お城の中に入って、リシャールは迷いなく広い城内をツカツカと歩いて行く。私は濃厚なキスですっかり目が冴えてしまった。
夜の城内をちらほら別の騎士の姿が見える。
「リシャール・・・これは夢よね」
「寝ぼけているのですか?ミオは可愛いですね」
腕を抓ってみた(痛い・・・痛い?)
「ええ、ここどこ?帰る!家に帰りたいーーーー!」
夜の城内を私の大声が響き渡った。
「シィーーーー!静かにして下さい」
どこに行くの?どうなるの・・・私。
リシャールが歩みを早めると、離れた場所から声を掛けられた。
「待て!」
「ああ、ミオが大きな声を出すから、第二王子に見つかってしまいました」
リシャールの肩越しに、またイケメンが見えた。金髪碧眼、護衛と従者を数人連れている。
(第二王子?・・・まさか、異世界転移?いえ、夢よね?夢であってくれ!)
「リシャール、貴様はまた城に怪しい物を持ち込んだのか?・・・確認するぞ」
リシャールは私を降ろし、殿下の前に立たせた。
「女?その恰好はなんだ?まさか紫月の乙女か!」
私はTシャツにハーフパンツ姿だ。
「おい、鑑定できる魔術師を呼べ!リシャール、貴様は隠すつもりだったのか?」
「いいえ、ミオは私の妻です。確認して下さい」
「なんだと、女、舌を出せ!」
顎をつかまれて、私はベーっと舌を出した。
「契約印があるな、勝手なことを!」
「妻と私は愛し合っていますので」
(え?妻?)
何がなんだか分からない私は、城の大広間に連行され裸足で立たされている。
石の床が足に冷たい。今の状況が分からない!そして、大きな声の第二王子が怖い!
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