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しおりを挟む「殿下この者は紫月の乙女に間違いございません」
魔術師が告げると第二王子は嬉しそうに「そうか、ギフトは?」と質問した。
「トレードとございます。物々交換のようです」
「ほぉ、ならばミオとやら、これをトレードして見せろ!」
王子が私にハンカチを渡したので「トレード!」と叫んだが何も交換されなかった。
「紫月の乙女よ、欲しい物を思い浮かべて下さい」
魔術師に言われて再びトレードすると、スリッパが足元に現れた。我が家のトイレのヨレヨレになった赤いビニールスリッパだ。
「「・・・」」
王子はスリッパを手にするとスパーーーン!と私の頭を叩いた。
「殿下!何をなさるのです!」
私を「妻」だと言い張るリシャールに抱き締められる。
「役立たずめ!高貴な私のハンカチをこのような汚らわしい物に!」
泣きそうな私を抱きしめてリシャールは「役立たずなのですから、私の妻でいいでしょう」と王子に告げると「ああ、連れて行け、お前が面倒見ろ!」王子はさっさと引き上げた、短気な男だ。
「ミオ、大丈夫ですか。可哀そうに。第二王子は乱暴者で有名なのです。災難でしたね」
リカルドに頭をよしよしされ「もう~帰りたいよ~」泣きつくと再びお姫様抱っこしてもらい、私達は広間を抜け出した。
裸足なので靴が欲しいのに汚いスリッパが現れた。冷えてトイレに行きたくなったので、チラッとトイレを思い浮かべたのが悪かったのか。
「役立たずなのね、私・・・なんでここに来たのかな?」
「何か理由があるはずです。いずれ判りますよ」
今頼れるのはリシャールしかいない。不安を胸に、黙って私はどこかに連れて行かれるのだった。
地下への階段を降りると部屋がいくつかあった。リシャールが一番奥の部屋の扉を開けると、10歳くらいの少年がキョトンとした顔で出迎えてくれる。
見た目はさっきの怖い第二王子にそっくりだ。
「殿下、戻りました」
「遅かったね。紫月草はあったの?」
「はい採ってきました。それと紫月の乙女、ミオを見つけました」
私を下ろして、リシャールは殿下の前に私を立たせた。
「へぇ~足が剥き出しだ・・・綺麗な足だね」
殿下はしゃがむと、私の足をマジマジと見て、指でツゥーーーと撫でた。
「!!!ひぃいいぃぃ!!!」
「殿下!妻に触らないで下さい!」
リシャールは今までの経緯を少年王子に説明すると「トレードか面白いね」とスリッパに興味を示した。
「この素材は何だ?ミオ、これ貰っていいかな?」
「はい、どうぞ」
「殿下は錬金術のギフトをお持ちなのです」
少年王子はスリッパを持って奥に消えてしまった。
リシャールは私を隣の部屋に運んでベッドに座らせると、濡れた温かなタオルで足を拭いてくれた。
「この部屋を使って下さい。いずれ私の屋敷にご案内しますので」
「有難うございます。トイレを拝借願います」ペコリ。
トイレに案内されると、良かった・・・水洗トイレだ、紙もある。
「私は殿下の元に参りますので、休んでいて下さい」
用を済ませた私の頬にキスをするとリシャールは出ていき、暖かなベッドで横になるとすぐ夢に落ちた。
萌とカラオケBoxで歌ってる夢で、なぜかリシャールもそこにいた。
***
朝目覚めると、夢ではない現実に打ちひしがれた。
隣で裸のリシャールが寝ており、私を抱きしめている。
「ひえぇええ!」
「ミオ、起きましたか。もっと寝ていてもいいですよ?」
「いえ、なんで裸なんですか?」
「寝るときは脱ぐでしょう?」
お国の違いなんだな。
「そうだ足の爪を切ってあげます。拭いた時に伸びていましたからね」
「先に服を着て下さい!」
均整の取れた細マッチョな体から目が離せない。
衣服を身に着けるとリシャールはハサミを出して「ここに座って」とベッドの端を指した。
大きなハサミで器用にリシャールは爪をパチンパチンと切っていく。
リシャールは二十歳前後だろうか、イケメンを跪かせて爪を切らせるのは面映ゆい。
「爪切りは無いのね」
「どういう物ですか?」
「えっと、出せるかな?」
私は髪を括っていた輪ゴムを外して爪切りを想像した。
──家の中の様子が目に浮かび、お爺ちゃんが爪を切っているのが見えた。
「トレード、爪切り!」と唱えると足元に爪切りが現れた。
「成功だ!お爺ちゃん専用の爪切り・・・」
リシャールに使い方を教えると爪切りで綺麗に切って、最後には磨いてくれた。
(リシャールは親切だな)などと考えていると、足の指がくすぐったくなって、見るとリシャールは私の足の指をくわえている。
(・・・変態・・・)麗しい顔を蹴りそうになった。
「何をしているの!」
「あ、いい匂いがして食べたくなってしまった」
「足なんて!(臭いでしょう)」
この世界の男がわからない。
「怒らないでミオ、本当に食べたりしませんから。朝食にしましょうか」
少年王子から借りたという靴を履くとリシャールは食事を運んできた。
「これは殿下の朝食なんですが、いつも昼まで寝ているので我々で食べましょう」
(いいのかな?)と思いつつリシャールと硬いパンとスープ、ゆで卵、サラダを食べたのだった。
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