異世界に行った理由

ミカン♬

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「ふむふむ、これで歯を磨くのですか」
 リシャールが私の歯ブラシを咥えたので慌てて取り上げる。

「もう!・・・ここではどうやって磨くの?」
「こうやって、クリーン!・・・綺麗になりました」

 リシャールが呪文を唱えると彼の全身が白く光り、室内の空気も綺麗になった気がする。

「なんでも魔法で出来るのね。ねぇ・・・昨日も汚れた足は魔法で綺麗になったのでは?」

「私が手ずからミオの足を拭いてあげたかったのです。それとこれは殿下からです」
 少年王子のブラウスとパンツを受け取った。

 身長は私の方が高いが、殿下の服のサイズはピッタリで、パンツを履くと足が見えなくなったとリシャールが残念がった。
 彼は真面目そうで案外エロい。

「私がミオに似合うドレスを用意しますから、もう少しお待ちを」
「えっと、パンツスタイルでお願い」



 第二王子様はフリック殿下。

 なぜか殿下の従者・護衛はリシャールだけ。

「しかも王子様のお部屋が地下室ってどうなの?」
「殿下は前に実験を失敗して部屋の中をメチャクチャにしたので、離れた地下室に放り込まれたのです」

 フリック殿下は時々リシャールに怪しい素材を城内に持って来させるので、昨夜は第二王子に見つかって声を掛けられたのだ。

 話していると殿下がやって来た。

「フリック殿下、服を有難うございます」
「似合ってるね、可愛いよ。この部屋狭くない?ミオには別の部屋を用意しようか?」
「いいえ殿下、ミオを一人にすると危険なのでこのままでいいです」

「え、そんな・・・」
 私が返事する前にリシャールが断ってしまった。


「そうか、まぁ自由にしてよ。ん・・これはなに?・・・」
「爪切りです」
 殿下は爪切りを興味深く観察し「借りるよ~」と胸ポケットに入れた。

「殿下、今朝は早いですね。朝食は食べてしまいましたよ」
「いいよ、代わりに何か食べ物をトレードして見せて」

「ミオは、交換するものを用意しなければトレードできません」
 さっきは歯磨きセットを、朝食で使ったナイフとフォークで交換した。後で銀製と聞いて冷や汗が出た。

「危険でない物なら何でも交換していいよ。実験室以外ならどれでもミオが自由に持ち出していいよ」

 私はコンビニのサンドイッチやおにぎり、お弁当を求めたが出なかった。庶民が想像できるのはこの辺だ。
 何度も試しているうちに、実家を思い浮かべ、食パンをガラスコップとトレードするのに成功した。

「わー、このパンはフワフワだ。美味しそう、ここには何て書いてるの?」
 食品の成分表示を説明すると「後でメモするからもう1回聞かせて」と殿下は食パンを千切って口に入れた。

「美味しい。もっと何か出してよ」
「あ、焼いてバターを塗ると更に美味しいですよ。バターはあるからトースターですね」

 お皿をトースターと交換してから、ここで使用可能なのか疑問がわいたが・・・
 トレードするなり、殿下はトースターを抱えて実験室に走り去った。


 殿下の素材部屋に行くと、いろんな物が散らばっていた。

「交換するなら、まずお金がいいかな。うちは裕福じゃないし」
「殿下はお金を持たされていません。これをどうぞ」

 リシャールはお金が入った袋を渡してくれたが、悪いので固辞すると私の手に袋を握らせて「私の物はミオの物です」と麗しい顔でのたまった。

 黒い炭酸飲料が飲みたくて銅貨3枚と交換したら、リシャールは魔法で冷やしてくれる。

「エールと違って、甘くて子どもでも飲めますね」
「これ飲んでファーストフードを食べたいけど、トレード出来ないのよね」
「・・・そうだ、みんな大好きカップラーメン!」

 リシャールのお金を減らすのは悪いので辺りを見回すと、机上に綺麗な小石が散らばっていた。
「青い宝石?」
「いいえ、スライムのコアです。スライムは殿下の実験材料に良く使われます」

「これどうするの?」
「捨てます。ゴミは全部スライム牧場に運び、スライムが消化処分するんです」

「綺麗なのに勿体ない。貰っていいかな?」
「ミオには私が宝石をプレゼントしますよ。コアなんて捨ててしまいなさい」
「捨てていいなら貰っちゃおう」

 スライムコアをかき集めて、私はカップラーメンとトレードしたのだった。

     *

 午後から王太子殿下に呼び出されて、私はリシャールと謁見に向かった。
 不機嫌そうな王太子にちょっとビビる。

「何を勝手に紫月の乙女を妻にしているんだ。陛下もお怒りだぞ、リシャール」
「ミオから熱烈に求婚されまして、お断りできなかったのです」

(私がいつ求婚したのよ!勝手に妻にしたくせに)

「それでも印を結ぶなどとは、やりすぎだ」
「ではミオをどうされるおつもりですか?まさか王太子殿下の愛人に?」

「馬鹿を言うな、それでどうなのだ、本当に乙女のギフトは使い物にならないのか?石を金や宝石にトレードできないか?」

 欲張りな王太子殿下だ。(魔法で変化させるのではなく、物々交換だっつーの)

「貴重な物と交換はできません、フリック殿下の玩具を出せる程度です。大きく貢献するのは不可能かと」

(うん、今のところ、交換したもので1番高いのはトースターだものなぁ)

「そうか、今回の紫月の乙女はハズレだな。陛下にはそうお伝えしよう。下がっていいぞ」

「失礼致します」
 私は無視されて追い出された。ハズレだから仕方ないにしても冷たくないか?

(紫月の乙女の価値って低いな!)


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